第39話 収納
5か月ほど時間が過ぎた6月である。春から夏に変わる時期にアレンは大きな樽の上にいた。足の下には一家の洗濯物がある。
(おお! やっと召喚レベルが上がったぞ)
午前中は畑仕事と洗濯が日課のアレンは、洗濯物を洗いながら、喜びを噛み締める。1年以上かけて召喚レベルを4にしたのだ。
魔導書の表紙には喜ばしい黄色の文字が表示されている。
『強化のスキル経験値が100000/100000になりました。強化レベルが4になりました。召喚レベルが4になりました。魔導書の拡張機能がレベル3になりました。収納スキルを獲得しました』
(また、レベルが上がった時の情報が多いな。とりあえずステータスの確認と)
まず、ステータスを確認して、何が変わったか確認する。
【名 前】 アレン
【年 齢】 7
【職 業】 召喚士
【レベル】 6
【体 力】 115(165)+50
【魔 力】 154(220)+100
【攻撃力】 56(80)+50
【耐久力】 56(80)
【素早さ】 108(155)
【知 力】 161(230)
【幸 運】 108(155)+100
【スキル】 召喚〈4〉、生成〈4〉、合成〈4〉、強化〈4〉、拡張〈3〉、収納、削除、剣術〈3〉、投石〈3〉
【経験値】 0/6,000
・スキルレベル
【召 喚】 4
【生 成】 4
【合 成】 4
【強 化】 4
・スキル経験値
【生 成】 256/1,000,000
【合 成】 120/1,000,000
【強 化】 0/1,000,000
・取得可能召喚獣
【 虫 】 EFGH
【 獣 】 EFGH
【 鳥 】 EFG
【 草 】 EF
【 ― 】 E
・ホルダー
【 虫 】
【 獣 】 F10枚
【 鳥 】
【 草 】 F20枚
【 ― 】
(収納スキルが追加されているな。ん? なんだ? 収納スキルは数字がないぞ。能力は固定ってことか? スキル経験値の欄にもないしな)
まず、目に付くのは新しく手に入れた収納スキルである。どうやらスキルレベルのないスキルのようだ。
洗濯物を庭に干しながらさらに、分析を続ける。
(収納スキルの効果はこれから確認するとして、あとはおお! やはり召喚スキルのレベルが上がってEランクの召喚獣が解放されているな。また【-】になっているな。これは召喚しないと分からないと)
また、合成により召喚獣を探す作業が始まるのかと思う。今回は魔力が前回のFランクの召喚獣の時よりかなり多いのでさくさく見つけることができそうだ。
(それにしても、さすがヘルモードだな。前回のレベルアップはいつだったか)
前回の召喚レベル3になった時期を確認する。どうやら1年10か月かかったようだ。ランクが上がる度にどんどん召喚レベルを上げるのが難しくなっていく。さすがヘルモードだ。
・1歳00か月 魔導書獲得、召喚レベル1、召喚獣Hランク
・1歳10か月 召喚レベル2、合成スキル獲得
・3歳00か月 召喚獣Gランク
・5歳11か月 召喚レベル3、強化スキル獲得、召喚獣F
・7歳09か月 召喚レベル4、収納スキル獲得、召喚獣E
魔導書のメモに召喚レベル4になったことを追加で記録する。
(あとは拡張レベルが3になったと)
魔導書の召喚獣のカードを納めるホルダーを確認する。
(おお! 40枚のカードを保管できるようになっているぞ!)
召喚獣の加護はカードの枚数の分だけ加算される。これで30枚から40枚と、10枚分の加護が増えたことになる。
加護は+1、+2、+5とどんどん大きくなっていっている。Eランクの召喚獣となると、もっと大きな加護が期待できる。そのEランクの召喚獣を40体カードにするとかなりのステータス増加が見込める。
(うほほ、これで父さんに腕相撲で勝てるか! ボア狩りに余裕で間に合ったぜ。いつ頃挑戦するかな。狩りの前日にあっと言わそうかな)
ロダンとの腕相撲のリベンジは10月を考えている。
(さて、あとは収納とEランクの召喚獣の検証か。どっちを検証するかな。新しく手に入った収納スキルから確認するか)
全ての洗濯物が干し終わったので、収納スキルを検証する。
(収納!)
やり方が分からないので、とりあえず念ずる。魔導書は思考とかなりリンクしているので、スキル名を念じると基本的に反応する。
魔導書が開く。いつもは開かないページだ。
(ん? 凹みがあるぞ。なんだ?)
魔導書の見開きの中央に縦横30センチメートルの凹みがある。アレンが不思議に思うのは、その凹みの深さだ。明らかに魔導書の厚さ以上の凹みであるのだが、向こう側が見えないのだ。
(なるほど、ここに何かを入れるのか?)
何を入れようか考える。とりあえず、地面に落ちた枝を入れてみる。恐る恐る入れる。実はすべてを飲み込む異空間かもしれない。
抵抗もなく枝が入っていく。
(ほうほう)
引っこ抜いてみる。普通に飲み込んだ部分が出てくる。
投石用の野球ボールほどの石ころを入れてみる。普通に入る。完全に収納の中に納まるのだ。
(ちょっと怖いけど、手を入れてみるか)
手を入れて、石ころを掴もうとする。
(おお! イメージだ。これは中に入っている物のイメージが伝わってくるぞ)
手を突っ込むと、視覚的にもリスト的にもイメージがアレンの中に入ってくる。
リスト的なイメージ
・石ころ1個
それから、どれだけ入るのか、長さに問題はないのかあれこれ確認する。
・石ころ10個
・1メートル以上の木(草Fのアロマ)
・薪20日分(300キログラム)
・水
(なんだこれ? 無限に入るんじゃねえのか?)
検証結果はとんでもないものだった。30センチメートル四方の大きさの凹みに入るなら、どうやらなんでも入るようだ。今のところ入れすぎたから入らなくなる、もしくは元あったものが消えるようなことはないようだ。
検証のために入れすぎた薪を戻しながら驚愕する。
「アレ~ン、ごはんよ~」
検証に熱中しすぎたようだ。もうお昼だ。土間にいるテレシアから声が掛かる。
「は~い、母さ~ん」
(おかしい。おかしいと言うか、これは不自然というか不可解だ。なんで今なんだ?)
検証結果に違和感を覚える。釈然としない。
アレンは健一だった頃、たくさんのゲームをしてきた。それも20年以上だ。アイテムをどれだけ持てるかは、ゲームをする上で最も大事な条件のうちの1つだ。
例えば、ゲームによっては、アイテムの個数を10個とか20個と固定されており、それを超える場合は、預かり所に持っていかないといけない。
ゲームによっては、アイテムにそれぞれ重さが設定されており、一定の重さまでしか持てない。しかも職業やレベルによって持てる重さの上限が変わる。
ゲームによっては、無限にアイテムが入る巨大な袋を最序盤に貰える。
アレンの疑問は、なぜこの中途半端なタイミングでこんな神性能のスキルが手に入るのかということだ。魔導書が手に入った1歳の時なら分かる。いっそのこと手に入らないでも納得できる。
それが、こんなHGFと上げてきてEという4番目のタイミングだ。半端な時に手に入った、無限にアイテムを入れることができるスキルだ。
あんまり熱中していたのか、またテレシアから声が掛かる。昼飯を作る手伝いもあるので、慌てて土間に戻る。昼飯を作りながら思考は加速する。
ゲームでは、重要なアイテムは必要な時に必要なものが手に入るものだった。鍵、空飛ぶ絨毯、船など、それがないとゲームが攻略できないからだ。必要な時に必要なものが手に入る。それは制作者がそのように遊べるように誘導するからだ。
(これは、何か理由があるんだ。今じゃないと駄目だったんだ)
アレンは確信している。何故なら、このスキルの設定をしている制作者は、この異世界の創造神であるからだ。
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