第482話 究極魔法

 アレンのパーティーは皆、どんどん成長し強くなっていく。

 強くなったのはクレナだけではない。

 ディグラグニに魂を与えられたタムタムもそうだ。


【タムタム装着石板】

・本体用石板:5(石板のサイズ)

・大型用石板:2

・超大型用石板:3

・分隊用石板(スキル名:ペンタポッド):5

・陽電子砲用石板(スキル名:グランレイザー):3

・短距離転移用石板(スキル名:テレポート):3

・放射状重力波用石板(スキル名:ラウンドバースト)3

・強化用石板(攻撃力5000):1×6


 上位魔神をも圧倒しそうなほど、タムタムは成長を遂げていた。

 最初はカタコトだった口調は丁寧になり、メルルと会話もできる。


 ペンタポッドを分隊として5体降臨させ、魔獣たちを蹴散らしていく。

 近距離攻撃も長距離攻撃も、そして周辺攻撃と多彩な攻撃手段を獲得した。

 100メートルを超えるSランクの魔獣たちがまるで相手にならないと言わんばかりに粉砕されていく。


【タムタム成長の記録】

・Hランク 傀儡人形

・Gランク カラクリ人形

・Fランク オートマタ

・Eランク ヘビーマシン

・Dランク ジャイアントロボ

・Cランク バレットギア


【獲得した機能】

・強化〈6〉 全ステータスを2万上昇させる

・出力〈6) 攻撃の威力を6割上昇させる

・加速〈6〉 移動速度を6割上昇させる

・照明弾 辺りを明るくする。効果は半径1キロメートル以上

・迷彩 周りから見えなくなる。気配察知のある魔獣には無効。攻撃する、攻撃を受けるで解除される

・予備動力 体力を全快にする。クールタイムは1日

・収納 石板を魔導キューブの中に収納する


 機能が拡張する度に、アレンの胸がトキメくスキルを覚えていく。


「メルル強い!!」


 ハクに乗ったクレナがメルルとタムタムの成長に驚いている。

 ディグラグニ討伐報酬で貰った石板も有用すぎて、Sランクの魔獣であっても相手にならない。


(すごい強いな。メルルの操作を受け入れつつ、オートでも動くからな)


 ペンタポッドとタムタムは常に同期されており、一切の死角がタムタムにはない。

 メルルが操作する死角となる部分への攻撃もガンガンしていく。

 また、魔獣の強さや攻撃の種類を記憶しており、倒す優先度、選択する特技を変えたりもできる。

 これもタムタムが成長したお陰だとアレンは理解する。


「えへへ」


『ギョギョギョ!!』


 既にかなりの数の魔獣が倒され、形勢が不利だと理解した宝箱の魔獣はこれはまずいと考えたようだ。

 宝箱の魔獣がさらなる逃走を図ろうと魔法陣へ移動を開始した。


「させない、覇王剣!!」


『ヘギュギャ!?』


 アレンの指示で魔法陣の前をふさぐようにハクとクレナが待機していた。

 ハクの頭の上ではクレナが既にスキル発動を準備しており、宝箱の魔獣に強力な一撃をお見舞いする。


 宝箱の魔獣は粉砕され、光る泡となって消えていく。


『パンドラボックスを1体倒しました。経験値2億4000万を取得しました』


「む、倒したぞ。やはりSランクの魔獣だったか」


 経験値的にSランクの魔獣であることは間違いない。

 宝箱が擬態した魔獣でSランクは初めてだった。


「お! 何かあるぞ!!」


 魔獣が倒れた場所で光る何かがめくれ上がった床石の上に浮いている。

 既に魔獣たちは殲滅が終わっており、キールがすごい勢いで倒した宝箱の魔獣がいた場所に向かう。

 アレンたちもキールに少し遅れて戦利品を獲得するため集まっていく。


「なんだこれ? ちょっと、貸してくれ」


(杖っぽいけど)


 キールが握る杖を借りる。

 拳2つ分ほどの杖は、杖をデフォルメしたような大きさと形だ。

 まるで杖の象徴したように見える。

 アレンはとりあえず、杖っぽい何かを魔導書に入れてみる。


『魔法使いの神技を収納しました』


(魔法使いの神技だと? これはそうなのか)


 特別な「何か」を手に入れたことをアレンは確信する。

 もう一度収納から出して握りしめてみる。

 しかし、キラキラと輝いているだけで何の反応もない。


「これは何に使うのでしょうね?」


 アレンの感想を、首を傾げたソフィーが代弁してくれる。


「ちょっと、杖よね! 私に貸しなさいよ!!」


 アレンの返事を待つことなく、大振りに弧を描いてアレンの手元からセシルの元に「魔法使いの神技」が渡る。


 仲間たちの視線がアレンからセシルと「魔法使いの神技」に移動した瞬間だ。


 ビカッ


 元々淡い光に包まれた「魔法使いの神技」が強く輝き始めた。

 あまりの光にアレンたちは目をつぶってしまう。


「お、おいおい」


 キールは絶句する。


(魔法使いのセシルに反応したのか?)


 セシルの握る「魔法使いの神技」はセシルを光に包み込み、そして天井まで届く光の柱に変わる。

 光の中には、何やら幾何学の文字が溢れる。

 セシルはゆっくりと宙に浮く。


「ちょ!? 何よこれ!! え? 何かが語りかけてくるわ!!」


 髪が天に逆立ち、足をばたつかせるセシルが絶叫している。


 光の柱は暫くして止んだ。

 地面にゆっくり降りたセシルの手元には既に「魔法使いの神技」は無くなっている。


「セシル、大丈夫か?」


 ゆっくりと床石に降りたセシルに話しかける。


「え、ええ。アレン。ちょっと、言葉が頭から離れないの」


 何かが語り掛けてきて、それが頭から離れないと言う。


「言葉? 何を言われたんだ?」


 アレンの問いにセシルは先ほどから聞いた言葉を思い出す。


「えっと、力をくれるって。女性の声で、あなたが扱いやすいように変換したとか。えっと、アルティメット・マジック・ウイザード?」


 カッ


 セシルの言葉と共に、今一度セシルは光に包まれた。

 いくつもの幾何学の模様が光の中に現れる。

 アレンはセシルの状況を確認するために魔導書を開いた。


「アルティメット・マジック・ウイザード……究極の魔法使い? 特殊なスキルを手に入れたと?」


「ちょっと、何今分析しているのよ!!」


 セシルは自らに何が起きたのか困惑している。


「喜ぶといいぞ。どうやら新たな力を手に入れたようだ」


(セシルのエクストラスキルが増えた)


 オリハルコンの武器、貴重な足輪や腰巻など手に入るダンジョンだが、まさかエクストラスキルまで宝箱にあるとは思わなかった。


 【名 前】 セシル=グランヴェル

 【年 齢】 16

 【職 業】 魔導王

 【レベル】 60

 【体 力】 2470+2400

 【魔 力】 3974+2400

 【攻撃力】 1640

 【耐久力】 1686

 【素早さ】 3382+2400

 【知 力】 4138+2400

 【幸 運】 2541+2400

 【スキル】 魔導王〈6〉、火〈6〉、氷〈6〉、雷〈6〉、光〈6〉、深淵〈2〉、魔力蓄積〈限〉、知力強化〈限〉、組手〈4〉

 【エクストラ】 小隕石、神技発動

 【指輪①】知力5000

 【指輪②】知力5000

 【聖珠①】攻撃魔法発動時間半減、クールタイム半減、魔力5000、知力5000

 【聖珠②】魔法攻撃ダメージ10パーセント、魔力回復1パーセント、魔力5000、知力5000

 【首飾り】知力3000

 【耳飾り①】魔法攻撃ダメージ10パーセント、魔力2000、知力2000

 【耳飾り②】魔法攻撃ダメージ7パーセント

 【武器】双魔の杖 知力20000、魔法攻撃ダメージ15パーセント、魔力2回分で魔法2回同時発動

 【鎧】エンシャントマジックローブ 耐久力8000、魔法耐性(大)


 強い光は止んだが、淡い光に包まれたセシルのステータスには、特別な2つのスキルがあった。


「ちょっと、見せなさいよ」


 食い気味にセシルは自らのステータスを確認する。

 エクストラスキルには「神技発動」という表示があり、スキル欄には「魔力蓄積〈限〉」、「知力強化〈限〉」という2つのスキルが追加されている。


「限定か。エクストラ級のスキルに多い設定だな」


 一定の条件がないと発動しないスキルは存在する。


「検証するわよ!」


 アレンがいつもやっているように、セシルは鼻息を荒くして検証したいと言う。


「そうだな、攻略を進めながら検証もしていこう」


 スキルの効果、発動条件などを調べることにする。

 アレンたちは移動を開始しながら、効果の検証を調べることにする。


 それから数日が経過した。

 セシルはアレンと一緒に乗る鳥Bの召喚獣の背中に立っている。

 アレンたちは明らかにSランクと思われる鎧系の魔獣と対峙している。


「フレア!!」


 杖を持つセシルが両手を天に掲げると真っ赤な火球が2つ生じて、鎧の魔獣を襲う。

 鎧の魔獣は、咄嗟に手に持つ数十メートルにもなる大盾を構え、身構える。


 しかし、2つの火球のうち1つの火球は魔獣の頭部を融解させ、もう1つは大盾ごと胴体に大きな穴を空ける。


『グランドアーマーを1体倒しました。経験値を1億6000万取得しました』


「おお! Sランクの魔獣を一撃だ」


 アレンとセシルの後方にいるキールがセシルの攻撃を賞賛する。


「ふふふ、私は究極魔法を手に入れたのよ!!」


 仁王立ちをしたセシルも勝ち誇っている。


(なるほど、検証的にはこれで正解か。クールタイムがあるから数日かかったけど。それにしても双魔の杖と相性がいいな)


 アレンはセシルが手にした「魔法使いの神技」の検証を終えた。


【魔法使いの神技】

・神技発動で1時間の間、魔力蓄積、知力強化のスキルを使用できる

・神技発動のクールタイムは1日、魔力は消費しない

・神技発動にはそれぞれ魔力1万消費する

・知力強化は知力を1万上昇させる

・魔力蓄積は1つの魔法を発動させる前に2回分唱えることができる

・発動の時間は魔力蓄積によって早くはならない

・魔力蓄積すると攻撃魔法の威力が2倍になる

・双魔の杖の効果と重なり、魔力蓄積した状態で2発発動できる

・エクストラスキル「小隕石」は魔力蓄積できない


 アレンが魔導書に「魔法使いの神技」の効果について記録すると、セシルはさらに笑みが零れる。


「メガデスが言っていたな。この試しの門はデスペラードの妻である魔法神イシリスの力も借りていると」


 門番戦の前にメガデスが言っていたことを思い出した。

 魔法神イシリスが力を込めた「なんとかの神技」というものがまだこの階層にあるかもしれない。


「じゃあ、ほかにも神技があるかもしれないわね」


「そうだ。セシル。ダンジョンを攻略しながら、神技も探すぞ」


 鱗の門2階層の攻略の中で、セシルは新たな強力なエクストラスキルを手に入れるのであった。

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