第726話 アンドレ戦③

 アンドレは神技発動状態になり神技を行使する。

 全ステータスを上昇させた上で攻撃を仕掛けてきた。


 アンドレを中心に地震を起こし、周囲360度にわたり床石が、隕石が落ちた際に発生する地殻津波のように、アレンたちに襲い掛かる。

 高さ数十メートルの大津波が迫る中、アレンたちは即座に回避行動にでたが避けられそうにない。


『アレン殿!! ぐおおおおお!?』


 嵐獣化したルバンカが3対の手で背後から抱きかかえるのと同時に、粉砕された床石は細かい土砂となり飲み込んでいく。


『これはいかん!! むん!!』


 アンドレを挟んでソフィーたちもアンドレの攻撃が迫る。

 水の大精霊トーニスが、クワトロごと包み込むほどの巨大な水玉の結界を一気に生成し、空間の大精霊ジゲンが霊力を込め、強度を補強する。


『ルーク! こいつはやべえ! 飲み込むぞ!!』


「お、おい!? へば!!」


 頭の上のムートンが薄く広がり、ルークを飲み込んだ後、自らの体に弾性を持たせ、背面へと大きく飛んだ。

 なんとか、トーニスの生成した泡の結界の中に飲み込んだムートンごとダイブする。

 

「きゃあ!!」


 100メートル以上離れた位置から魔法を発射していていたセシルのところには土砂はかからなかったものの、衝撃波が襲い掛かったようだ。

 絶叫しながらも床石を打ち付けながら背後へと、軽々と吹き飛ばされてしまった。


『ふう、危ない、危ない。鍵を奪えないと思って、正攻法で我を倒そうと思わなんだ。流石、ここまでやってきた英雄たちよ。思わず本気を出してしまったわ。我は大地の化身にして大地の神ガイア様の眷属よ。人の子らに後れを取るなど、あろうはずがない』


 勝利を確信したのかアンドレはニヤニヤが止まらない。


 アンドレが語り終わるころに濁流となりルバンカごと土砂の中に生き埋めにしたアレンたちが出てくる。


『無事か?』


 上空に高速で飛び上がり難を逃れたメルスが皆の無事を確認する。


「ああ、問題ない。すまなかったな、ルバンカ」


『……せっかく召喚獣になれたのだ。その先の未来を見せてくれ』


 獣人であったころ絶望しながらも、聖獣に至ったルバンカは、アレンの召喚獣になることで答えのようなものを探しているようだ。

 使い手の召喚士を救うのは当然らしい。


 威力、効果範囲などアレンの中で分析が進んでいく。

 魔導書で確認していたが即死は免れるものの、かなりの体力が削られた。


『降参するなら背後の扉から去るがいいぞ。残り時間は50分か。これならまだ霊力は持ちそうか。むん、大地の癒し!!』


 神技によって霊力が最大値上昇と共に10万回復したアンドレが、大地の癒しで体力を全回復させた。

 アレンの考えを先回りしてますよと言わんばかりだ。


(削らないといけない体力は10万増えて、霊力も10万増加。攻撃の効果範囲は脅威の300メートル。直撃範囲は100メートルといったところか。津波のクールタイムは多少あるとみていいだろうな。連射できたら勝てたし、クールタイムはそれなりにあると見た。ただ、ムートンが助けてくれたルークの接近戦は厳しいか。クワトロ、ルークに指示を)


 起きた事象と言動から、アレンは知力を総動員させて、アンドレの攻略を練る。

 アレンは鳥Fの召喚獣を使い、アンドレの背後にいるルークやソフィーたちに作戦を共有する。


『100メートル以上距離を取り、遠距離攻撃を中心にしてくれ。ルークとその精霊たちは耐性と耐久力を削るんだ』


 ルークはこれまでのとおり接近戦でスキル「呪詛禁刃」は危険だ。

 効きが多少弱くなっても、遠距離のデバフのスキル「酸の渦」や「毒沼津波」を多用するように指示する。

 大精霊たちに対しても遠距離攻撃を中心に攻撃するように指示する。


「……ということは、アレン様は勝利を諦めていないということですわね」


 アンドレに聞こえないよう小さく呟いたソフィーの言葉を耳にしたフォルマールとルークは小さく頷いた。


「俺たちはこれまでどおり、作戦通りだ。ルバンカ、もしかしたら俺の壁になってもらうぞ」


(まあ、俺の加護生命循環のお陰で、魔力、霊力、体力は瞬時に変換可能になったからな)


【草Sの召喚獣の加護「生命循環」の効果】

・体力は霊力に変換可能

・霊力は魔力に変換可能

・魔力は体力に変換可能

・逆流、同時変換、上記3種類以外の流れでの返還は不可

・変換は意識することが必要で自動的には行われない


 まるで世界の生命の真理を手にしたような加護だ。

 おかげで生存確率が上昇し、その結果、メルスはアレンを置いて退避行動に出ている。


『やれやれだ。好戦的な主だな』


 ニヤリと笑みを零したアレンにため息をついたのはルバンカだけでなく、様子を伺っていたアンドレも同様であった。


『……我の力を見て戦意を喪失しないか。まあ、よかろう。時間いっぱいまで付き合ってくれる。それを思い出に大地の迷宮から去るが良い。運が悪ければ死ぬだろうがな』


 アンドレの言葉は無視して、アレンの指示は続く。


『メルスたちは体力を削ることを優先してくれ。クリティカル率が上がる爪の方が時間当たりのダメージは高いはずだ。攻撃はなるべくリオンが受けてくれ。ルバンカも守らなくてよい。その他、ブレスも含めた遠距離攻撃を!! セシルは俺の指示で『小隕石』を!!』


「ええ、分かったわ。確実に決めるわよ!!」


『攻撃受けての戦法か。アレン殿が考えていた奴を実行するのだな』


 リオンはアレンがどうしたいのか瞬時に理解した。


 アレンの自信満々の態度に前回、鍵を奪われて出し抜かれたアンドレが警戒心を一段階上げる。

 一瞬絶望しかかったセシルたちの表情が上向いていく。


『どんな手を使っても同じこと。これからは攻撃に耐えるだけとは思わぬことだぞ!! 捻りつぶしてくれる』


 大手を振るうが、滑り込むようにアレン、メルスが内側に滑り込み、リオンが両手を掲げ、アンドレの攻撃を受ける。


『ぐぬ!?』


『大した力だが、神技を発動して力を得た我を抑えるとは思わぬことだ!!』


 リオンがアンドレの前足で捻り潰されんとばかりにメキメキと床石と膝近くまで埋没する。

 抑えている隙に、ルバンカは覚醒スキル「嵐獣化」で疾風のように移動し、特技「獣の血」で強化した武器でアンドレの喉元を迫る。


『炎極殺!!』


「よっし、俺たちもやるぞ。毒沼津波!!」


『おう、燃え尽きろ!!』


 ルークの言葉に呼応して、ビキニアーマーの火の大精霊カカが強大な炎の塊をアンドレの後頭部に叩きつける。


 神の試練を超えてきたアレンたちの激しい攻撃は無視できるものではなかった。


『ふぐ!? ま、まだ分かっていないようだな。この威力をもう忘れるとはな! 大地の怒り!!』


 たまらず改めてアンドレは霊力を込めて神技「大地の怒り」を発動させた。

 近距離攻撃を続けていたアレン、メルス、ルバンカ、リオンが直撃を受ける。


 アレン、メルス、ルバンカは回避行動に出て、少しでもダメージを受けるが、リオンは膝まで埋まった床石から抜け出すこともなく呆然と、アンドレの驚異的な一撃を受ける。


 100メートル以上離れたところにいた他の仲間たち、召喚獣、大精霊たちも衝撃波でさらに後方に吹き飛ばされてしまう。


「ペクタン、回復を!!」


 土砂の中から出てきたアレンが速やかに、遊んでふらつかないように、マグラを両の前足でがっしり掴んだペクタンに指示を出す。


『プクップー!!』


 胴体を固定されたペクタンが頭を振るうと、胞子がアンドレの背後に至るまで一気に拡散し、特技「回復茸」が発動する。


(よしよし、大地の迷宮は回復薬の持ち込みは不可だからな。無尽蔵とは言わないが、回復役の召喚獣がいるのは助かる)


「アレン、大丈夫なの!!」


「ああ、問題ない。クワトロも前線を戻して、攻撃を再開するように指示してくれ」


 吹き飛ばされた先で身を案じるセシルに答えつつ、共有した召喚獣の視界や意識から、アンドレの攻撃の状況を確認する。


(やはり、最初の攻撃分、リオンが耐えられなかったと)


 アンドレの前足で捻り潰されるような強力な一撃を受けた後、神技「大地の怒り」を近距離で直撃したリオンが回復を待たずに、光る泡となって消えてしまった。


(倒された後の召喚獣の再召喚は不可。再召喚はない。……普通ならな)


 パアッ


 アレンが口角を上げた瞬間、一度は散ろうとした光る泡は再度集合し、リオンを形作る。


『ふむ、倒されたが、引き続き同様の作戦だな』


 復活したリオンの意識が瞬時に戻り、状況を確認する。


『ほう? 復活することができるのか』


『当然だ。どれだけ悠久の時を生きてきたと思っている』


 リオンは、常時発動の神技「輪廻転生」により、ステータスが全回復で、倒される前に受けたバフ継続の状態で何度でも復活できる。


 覚醒スキルによる復活のため、大地の迷宮のルール内だ。

 

「そういうことだ。いくぞ、皆!!」



『だからどうしたと言わせてもらおう。何度でも捻り潰してくれる』


 アンドレとの攻撃が再開される。


『むん! 無限天元突!!』


『へぐあ!!』


(凄い魔力だ。復活した時点で因果応報の効果が持続していると。森羅万象でアンドレの耐性もそこまでの脅威ではない上に、常時発動の覚醒スキルが2つもあるからな)


 10に分かれた神A「蓋世天錫」に込められた魔力によって、アンドレの腹部の甲羅が粉砕され、思わず絶叫したようだ。


『ぐぐ!? 大地の癒し。それがどうしたというのだ。くらえ!!』


「突っ込んでくるぞ! 左右へ!!」


 攻撃を受けた怒りからか、全長300メートルもあるアンドレが手足を甲羅に納め、回転しながら突っ込んてくる。


 アレン、ルバンカは左右に避け、メルスや後方にいるマクリスたちは、上空に退避する。


 それからも神技を発動し本気を出したアンドレとアレンたちとの壮絶な戦いが続いていく。


 パーティーが十分揃っていないアレンたちにとって、神技を発動させ強化されたアンドレとの戦いは脅威だ。


 前足や尾を使った物理的な攻撃はリオンが前面に出て攻撃を受けているのだが、神技「大地の怒り」は何度でも発動できるようだ。

 雨あられのアレンたちの攻撃に耐えかねて、何度も放ってくる。


「ふう!! あぶね!! 逃げれなかった!!」


 変則的な攻撃を続けるアンドレの作戦が上回ることもあり、アレンが攻撃の直撃を受けることもある。

 何度目かの大地の怒りに思わず、土砂の中から素早く這い出て攻撃に戻るアレンにセシルが訴えた。


(俺まで死ぬところだったね)


「ちょと、アレン。無理する必要はないわ。別にアイアンゴーレムでも良いし。99にする必要もないわよ!!」


 攻撃を受けることが前提のあまりに凄惨な戦いにセシルが思わず叫ぶのであった。



あとがき

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