第8話 王都ギルド騒然

王都ギルドはサランド領ギルドよりも広い。

だか、配置は各ギルド統一されているのか、サランド領とは変わらなかった。


入って正面にある受付の右手側3つが報酬受け取り口だ。

日が沈み、それなりに時間が経ったからか余り並んでいなかった。


僕が並んでいると、冒険者の溜まり場から

「おーい、ガキがこんな時間になんのようだ」

「ギャハハ。チビ。薬草なんかで夜並ぶんじゃねぇ。さっさと帰ってママと寝てな」

などと、色々な野次が飛んでくる。

もちろん全部無視である。

酒でだいぶできあがってる奴は僕以外の並んでいる冒険者に絡み、殴られ気を失った。


…王都でも、どこでも冒険者って変わらないな。血の気が多いやつの方が向いてるしな。仕方ないか。

そう思っていたら僕の番になった。


「こんばんは。オーク20体の討伐依頼終わりました」

僕はそう言いながら、二十代後半と思われるお姉さんに依頼票とギルドカードを提示した。


確認した後、お姉さんはお盆の様なものを持ってきて、受付台に置いた。

「確認しました。ではこちらに魔石・その他素材がありましたら置いてください。魔石は必須ですが、その他の素材は自分で使ったり、商人に売る場合は置く必要はありません」

笑顔で丁寧に説明してくれた。優しいお姉さんだ。


「オーク以外の魔石も一緒に買い取ってもらえますか?討伐依頼中に遭遇したもので…」

僕は買い取ってもらえるだろうとは思っていたが、念の為聞いてみた。だってドラゴンだし…


「はい。大丈夫ですよ。買い取れる物は全部買い取らせていただきます」


よかった。

魔法バックの中にギッチギチに入った素材をお盆の上に置いて行く。

まずはオークの魔石20個。

次はオークの上位種らしき魔石1個

次は…

「!!!ちょっ…ちょっと待ってください!この大きさ…Aランクモンスターの魔石ですよ!!!」

受付のお姉さんは思わず驚いて大声を出してしまった。

その声を聞きつけた、周りの受付や冒険者からの視線を浴びる。


「実はオークが集落を作っていて、その群れ全部倒したんですけど、その中に混じってました。まさかAランクモンスターだったとは…」

本当、ビックリだ。一振りで倒したオークの中の一体がAランクとは…確かに上位種だとは思ってたけど。


「ではこの魔石全部鑑定させてください。他にも魔石や素材はありますか?」

お姉さんに尋ねられ僕は頷いた。


「…わかりました。では鑑定機にかけている間、残りの魔石はこちらに置いてください」

そう言ってもう一つお盆を取り出し、受付台に置いた。


……どうしよう、ドラゴンの素材ちょっと置いたら一杯になってしまう。

「すみません。このお盆だとちょっとしか置けないのですが…とりあえず魔石と置けそうな素材いくつか置きます」

そもそも頭や翼、尻尾は丸ごと持って帰ってきてる為、受付台にすら置くことはできない。

どうやって素材渡そう…この際だから自分で使うか?

そう思いながら、僕は魔法バックからブルードラゴンの魔石を取り出し、お盆の上に置いた。


「「「「「…………」」」」」


お姉さん、周りで見ていた受付、冒険者、その場に居たみんなが言葉を失った。

誰も驚きの声すら発生できなかった。

酒に酔ってた冒険者達は一気に酔いが覚めた。

僕に野次を飛ばしてた冒険者達はどんどん顔色が悪くなっていく。とんでもないやつに野次を飛ばしていた。そう思っていたに違いない。


「し…少々…お待ちください」

受付のお姉さんは慌てた様子で部屋の奥へと消えていった。


―――し〜ん―――


ギルド内は静まり返っていた。

人の居ない時間のギルドならともかく、夜、みんなが酒を飲み、1番騒がしい筈の時間帯にもかかわらず、この静けさ。

異様な雰囲気が漂っていた。


「こっちです。マスター。この魔石です」

お姉さんが慌てて叫びながらこっちに向かって走ってきた。

静かだから、お姉さんの声すごく響くね。


マスターと呼ばれていた男性が、魔石を見る。

「……間違いない。これはSランクオーバーの魔石だ。」

Sランクオーバー。それはドラゴンしかいない。

つまり、鑑定機にかける必要すらないのである。

魔石の色がそれぞれのドラゴンの種族を表しているし、その他素材を持ち帰らない人はいない。すぐ分かるのだ。


「き…君は…コーキ君だね」

マスターと呼ばれてた人が、渡していた僕のギルドカードを見て、驚いた顔をしながら

「ここではなんだ…奥の応接室まで来てもらえないだろうか。もちろん、そのドラゴンの魔石も持って」

そう言って、僕が頷くとお盆ごと魔石を持っていった。


「こちらへどうぞ」

受付のお姉さんにギルド職員用入り口を開けてもらい、応接室まで案内してもらった。



応接室に入ると、先程の男性がソファの前で立っており、机の上にはドラゴンの魔石が置かれていた。

「どうぞ、おかけください」

僕は言われるがまま、男性とは対面のソファに腰掛けた。


男性と受付のお姉さんは、僕が座ったのを確認すると自分達もソファに腰掛けた。


「ご挨拶が遅れました。私、王都ギルドマスター兼、ゴースリア王国ギルド総括のエルヴァと申します」

エルヴァは自己紹介をし、深々と頭を下げた。

第一印象としては長髪の美青年に見え、女性と間違えられても不思議ではない。物腰が柔らかく、ギルザークのような威圧感もない。だか、発していたオーラは違った。対面したからこそ分かる。


「今回のドラゴン討伐について、是非詳しいお話をお聞きしたく、応接室までご案内させていただきました」

エルヴァが緊張した面持ちで、ドラゴンについて聞いてくるので説明した。ただし、一撃で倒した事は言っていない。



「――そうでしたか。お話いただきありがとうございます」

頭を下げ礼を言うと、応接室内はとても静かになった。

エルヴァは驚き、次の言葉が出てこない様子。



「あの…残りの素材、出してもいいですか?受付台には置けませんでしたが、この部屋なら置けそうなので」

エルヴァが頷いたのを確認し、僕は残りの素材を出した。


オークの肉も先程出し忘れていたので、ついでに出した。


・オーク肉21個

・オーク上位種のツノ2本

・ブルードラゴンの頭・ツノ

・ブルードラゴンの翼

・ブルードラゴンの尻尾

・ブルードラゴンの鱗8枚

・ブルードラゴンの爪5つ


改めて出してみて思った…

デカすぎる。


エルヴァさんも対応してくれていたお姉さんも、口を大きく開け、言葉を失っていた。


全部出せて満足だ。


「これは直ぐには査定できないので、明日の午後、またギルドへ御足労いただいてもよろしいでしょうか?」

エルヴァさんが申し訳なさそうに聞いてきた。


「もちろんいいですよ。では明日、また来ます。査定よろしくお願いします」

僕は満面の笑みでそう答え、前金としてブルードラゴン討伐報酬【白金貨3枚】、オーク討伐報酬【金貨5枚】を受け取り、ギルドを後にした。



やばい…時間かかった。

ソルティナさん怒ってるかな?


僕は急いでみんなが居る飲み屋に向かった。

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