5月5日Ⅹθ(21)

「一つお尋ねしたいことがあるのですが、よろしいでしょうか?」

「気にせず言うてええで」

私が切り出すと、四咲未来は快活に続きを促した。

「今、この会場前に大勢の人が集まって抗議集団が作られているのはご存知ですか?」

「うん、知ってんで。彼らはうちの会社の元社員たち、そうやん?」

四咲未来はさも当然のことのように言う。

「はい、その通りです。先ほど彼らにその理由を尋ねたところ、四咲家本家が直接彼らの会社を潰した、と言っていたのですが、それは本当ですか?」

さあ。何て答える、四咲未来。

「え、そうやったん?うちはその話、なんも聞いてへんけどなぁ。そないしたら、うちの親決めたこっちゃあらへんかいな」

は?

ちょっと待て。

四咲未来は、このことを把握していない?

こいつの差し金じゃないのか?

私は師範の方を向くも、師範は小さく首を横に振る。

嘘はついていない、だそうだ。


「それがどうかしたん?」

「いえ、少し気になっただけで、なんでもありません」

私は小さく頭を下げて言う。

何も知らないと言う四咲未来とは対照的に、二階堂紗良は今までずっと話していたのが嘘みたいに、終始無言でこちらを見つめていた。


一体、どうなってるんだ。

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