第08話 Gランク
山田健一が異世界に転生してアレンとなり3年の歳月が流れた。アレンは3歳になった。
アレンは3歳になったので、家の周りなら外出しても良いという許可をテレシアから貰った。アレンの誕生日はこの世界の暦で10月1日のようだ。この日は開拓村の収穫祭とされている。なるほど、今年の食事も豪勢であったが、収穫祭も兼ねていることを知った3歳である。何か、クリスマスと誕生日が一緒だった気分になった。
なお、収穫祭というのは、別に村の中心で盆踊りをするようなものではない。教会と呼ばれている宗教的な施設がこの開拓村にもあり、豊穣の神に村長が収穫した作物を奉納するという儀式を行うようだ。
農奴はそのような儀式に参加することがない。そういえば、1歳の誕生日にロダンは狩りに出かけていたなということを思い出す。
農奴についても、この3年で随分知識がついてきた。収穫した作物の6割は税として領主の代理人である村長に納める。開拓当初の減免措置は既に無くなっており、がっつり税として持っていかれる。収穫した作物の6割ということなので、できた作物が多いほど、手残りの作物は多くなる仕組みである。
なお、収穫があまりにも少なかったり、税をごまかしたりすると農奴よりさらに不遇の奴隷に落とされることもあるという話をテレシアから聞かされた。
では、残り4割の作物や、狩りでとれた肉の全てが食料になるかというとそういうわけではない。生きていくのに必須な塩に交換したり、アレンのぼろ布でできたおむつに変わったりする。
そして、この異世界にも四季がある。豪雪地帯ではないようだが、冬はそれなりに銀世界に覆われる。寒さから身を守るためにも薪が必要だ。
1回で10kg近く貰える狩りの報酬の肉も半分は薪代に消える。
開拓村での暮らしは農奴ということもあり、主に物々交換だ。しかし、少しであるが、農奴でもお金は持っている。アレンは今年の2月頃に高熱を出した。子供部屋の床板を剥がして、硬貨を拾い、出かけていったロダンをアレンは覚えている。帰ってくると、飲みなさいと恐らく解熱剤であろう薬を飲ませてくれた。
ほとんど全額を持っていったのか、今は床板を外しても銅貨と鉄貨が数枚あるだけだ。あとは小石のようなものが5つほどある。これは角の生えた兎の魔石とのことだ。アレンがこの世界のお金を見たのも魔石を見たのも初めてである。
そして、3歳になってしばらくが経ったある日だ。
アレンは今、庭先に生えている木を背もたれにしている。大木ではないがそれなりの大きさの木だ。庭には塀があるのだが、容易にのぞき込めるので木を壁にして、召喚の検証をしている。
(終わった、合成レベル2と生成レベル2が大体分かったぞ)
合成レベル1と生成レベル2を覚えたのはアレンが1歳10か月のことだった。
なぜ今検証が済んだかというと、消費魔力が足りなかったからだ。どうやら10月1日の誕生日を迎えると、アレンのステータスが1割ずつ増えていく仕様のようだ。年齢によるステータスの抑制が1割ずつ解放されていく。いま3歳になって、最大魔力が6となり、ようやく検証ができたのである。
そして、合成レベルを2にすることによりGランクの召喚獣の分析を無事に終えた。
まずはそれぞれの検証結果だ。
生成レベル2
・消費魔力は5
合成レベル2
・消費魔力は5
・虫Gと獣Gを合成すると鳥Gになる
検証結果を魔導書にあるメモ機能にメモを取っていき、概ねの理解が済んだ。
肩に召喚した鳥Gを乗せ、ステータスを確認する。
【名 前】 アレン
【年 齢】 3
【職 業】 召喚士
【レベル】 1
【体 力】 12(40)+26
【魔 力】 1(20)
【攻撃力】 3(10)+26
【耐久力】 3(10)+6
【素早さ】 7(25)+10
【知 力】 9(30)+4
【幸 運】 7(25)
【スキル】 召喚〈2〉、生成〈2〉、合成〈2〉、拡張〈1〉、削除
【経験値】 0/1,000
・スキルレベル
【召 喚】 2
【生 成】 2
【合 成】 1
・スキル経験値
【生 成】 4,701/10,000
【合 成】 20/1,000
・取得可能召喚獣
【 虫 】 GH
【 獣 】 GH
【 鳥 】 G
・ホルダー
【 虫 】 G2枚、H2枚、
【 獣 】 G12枚、H2枚、
【 鳥 】 G2枚
(とりあえずどうするかな。スキル経験値は消費魔力と同じということが確定したしな)
残魔力を確認する。
(スキル経験値が消費魔力と同じなら、消費魔力が余る生成レベル2や合成レベル1より、生成レベル1で生成レベル3になるほうが効率がいいな。魔力余らせても勿体ないしな)
アレンの最大魔力は6、生成レベル1は消費魔力2、生成レベル2と合成レベル1は消費魔力5だ。効率よく消費魔力をスキル経験値に変換するなら生成レベル1の1択である。
(スキルを上げるのはこんなもんでいいだろ。さてと)
「なあ、アレン」
肩に載っている鳥Gに話しかけるアレン。頭の中で特技と念じる。
「うん、俺アレン」
鳥Gがアレンの声で返事をする。
(なるほど、Gランクになってずいぶん召喚獣が便利になってきたぞ)
新しく召喚できるようになった3体のステータスである。
・形状はカエルの虫Gのステータス
【種 類】 虫
【ランク】 G
【名 前】 ピョンタ
【体 力】 7
【魔 力】 0
【攻撃力】 6
【耐久力】 10
【素早さ】 10
【知 力】 7
【幸 運】 8
【加 護】 耐久力2、素早さ2
【特 技】 挑発
・形状はモグラの獣Gのステータス
【種 類】 獣
【ランク】 G
【名 前】 モグスケ
【体 力】 10
【魔 力】 0
【攻撃力】 10
【耐久力】 6
【素早さ】 5
【知 力】 7
【幸 運】 6
【加 護】 体力2、攻撃力2
【特 技】 穴を掘る
・形状はインコの鳥Gのステータス
【種 類】 鳥
【ランク】 G
【名 前】 チャッピー
【体 力】 7
【魔 力】 0
【攻撃力】 5
【耐久力】 6
【素早さ】 10
【知 力】 10
【幸 運】 8
【加 護】 素早さ2、知力2
【特 技】 声まね
相変わらず、ステータスはかなり低く、Hランクと同じくほとんど言うことを聞かない。しかし、アレンが注目したのは特技だ。
鳥Gの召喚獣は、アレンの声を再現できる。実際、セキセイインコなどが人の声を覚えることができるが、精度はその比ではない。完全に本人の声だ。ただし、あまり長い言葉や複数の声は覚えさせられない。
次に目の前に穴から顔を出している獣Gの召喚獣。小型犬ほどの大きさのモグラは、大きさ30センチメートル、深さ1メートルほどの穴を簡単に掘る。
(これは、落とし穴とか簡単に作れるんじゃないのか)
魔力を必要とせず、無限に特技の指示ができる召喚獣。言うことは聞かせられないが、特技を発動させたら、思ったところに穴を掘ってくれる。
最後に、虫Gの召喚獣がアレンの傍にいる。ウシガエル並みの大きさでかなり大きい。
(挑発しろ)
「ゲコゲコゲコ」
特技の指示を受けたカエルは、緑だった体の色を赤や黄色に変化させ、不規則にジャンプしながら鳴き始める。
Gランクの召喚獣を見ながら、考える。どうやら、召喚士とは強い召喚獣を召喚できるようにすることだけが目標ではない。
例えば、この虫Gのカエルなら、挑発で魔獣のターゲットを自分からカエルに変えることもできるかもしれない。獣Gのモグラなら頑張れば巨大な穴を掘って罠を作ることもできるかもしれない。召喚獣の特性をしっかり理解することが大切なことを知るのであった。
カーン
カーン
カーン
(む? そろそろか)
遠くの方で鐘がなる。開拓村の3時を知らせる鐘であった。
アレンは地面に置いてあった木刀を握りしめる。
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