第07話 レベルアップ
アレンが異世界に転生して1年と10か月となる。あと2か月で2歳だ。
良い両親に恵まれたということもあり、すくすくと育っている。乳離れも最近終わった。貧しいながらも大切に育てられ、これも1つの幸せかと思う今日この頃。
両親は農奴なので、アレンも農奴だ。アレンは現実世界にいる頃の認識から、農奴の要素は主に2点だと考えている。
・職業選択の自由がない
・土地を所有できない
諸説あるが主にこの2点に尽きる。現実世界では19世紀まで大勢を占めていた制度だ。今でもそれに近い制度を取っている国もある。
この異世界の暦は、どうやら1年12か月で1か月30日、1週間6日なことをこの10か月の間に知った。少しずつこの異世界を知っていく。
また、四季があり、春夏秋冬で環境は変化する。冬は結構な雪が降り、家が掘っ立て小屋にかなり近いため2回目の冬はとても寒かった。
走馬灯のようにこの10か月ほどの出来事や思い出が巡っていく。
それは今、この魔導書の表紙に記載されているメッセージ機能がそうさせている。魔導書の表紙は真っ黒だが、何かアレンが召喚をしたり、ステータスの変化があるとゲームのログのようにメッセージが流れていくのだ。
普段は銀色のログだが、今回は黄色文字だ。黄色文字は今後、アレンにとってハッピーな色になること間違いない。
『生成のスキル経験値が1000/1000になりました。生成レベルが2になりました。召喚レベルが2になりました。追加で合成スキルレベル1を獲得しました。拡張レベル1を獲得しました。魔導書のメモ機能が追加されました』
「ふぉおおおおおお!!!」
ゲーマーにとって、最も苦労が報われる瞬間だ。食事とか寒さとかどうでもよくなった。夏真っ盛りということもあり、今テレシアはロダンとともに畑仕事をしている。おかげで気持ちよく雄叫びをあげることができる。
(や、やばい、あれこれ気になるが、まずステータスはどうなっているんだ)
魔導書の表紙に表示されたログに気になるところは満載だが、まずはステータスの確認をする。
【名 前】 アレン
【年 齢】 1
【職 業】 召喚士
【レベル】 1
【体 力】 4(40)+8
【魔 力】 0(20)
【攻撃力】 1(10)+8
【耐久力】 1(10)+2
【素早さ】 2(25)+2
【知 力】 3(30)
【幸 運】 2(25)
【スキル】 召喚〈2〉、生成〈2〉、合成〈1〉、拡張〈1〉、削除
【経験値】 0/1,000
・スキルレベル
【召 喚】 2
【生 成】 2
【合 成】 1
・スキル経験値
【生 成】 0/10,000
【合 成】 0/1,000
・取得可能召喚獣
【 虫 】 GH
【 獣 】 GH
【 - 】 G
・ホルダー
【 虫 】 H2枚
【 獣 】 H8枚
【 - 】
(こ、これは…なんか『-』っていうのが増えているぞ? これはなんぞ?)
気になることが多すぎて思考停止した。浮いた魔導書を小さい手で握りしめ、15分が経過する。
(お、落ち着くんだ、どうやら生成レベルが上がって、召喚レベルも上がって、Gランクの召喚獣が生成できるようになったということか? もしかして、ランクが上がると召喚獣の種類が増えていく系なのか?)
召喚レベルもしくは生成レベルが上がり、新たな召喚獣が追加されたと推察する。
(とりあえず、追加された召喚獣を生成してみたいけど、魔力が足りないからそれ以外を検証するか)
ステータスの合成という文字を見る。きっと召喚獣の合成ができるようになったと推察する。召喚獣はカード形式で保存するので、カード同士の合成が可能になったということだろう。
G生成と合成は魔力が必要と思われるのでそれ以外の検証を進める。今魔力を消費してレベルが上がったばかりなので魔力がない。
(それにしても1万とか、なんで次の生成レベルに必要なスキル経験値が10倍になるんだ)
今のペースなら1日3回生成しても4年半かかる。これでは、時間がかかって仕方ない。アレンのレベル自体が1なので、なんとか最大魔力を上げる方向でどうにかせねばと考える。
(次は魔導書の拡張機能だけど、お! ホルダーの凹みが、えっと、これは20個と倍になっとるやんけ! てことは20体まで召喚ストックできる。加護も倍貰えるということか!! うひょー!!!)
ホルダーが10個から20個になれば、カードとしてストックできる召喚獣が倍に増える。召喚獣をカードにした時の加護は1枚ごとに加算されるため、これだけで加護が2倍になるともいえる。
(えっと、最後にメモがどうのこうのって? お? メモって書いたページが10ページほどあるぞ!! おお! これは意識したらメモが記録できるぞ! うひょー!!)
魔導書の最後にあったメモ機能は、その名のとおり、魔導書の最後のほうのページの余白をメモとして使えるようになるものだ。10ページ分だ。辞典並みに大きい魔導書なのでなんでも十分に記録できる。そして、思考を読み取っての自動書記。かなりの便利機能だ。
(さて、魔力は今0なんで、仮眠して夜検証できなかったものを試してみるか)
レベルアップによる恩恵がかなり大きなことを知って、喜びの中お昼寝に戻る1歳のアレンであった。
ロダンとテレシアが家に帰ってくる。土間に農具をおいて、水甕で手足の泥を落とし、顔を洗いのどを潤す。水甕の水は毎朝ロダンが水くみ場から汲んでくる。この水で料理もアレンの体を拭いたりもする。
「アレン、いい子にしていましたか? すぐ夕食作りますからね」
「はい、ママ」
テレシアの赤ちゃん言葉はずいぶん減ってきた。授乳期も終わり、子供の成長のためのようだ。ロダン家はそんなに調味料の多い家ではないので、煮るか焼くしかないので料理はすぐ出てくる。アレンのために野菜やら豆やらイモやらをすりつぶすのはロダンの役割だ。
いただきますも祈りの言葉もなしに食事が始まる。閉鎖された開拓村の中なのであまり代わり映えしない会話だ。
「そういえば、隣の家のクレナがお転婆で困っているそうだ。遊び相手になってほしいってゲルダが言っていたぞ」
「え?」
(そういえば、お隣さんがいたな。グレイトボアの解体以来会っていないけど)
お隣さんのゲルダに抱えられてやってきたピンク髪の幼児を思い出す。
この開拓村は村の中に沢山の畑があるのでそれなりに大きい。隣の家であっても2歳に満たないうえに、まだ家から1人で出たら駄目だというテレシアの言いつけを守り家の中にいる。なので、お隣と言っても会う機会がない。
「そうね、将来のお嫁さんになるかもしれないんだから、仲良くしないとだめよ」
そろそろ20歳になるテレシアはそんな話が好きなようだ。あらあらまあまあと嬉しそうに会話に参加する。狭い世界で両親も知り合いで年も近いというか同じだ。基本的に、アレンとクレナのようなケースで結婚相手を見つけるのが普通な農奴だ。外には基本的に出られないので、他に方法がないとも言える。
「え? 家から出てもいいの?」
「そうね~3歳になるまで駄目かしら」
どうやら、お隣とはいえ、3歳になるまで外出禁止が続くようだ。
家族の団欒も終わり、子供部屋に戻る。
(ふふふ、魔力も回復しとるで、これはもうやるしかないでしょ。G生成にするかな、合成にするかな。とりあえず、新スキルの合成にしてみるか)
魔導書が現れる。合成と念じたためか、パラパラとページがめくれる。
(お、魔導書に新たなページができたで! 中央に凹みが2つしかない、お! 次のページは凹みが1つしかないぞ。これは2枚の召喚獣を1枚にするのか。合成の条件が分からないからとりあえず、獣H2体を合成してみるか)
凹みに獣H2枚をはめ込む。
(よし、合成だ!)
しかし、2枚のカードはそのままで変化は起きない。
(え? やり方おかしかったか)
魔導書表紙のログを確認する。これを見ると結構参考になる。メッセージが流れている。
『合成レベル1に必要な魔力が足りません』
「ふぁ! 足りんて!!」
おっと大声出してしまったと口を塞ぐ。どうやら最大魔力2では魔力が足りない。
(え? もしかして詰んだ? 最大魔力が低すぎて合成できないのか、じゃあGの生成はどうなんだろう)
合成は魔力が足りなくて、できないと判断した。
Gの生成に挑戦する。『-』は何かわからないので、獣にしてみる。
(獣G生成!)
しかし何も起きない。これももしやと思い、魔導書の表紙を確認する。
『獣Gの生成に必要な魔力が足りません』
(そ、そんな、獣Gの生成も合成も今の魔力じゃできないってこと? 最大魔力が低すぎるのか?)
途方に暮れる。どうやら、レベルアップしても、まだまだできないことは多いのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます