第214話 転職

 アレンは精霊神が精霊王であったころに、ローゼンヘイムを救ったら仲間達がより強くなるレア度の高い職業に転職させてほしいと精霊王に言った。


 その結果、仲間達全員を星4つの職業にすることを約束させることができた。

 なお、アレンはこれ以上星が上がらないため、才能のない妹に僧侶の才能でもと考えている。


 これで、弟マッシュが槍使い、妹ミュラが僧侶、クレナ妹のリリィが拳士でパーティーが組めてバランスがいいなと思う。勝手にクレナ妹を巻き込んでの冒険者パーティーを構成する。弟マッシュはクレナの妹リリィと結構仲が良い。


『お礼って、僕結構魔神戦で役に立ったと思うけど。はは』


「おお、そうでした! まだお礼言っていませんでしたね。エルフを救うために、久々に最前線に出て頂いてありがとうございます!!」


 大げさにアレンがお礼を言う。

 あくまでも精霊神が力を貸したのはエルフのためでしょう。もしその礼が欲しいならエルフから貰ってくれと言う意味だ。


 精霊神の助力はアレン達に対するお礼に入らないということだ。


「「「……」」」


 女王も将軍も長老もアレンの仲間達も勇者も、アレンと精霊神との駆け引きを見ている。


 特に、まだアレンという者を知らない長老達は、精霊神相手に何事だという困惑とも見られる表情をしている。なぜ、女王も将軍達もこの状況を止めないのだろうと思っているようだ。


 そして、また振出しに戻る。


『前も言ったけど、モード変更は絶対にしないからね』


「ですが、魔神はできると……」


『絶対にしないよ。僕がエルメア様に消されちゃうから』


 アレンのことを遮るように、そして食い気味に精霊神はモード変更はしないという。


(ほほう、だが。これも精霊神なりのお礼とみて良いな。「できない」ではなく「しない」と言っている時点で何らかの方法はあると)


「分かりました。モード変更はこちらで別の方法を考えます」


(絶対にエクストラモードに変更する必要があるからな)


 魔神と戦い、エクストラモード、エクストラスキルの意味が理解できたと思っている。

 そして、エクストラモードとなった魔神の強さもよく分かっている。


 モード変更の方法を探す冒険も必要だと確信する。

 S級ダンジョン以外に目的が出来たことにワクワクが止まらない。


 既に精霊神になったことに対するお礼はしてもらう前提の話をする。


『僕が精霊神になったことでできることで、お礼をしていいかな?』


 別のお礼を言おうとするアレンに対して、お礼を決めると精霊神は言いだす。

 心を読める精霊神が、アレンの思考を読んだのかもしれない。


「え? そうですね。それでお願いできますか?」


(なるほど。精霊神になったお礼だからな)


『星の数を5つの職業に転職できるようにするよ。はは』


「おお! 全員を……」


『1人だよ。アレン君の仲間の中で1人をだ。そんなにたくさんの人間を星5つにすることは出来ないよ。はは』


 アレンは、全員の職業のレア度を星5つに出来るのかと思ったが、食い気味で精霊神が否定する。


 今回、ローゼンヘイムを救ったアレンの仲間達全員を星4つにしてくれるのだが、1人だけ星5つにしてくれると言う。


(く、全員は無理なのか。でもこの感じは、世界に存在する星5つの数に制約があるのか、それとも精霊神の力が足りないのか。それにしても1人か、それなら1択だな)


 エクストラモードにできない事と同様に、何らかの制約があるのかなと思う。


「では、その時はクレナをお願いしますね」


「え? 私?」


「え? 何でクレナなのよ?」


 アレンは仲間達の中からクレナを選択する。

 クレナは自分の名前を呼ばれて驚き、セシルは自分じゃないのかと思う。


「ああ、クレナは星3つだから1回しか転職できないからな」


「「「1回?」」」


 アレンの仲間は、クレナが星3つでセシルが星2つ、そして残りは星1つだ。

 星4つまで上げる場合は、クレナ以外は2回以上の転職ができる。


 これからも一緒に仲間達と共にダンジョンに行ったりして、レベルを上げ成長していく仲間達だ。転職の回数はなるべく偏らない方が良いと考えている。


 星が増えたからって必要経験値は変わらない。

 星の多い仲間は速攻でレベルが上がって、そこで成長が止まる。


 あくまでも効率の話だ。

 アレンが簡単に説明をするのをしっかり仲間達は聞いている。


「それに、今回の魔神戦で前衛の壁役が崩壊するときついのは分かった」


 星5つの勇者ヘルミオスがいても、魔神に防衛ラインを抜かれて中衛のアレンにまで攻撃が届いた。これはクレナとドゴラの力が足りなかったからだ。壁役には敵から後衛を守る大切な役目がある。


 今後も魔神と戦うことを想定するなら、前衛の強化は仲間全体の生存に関わると説く。


 アレンの話を、仲間だけでなく女王や将軍、長老達も聞いている。これが魔王軍を殲滅した男の考えなのかと思っているようだ。


『まあ、転職するときに誰にするか言ってくれたらいいよ。はは』


「ありがとうございます」


『じゃあ、約束通り全員ここで転職ってことでいいのかな?』


「もちろんお願いします」


(俺以外レベル1になると。レベルは少しどこかで上げないとな)


『じゃあ、ソフィアローネさん』


「は、はい」


『ソフィアローネさんは精霊魔導士だね』


「ありがとうございます!」


 そう言うと、女王の膝に乗っていたモモンガの姿をした精霊神が、中空に浮いて腰を振りだす。


(精霊王の祝福とモーションは同じ感じなのか?)


 ライオン状態での転職のモーションが見たいなと思う。


 ソフィーの体が点滅するように光り、そして光が収まる。


(おお! 精霊魔導士になった。ぶっ! ステータスは半分の引継ぎありか。これはありがたい!)


 【名 前】 ソフィアローネ

 【年 齢】 48

 【加 護】 精霊神

 【職 業】 精霊魔導士

 【レベル】 1

 【体 力】 362

 【魔 力】 811+1000

 【攻撃力】 299

 【耐久力】 329+1000

 【素早さ】 422

 【知 力】 452

 【幸 運】 420

 【スキル】 大精霊〈1〉、火〈1〉

 【エクストラ】 大精霊顕現

 【経験値】 0/10


・スキルレベル

 【大精霊】 1

 【 火 】 1

・スキル経験値

 【 火 】 0/10


 指輪は魔力+1000、耐久力+1000を装備している。


 アレンは、レベル1にしてはソフィーのステータスがかなり高いことに気付く。

 レベル1のステータスは一桁や二桁前半がほとんどであったと記憶している。しかし、ソフィーのステータスは既に3桁に達している。


 どうやらカンストしたステータスの半分をレベル1のステータスとして引き継げるようだ


(いつの間にか、精霊神が加護を与えているけど、そのおかげなのか?)


 ソフィーの年齢の下には、他の仲間達にはない精霊神の加護が付いている。

 どうやら、魔神レーゼル戦の最中に付いたようだが、特に効果は分からない。


(エクストラスキルは引継ぎ、職業で覚えたスキルは消えると。職業で覚えたスキルが消えるのは残念だな。まあ、星が増えても覚えるスキルはほとんど同じらしいからな)


 エクストラスキルは「大精霊顕現」から変わらない。

 どうやら転職しても、新たなエクストラスキルが追加されたり、もう一度エクストラスキルガチャにより別のエクストラスキルに変更されたりすることはないようだ。


 そして、火や水の精霊魔法の表記がステータスから消えている。

 これはもう一度最初からスキルを覚えよと言うことなのだろうと思う。


 なお、職業の上位職は僧侶でも聖女でも同じ範囲回復魔法を使えるという。

 魔法の名前も同じだと聞いている。上位の職業で違うのは、回復範囲や回復量であったりするらしい。


 たしかに前世のゲームで、職業を上位職に転職しても同じ魔法を使うことが多かったなと思う。


 ステータスの半分引継ぎは喜びつつも、スキルが増えないのは残念だと思う。


(あとは、皆のレベルを成長させて見たら分かるということかな)


『じゃあ、次にフォルマール君ね。君は弓豪だね。はは』


「はい!」


 まだまだ検証したいことはたくさんあるが、分かったこと、検証したいことを魔導書にメモを取って、フォルマールの転職の模様を確認する。


 ソフィー同様に転職してレベル1になる。

 スキルの表記は一旦リセットされる。

 そして、ステータスはやはり弓使いのカンスト時の半分だ。


 【名 前】 フォルマール

 【年 齢】 68

 【職 業】 弓豪

 【レベル】 1

 【体 力】 661

 【魔 力】 358+1000

 【攻撃力】 865+1000

 【耐久力】 570

 【素早さ】 364

 【知 力】 241

 【幸 運】 392

 【スキル】 弓豪〈1〉、遠目〈1〉、弓術〈6〉

 【エクストラ】 光の矢

 【経験値】 0/10


・スキルレベル

 【弓 豪】 1

 【遠 目】 1

・スキル経験値

 【遠 目】 0/10


 指輪は魔力+1000、攻撃力+1000を装備している。


(なるほど、ソフィーと同じ感じか。じゃあ、精霊神の加護でステータスの半分を引き継げたわけではないのか。それにしても遠距離攻撃の火力が上がるのは助かるな)


 ステータス半分引継ぎ効果で遠距離攻撃のフォルマールの攻撃力が結構上がった。


『どんどん行くよ。次はクレナさんね。はは』


「はい!」


(お? 剣聖の次は何だろう?)


 精霊神がクレナを転職させる。


「どう?」


 クレナの転職を確認するアレンと仲間達が魔導書をのぞき込む。


「「「剣王!!!」」」


 【名 前】 クレナ

 【年 齢】 14

 【職 業】 剣王

 【レベル】 1

 【体 力】 1220

 【魔 力】 477

 【攻撃力】 1220+1000

 【耐久力】 856

 【素早さ】 824+1000

 【知 力】 487

 【幸 運】 598

 【スキル】 剣王〈1〉、斬撃〈1〉、剣術〈6〉

 【エクストラ】 限界突破

 【経験値】 0/10


・スキルレベル

 【剣 王】 1

 【斬 撃】 1

・スキル経験値

 【斬 撃】 0/10


 指輪は攻撃力+1000、素早さ+1000を装備している。


(うは! レベル1で攻撃力1200ある件について。これマーダーガルシュを倒せるんじゃね?)


 星3つの剣聖を超える職業は剣王だった。そして、アレンはクレナのステータスを見て驚愕する。

 このステータスならレベル1でもBランクの魔獣であるマーダーガルシュとも戦えそうだと思ってしまうのであった。

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