大好きな彼女から振られた男が、点鼻薬を彼女と思い込むことで人生を楽しく乗り切ろうとする物語。
シュールでカオスな光景が乱れ飛ぶコメディ作品です。
本当に「シュール」「カオス」という語以外には説明のしようがない光景……とはいえ、冒頭に限れば全然そんなこともなく、むしろ真っ当で堅実な描写が続くのですけれど、そこから急に様子がおかしくなる感じが楽しかったです。
個人的にはその冒頭部、まだ正気を保っていたあたりの文章が好き。リズム感というか、なんだか読んでいて心地が良い感じ。
様子がおかしくなってからはもうどうとも表現のしようがないというか、とにかく独特で個性的でした。だいぶ異様ではあるんですけど、でも別にハイテンションというわけではないんですよね。おかしな何かがどんどこ繰り出されるけど、でも主人公自体は普通に落ち着いている感じ。
どこまでが現実かは危ういのですけれど、とりあえず出来事そのものを見たなら悲劇なのだと思います。おかしくなってしまった主人公とその行く末のお話。独特の感性が光るパワフルな作品でした。