第250話 転職②

 メルルがアイアンゴーレムを降臨させることができるようになって1ヵ月が経った。

 あれから強化用石板や、大型用石板を手にすることができた。

 ゴーレム「タムタム」はどんどん強くなっていく。


「ヘルミオスさんは、今日はダンジョンに行かないんですか? っていうか、ロゼッタさん。あんまりくっつかないでください。あっちに席空いていますよ」


(我にきやすく触れるでない)


「そう言わないでよ。僕たちの仲じゃないか」


「そうよ。アレン君。そういうこと、目上の人にいうもんじゃないわよ」


 ここはヘルミオスのパーティーとシェアをする拠点の1階だ。

 

 ここにはアレンとヘルミオスのパーティー全員がいる。

 お陰で20人ほどの結構な大人数だが、この拠点は30人の冒険者パーティーでも入れるので問題はない。


 なお、シェアということでこの拠点の家賃はアレンパーティーが金貨10枚、ヘルミオスパーティーが金貨20枚ということになった。


 ヘルミオスの使用人たちが殺風景だったこの拠点に家具を揃えたお陰で、この1ヵ月で貴族の館の食堂を思わせるようなテーブルもソファーも充実してきた。


 そんなソファー席に座るアレンの横にロゼッタという名前の怪盗の才能を持つ女性が座る。へそがでた衣装を着た女性はアレンの何が気にいっているのか、何かとちょっかいを掛けてくる。


 拠点では酒を飲んでよく絡んでくるので、このパーティーに入った経緯を聞いた。

 何でもロゼッタはギアムート帝国の帝都で泥棒を働く盗賊一味の頭領であった。

 捕まって死刑になるところを、仲間になることを条件に解放されたという話であった。今はヘルミオスの心を奪いたいなどとほざいている。


 星3つのレアな斥候系を仲間にするにはそういう方法があるのかとヘルミオスの評価が少し上がった。


 色々な経緯でヘルミオスは20歳前後の女性を8人仲間にしている。


 怪盗ロゼッタがニマニマしながら手をアレンの肩に置く。

 アレンは何をしても無反応なので、それが逆に楽しいようだ。


 アレンからため息が漏れる。


「あら?」


 するとアレンの隣に座っていたセシルが無言でその手を払いのけ、殺気の籠った視線で怪盗ロゼッタを睨みつける。


 それを見るとさらに怪盗ロゼッタはニマニマする。

 どうやらセシルをからかって楽しんでいるようだ。


 そんな中、ソフィーの肩に乗るモモンガの姿をした精霊神ローゼンが宙に浮き、アレンの方を見る。


 今日は1日休みを伸ばして、全員の転職をする日だ。

 転職後、転職した後の戦い方について話をしたいと思っているので、今日は1日休みの日だ。


『全員レベルもスキルも成長限界まで来ているね。はは』


「はい。カンストした全員分の転職をお願いします」


『分かったドンドン行くね。はは』


「本当に転職ができるのだな」


 精霊神ローゼンが腰振りダンスをしながら、転職を進めていくと剣聖ドベルグが涙を浮かべながら、その様子を見ている。

 もしかしたら何十年も夢に見た光景なのかもしれない。


 ドベルグだけでなく、ヘルミオスの仲間は皆、目を見開き転職するアレンの仲間たちを見ている。


 仲間によっては職業に選択肢が増えた者がいるが、構成と効率を考えながら職業を選択していく。


 そして、全員の転職が済んだ。


 【名 前】 クレナ

 【年 齢】 14

 【職 業】 剣帝

 【レベル】 1

 【体 力】 1790

 【魔 力】 770

 【攻撃力】 1790

 【耐久力】 1608

 【素早さ】 1150

 【知 力】 775

 【幸 運】 1095

 【スキル】 剣帝〈1〉、斬撃〈1〉、剣術〈6〉

 【エクストラ】 限界突破

 【経験値】 0/10

・スキルレベル

 【剣 帝】 1

 【斬 撃】 1

・スキル経験値

 【斬 撃】 0/10


 【名 前】 ドゴラ

 【年 齢】 14

 【職 業】 戦鬼

 【レベル】 1

 【体 力】 1098

 【魔 力】 651

 【攻撃力】 1615

 【耐久力】 817

 【素早さ】 683

 【知 力】 504

 【幸 運】 727

 【スキル】 戦鬼〈1〉、渾身〈1〉、斧術〈6〉、盾術〈2〉

 【エクストラ】 全身全霊

 【経験値】 0/10

・スキルレベル

 【戦 鬼】 1

 【渾 身】 1

・スキル経験値

 【渾 身】 0/10


 【名 前】 セシル=グランヴェル

 【年 齢】 14

 【職 業】 魔導王

 【レベル】 1

 【体 力】 995

 【魔 力】 1614

 【攻撃力】 578

 【耐久力】 624

 【素早さ】 1022

 【知 力】 1778

 【幸 運】 1007

 【スキル】 魔導王〈1〉、火〈1〉、組手〈4〉

 【エクストラ】 小隕石

 【経験値】 0/10

・スキルレベル

 【魔導王】 1

 【火魔法】 1

・スキル経験値

 【火魔法】 0/10


 【名 前】 キール=フォン=カルネル

 【年 齢】 14

 【職 業】 大聖者

 【レベル】 1

 【体 力】 583

 【魔 力】 1120

 【攻撃力】 447

 【耐久力】 623

 【素早さ】 712

 【知 力】 979

 【幸 運】 895

 【スキル】 大聖者〈1〉、回復〈1〉、剣術〈3〉

 【エクストラ】 神の雫

 【経験値】 0/10

・スキルレベル

 【大聖者】 1

 【回 復】 1

・スキル経験値

 【回 復】 0/10


 【名 前】 ソフィアローネ

 【年 齢】 49

 【加 護】 精霊神

 【職 業】 精霊使い

 【レベル】 1

 【体 力】 712

 【魔 力】 1231

 【攻撃力】 504

 【耐久力】 489

 【素早さ】 713

 【知 力】 1406

 【幸 運】 594

 【スキル】 幼精霊使〈1〉、火〈1〉

 【エクストラ】 大精霊顕現

 【経験値】 0/10

・スキルレベル

 【幼顕現】 1

 【 火 】 1

・スキル経験値

 【 火 】 0/10


 【名 前】 フォルマール

 【年 齢】 68

 【職 業】 弓聖

 【レベル】 1

 【体 力】 982

 【魔 力】 535

 【攻撃力】 850

 【耐久力】 846

 【素早さ】 543

 【知 力】 360

 【幸 運】 582

 【スキル】 弓聖〈1〉、遠目〈1〉、弓術〈6〉

 【エクストラ】 光の矢

 【経験値】 0/10

・スキルレベル

 【弓 聖】 1

 【遠 目】 1

・スキル経験値

 【遠 目】 0/10


 アレンのパーティー転職経緯メモ

・クレナ 剣聖★★★⇒剣王★★★★⇒剣帝★★★★★

・セシル 魔導士★★⇒大魔導士★★★⇒魔導王★★★★

・ドゴラ 斧使い★⇒狂戦士★★⇒戦鬼★★★

・キール 僧侶★⇒聖者★★⇒大聖者★★★

・ソフィー 精霊魔術師★⇒精霊魔導士★★⇒精霊使い★★★

・フォルマール 弓使い★⇒弓豪★★⇒弓聖★★★


「あれだな。ドゴラは戦鬼か。エクストラスキルは今回の転職で消えるかと思ったが、まだ残っているな。消えるのは次か?」


「……」


(お前がエクストラスキル使えないせいである意味ヘルモードなんだが?)


 狂戦士に転職して1度も使っていない全身全霊がまだ残っているなとアレンは嫌味を言う。

 ドゴラは何も反論しないようだ。

 ドゴラが全身全霊を使えるようになると戦況が一気に変わると確信している。


 エクストラスキルが使えるようになるための方法をヘルミオスに聞いているが、有効な情報は聞きだせなかった。


「それにしてもありがとうね。皆見たかな。これで人類に希望が持てるよ」

 

 アレンが転職の結果を記録しているとヘルミオスが話を始める。


「いえ、別に隠すことでもありませんので」


 皆を転職できるようにする準備を進めているという精霊神ローゼンの話が本当なら、転職はこれから世界に周知されることになる。

 今更隠す必要もないと考えている。


 なお、ヘルミオスたちとは一緒に住んでいるが、天の恵みや魔力の種を作るところは見せていない。

 ダンジョンに行かない日に部屋に籠って何をしているのか聞かれても答えるつもりはない。

 ただ、「休んでいる」とだけ答えている。

 開示する必要のない自らの能力は今後も態々教える必要はないと考えている。


「でもお礼はよろしくお願いしますよ」


「分かっているよ。別に転職を見せてくれなくても、紹介はするから」


 アレンはヘルミオスに1つのお願いをしている。

 それはオリハルコンの加工だ。

 次の階層にいけばオリハルコンが手に入る。

 しかし、このオリハルコンは武器や防具の状態ではないとヘルミオスが教えてくれた。


 神の鉱石であるオリハルコンを武器や防具に加工する力はディグラグニにはまだないという。

 加工には火の神フレイヤの力を借りる必要があるらしい。

 4階層で稀に手に入るオリハルコンは塊の状態だという。


 そこで、このバウキス帝国にあるもっとも有名で名工な鍛冶職人がいるので、紹介してくれると言われた。

 一見さんお断りの気難しいドワーフの鍛冶職人がオリハルコンを加工して剣や盾、鎧に加工してくれるらしい。


「あと、これを次のダンジョンから持ってきてね」


「はい、アレン様。が、頑張ります」


「アレン殿。やはり、精霊をまず扱えるようになって……」


「フォルマールさん。俺たちはあまり時間がないよ。まずやってみて厳しかったら精霊に心血を注ぎましょう」


 ソフィーが動揺するので、フォルマールがフォローする。

 しかし、アレンの考えは変わらなかった。


 ソフィーは精霊使いになった。

 精霊を顕現させて戦わせる職業だ。


 アレンがソフィーに渡したのはこの2ヵ月弱の間に宝箱から回収したアダマンタイト製の弓だ。

 ソフィーが転職したら渡そうと売らずに拠点に置いていた。


 アレンはローゼンヘイムの戦争で、精霊使いガトルーガの戦いを見ていたが、彼は弓を持っていた。

 霊Bの召喚獣を通じて、ソフィーが精霊使いになったのだが弓を使えるかと聞いたら、精霊との意思疎通に慣れたら問題はないと教えてくれた。


 そういうわけで、ソフィーには弓スキルの体得と精霊との意思疎通の2つの課題を与えている。

 アダマンタイトの弓なら、Bランクは瞬殺だし、指輪で攻撃力を増やせばAランクの魔獣にも攻撃が通じるようになる。


 ぜひ今後の効率のためにも体得してほしいとソフィーに対して強めに説得する。


「あとは、1ヶ月くらい3階層に籠ったら4階層に挑戦するぞ」


 アレンは次の方針を語りだす。


「これが廃ゲーマーってやつね」


 それを聞きながら、アレンがリーダーを務める「廃ゲーマー」というパーティー名の意味を以前聞いた怪盗ロゼッタが今の状況を見て、なんとなく納得するのであった。

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