第287話 最下層ボス②

 アレンはヒヒイロカネの朱色に輝く最下層ボスを見つめる。


(ビービーも、スカーレットも、クリムゾンも赤っぽかったもんな)


 何か意味の分からない共通点に気付く。

 Sランクの階層ボスは全て赤みを帯びていた。

 

 凝視するアレンたちが動かないので、最下層ボスは動かない。

 ある程度近付くと、最下層ボスが動き出し戦闘開始になる。

 ガララ提督から聞いていたが、他の階級のダンジョンと同じようだ。


「すげえな」


「こんなの勝てるのか?」


 ドゴラは思わず声が出て、キールは勝利に不安を覚える。


「ああ? まあ、作戦通りいけばな。そうですよね? ヘルミオスさん」


「まあ、ディグラグニは『勝てるものなら勝ってみな!』って言っただけだからね。正直これはちょっとねって思うかな」


 ヘルミオスはアレンの問いに苦笑いをする。


(また、半端な表現だな。勝てるような設定であることを祈るばかりだぜ)


 アレンは作戦通りやれば問題ないと言うものの、ヘルミオスにディグラグニと話した最下層ボスの話について再度確認する。


 最下層ボスはこれまでに一度も攻略されていない。


 前世の記憶ではたまに、倒せないボスが存在していたことを覚えている。

 耐性が高すぎて攻撃が通じなかったり、体力が無限に設定されてあったり、次のバージョンアップで倒せるように設定されて現時点で倒せなかったり様々な理由だ。

 絶対に無理だとディグラグニは言わなかったそうなので、勝てること前提の構成と作戦で今回の戦いに臨んだ。


(さて、ガララ提督から聞いていた通りか)


 状況を確認するためヒヒイロカネのゴーレムの両隣を見る。

 そこにアイアンゴーレムが2体いる。

 そして、その両隣にはブロンズゴーレム、ミスリルゴーレムが1体ずつ鎮座する。


 全部で5体のゴーレムとこれから同時に戦うことになる。

 1体1体が魔神級の強さがある。

 本気を出し変貌した魔神レーゼルと同じ程度のゴーレムが5体横に並んでいる。


 最下層ボスの攻略は、ブロンズからミスリルゴーレムのそれぞれを倒した数倍の難易度だと思っていたが、ガララ提督の話を聞いて5倍以上ありそうだと想定した。


(ガララ提督が速攻で無理だと判断するのは分かる)


 見てすぐ分かる圧倒的な強さだ。


「おい、震えてんじゃねえぞ! 絶対に勝つんだ!!」


「へい。ガララ提督。や、やったりましょう!」


 数か月前の敗走し続けた記憶が蘇り、震え始めたドワーフたちに檄を入れる。


(さて、カンストして指輪もそろえたしな)


 アレンは魔導書で仲間たちのステータスを今一度確認する。


 【名 前】 クレナ

 【年 齢】 15

 【職 業】 剣帝

 【レベル】 60

 【体 力】 4150+8000

 【魔 力】 1832+3000

 【攻撃力】 4150+8000

 【耐久力】 3968+3000

 【素早さ】 3510+3000

 【知 力】 2250

 【幸 運】 2688+3000

 【スキル】 剣帝〈6〉、斬撃〈6〉、鳳凰破〈6〉、快癒剣〈6〉、覇王剣〈6〉、豪傑〈2〉、剣術〈6〉

 【エクストラ】 限界突破


・スキルレベル

 【剣 帝】 6

 【斬 撃】 6

 【鳳凰破】 6

 【快癒剣】 6

 【覇王剣】 6



 【名 前】 セシル=グランヴェル

 【年 齢】 15

 【職 業】 魔導王

 【レベル】 60

 【体 力】 2470+7400

 【魔 力】 3974+2400

 【攻撃力】 1640

 【耐久力】 1686

 【素早さ】 3382+2400

 【知 力】 4138+7400

 【幸 運】 2541+2400

 【スキル】 魔導王〈6〉、火〈6〉、氷〈6〉、雷〈6〉、光〈6〉、深淵〈2〉、組手〈4〉

 【エクストラ】 小隕石


・スキルレベル

 【魔導王】 6

 【火魔法】 6

 【氷魔法】 6

 【雷魔法】 6

 【光魔法】 6



 【名 前】 ドゴラ

 【年 齢】 15

 【職 業】 破壊王

 【レベル】 60

 【体 力】 4089+7400

 【魔 力】 1919

 【攻撃力】 4348+7400

 【耐久力】 3595+2400

 【素早さ】 2849+2400

 【知 力】 1757

 【幸 運】 2664+2400

 【スキル】 破壊王〈6〉、渾身〈6〉、爆撃破〈6〉、無双斬〈6〉、殺戮撃〈6〉、闘魂〈2〉、斧術〈6〉、盾術〈4〉

 【エクストラ】 全身全霊


・スキルレベル

 【破壊王】 6

 【渾 身】 6

 【爆撃破】 6

 【無双斬】 6

 【殺戮撃】 6



 【名 前】 キール=フォン=カルネル

 【年 齢】 15

 【職 業】 聖王

 【レベル】 60

 【体 力】 2740+7400

 【魔 力】 4100+2400

 【攻撃力】 1580

 【耐久力】 1786+5000

 【素早さ】 2893+2400

 【知 力】 4030+2400

 【幸 運】 3634+2400

 【スキル】 聖王〈6〉、回復〈6〉、破魔〈6〉、浄化〈6〉、聖壁〈6〉、聖祈〈2〉剣術〈3〉

 【エクストラ】 神の雫


・スキルレベル

 【聖 王】 6

 【回 復】 6

 【破 魔】 6

 【浄 化】 6

 【聖 壁】 6



 【名 前】 ソフィアローネ

 【年 齢】 50

 【加 護】 精霊神

 【職 業】 大精霊使い

 【レベル】 60

 【体 力】 2834+7400

 【魔 力】 4156+2400

 【攻撃力】 1933

 【耐久力】 1719+5000

 【素早さ】 3011+2400

 【知 力】 4243+2400

 【幸 運】 3453+2400

 【スキル】 精霊顕現〈6〉、水〈6〉、風〈6〉、土〈6〉、木〈6〉、山霊〈2〉、弓術〈3〉

 【エクストラ】 大精霊顕現


・スキルレベル

 【精霊顕現】6

 【 水 】 6

 【 風 】 6

 【 土 】 6

 【 木 】 6



 【名 前】 フォルマール

 【年 齢】 69

 【職 業】 弓王

 【レベル】 60

 【体 力】 3736+7400

 【魔 力】 1949

 【攻撃力】 3965+7400

 【耐久力】 2960+2400

 【素早さ】 3428+2400

 【知 力】 1566

 【幸 運】 1972+2400

 【スキル】 弓王〈6〉、遠目〈6〉、火竜撃〈6〉、強弓〈6〉、剛弾〈6〉、打起〈2〉、弓術〈6〉

 【エクストラ】 光の矢


・スキルレベル

 【弓 王】 6

 【遠 目】 6

 【火竜撃】 6

 【強 弓】 6

 【剛 弾】 6



 【名 前】 メルル

 【年 齢】 15

 【職 業】 魔岩将

 【レベル】 60

 【体 力】 1677+6800

 【魔 力】 2420+1800

 【攻撃力】 782+1800

 【耐久力】 1318+6800

 【素早さ】 782

 【知 力】 2420

 【幸 運】 1503

 【スキル】 魔岩将〈6〉、飛腕〈6〉、穿孔拳〈6〉、光束剣〈6〉、修復〈6〉、合金〈2〉、槍術〈3〉、盾術〈3〉

 【エクストラ】 合体(右腕)


・スキルレベル

 【魔岩将】 6

 【飛 腕】 6

 【穿孔拳】 6

 【光束剣】 6

 【修 復】 6


「では、作戦通り、もう少し近づいたところで補助を掛けましょう」


(制限時間は特にないらしいが、今回の戦いのリミットは1時間だからな)


 今回の戦いは限界を1時間に設定してある。

 これは仲間たち全員との共通認識だ。

 1時間ギリギリまで戦うと言うわけではない、今回の戦いには制限時間がある。


 アレンは魚系統の特技及び覚醒スキルをパーティー全体に振りまいていく。

 特技は24時間持続し、覚醒スキルについては1時間しか持たない。


 アレンは魚系統の召喚獣で漏れなく特技と覚醒スキルを全員に振りまいていく。

 キールは聖壁スキルを振りまいていく。


「木の精霊ドライアド様、加護をお与えください」


『ええ、分かったわ』


 ソフィーは木の精霊を顕現させる。


(うしうし、ソフィーは守り主体に成長したな。こういう時に助かるぜ。つうか精霊4体全員それぞれがステータス3000増加できるってすごくね)


 セシルは完全に攻撃魔法主体だが、大精霊使いになったソフィーは回復や守りに重きを置いた形に成長した。

 木の精霊を顕現できるようになったのは、精霊神の干渉を疑わざるを得ない。


 この世界の補助スキルの重なりにおいて1つの法則がある。

 補助スキルは基本的にすべて重なる。

 しかし、僧侶と聖者のように完全上位互換の職業の場合は、上位の補助スキルが優先され、下位の補助スキルはかき消される。


 この40数人のパーティーにおいて、ソフィーは唯一の精霊を顕現できる。


 手足が木になった少女の姿をした木の精霊ドライアドは周りに木の葉が落ちるようなエフェクトとともに仲間たちのステータスを上昇していく。

 全員にかけ終わったら次々と精霊を顕現させ、他のステータスを上昇させていく。


・水の精霊ニンフ 魔力3000上昇

・風の精霊ゲイル 素早さ3000上昇

・土の精霊ピグミー 耐久力3000上昇

・木の精霊ドライアド 体力3000上昇


 ヘルミオスのパーティーの聖騎士も同じく補助魔法を掛けていく。

 2人いる聖女は聖王キールの下位職業のため、補助を掛けても打ち消されるので意味がない。


 ガララ提督のパーティーとメルルのゴーレムは待機だ。

 大き過ぎて、出した瞬間に最下層ボスと周りのゴーレムたちが動きかねない。


(仲間を呼んで良かったな。これが多様な種族、多様な職業の強みか)


 そう思いつつ、楽術師レペを見る。


「おもしれえ。外にはこんな敵がいるのか。戦いのビート!」


 楽術師レペは今回の戦いを楽しんでいるように思える。

 獣王国の外はとても新鮮で刺激的であったようだ。


 そんな楽術師レペの手元に筒のような太鼓が無数に現れる。

 踊るように、リズムよく叩いていく。


(いや、こいつはすげーぞ)


 アレンは感動する。

 実は攻撃力を上げる補助は、数多ある職業とスキルの中にも数えるほどしかないらしい。

 補助で一番多いのは耐久力向上で、「補助」という言葉の通り、いかにも守りのためのものだ。


 しかし、楽術師レペは攻撃力を2割上げるスキルを所有している。

 そして、次はタンバリンのようなものを出して素早さを2割上昇させる踊りを行う。


「お前はいつも楽しそうだな。星の加護よ」


 そう言って今度は占星術師テミが、宝石や鉱石のようなものを無数に中空に飛ばす。

 そして、一気に仲間たちのステータスにバフの効果を示す。


 楽術師レペと占星術師テミは回復も攻撃も苦手なようだ。

 しかし、使用できるスキルの全てはバフとデバフで構成されていた。

 中には体力と魔力を自然回復させるものまである。


 全身に力がみなぎってくることが分かる。

 それは他の仲間たちも同様のようだ。


(こうだ! こうじゃなきゃ!! レイドならではの醍醐味だ!!)


 アレンは興奮を抑え自らを落ち着かせる。

 パーティーの人数が少なければ、効率も考え、それだけ職業に偏りが生まれる。


 しかし、30人、50人と増えて行けば、普段構成に入れない職業が1人とか2人とか入れることができるようになる。


 そして生まれる補助の重なりによる圧倒的なステータスの強化だ。


 一通り補助を掛け終わる。


「じゃあ、行くぞ」


 アレンの声と共に、後衛の職業を後ろにして、前に前進する。

 するとヒヒイロカネのゴーレムの目が光った。


『ほう。我はこの試練の塔を守る番人ゴルディノだ。我に戦いを挑みに来たか』


 そう言って、目の前の最下層ボスが巨大な広間に響く声を発したのであった。


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