5月5日Ⅹθ(11)

「———という経緯だそうです」

私は師範に、今聞いてきた、事の顛末を全て余すことなく伝えた。

「三和家からの圧力?昨日に?」

師範は額に手を当てて、思案する。

「昨日、と言っても実質的権力のある、愛奈様の側近は今ほとんど全てが、体調の優れない慎之介様のもとへ向かっていて、私たちは昨日は晩餐会で」

師範はぶつぶつ呟きながら考えている。

「アリバイがない重要職の人がいないってことですか?」

「アリバイがない、そうだな。いや?待てよ?」

私の思考速度を遥かに上回る勢いで、師範は頭を巡らせる。


「神坂、わかったぞ」

「・・・何が、ですか?」

私は恐る恐る師範に尋ねる。

「この事態を作り出すことができた人物が、だ」

師範は、額に手をグリグリと当てながら答える。

「——っ?!ほんとですか!?」

食い気味に尋ねる私を静止しながら、師範は重たい口を開くようにして言う。

「ああ、そいつの名は———」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る