5月5日Ⅷ(9)

砂丘で1日ゆっくり過ごして、その後三和本家に着いたのは、18時45分を少し回った頃だった。

「お待ちしておりました楠木様、神坂様」

三和本家に到着すると使用人の方が私たちを出迎えてくれた。

「当主三和慎之介がお待ちです」

「「ありがとうございます」」

タクシーから降りた私たちを先導するように使用人の方が歩いていく。

私たちはお礼を告げて一礼すると、広いお屋敷の門をくぐった。


「では暫しこちらでお待ちください」

屋敷の中のとある和室で待つように指示され、私たちはカバンを下ろして椅子に座った。

「ここ広いねぇ」

「うん」

詩歌の返答が素っ気ない。

また少し緊張しているようだった。


「お二方、どうぞこちらへ」

5分ほどして戻ってきた使用人の方に呼ばれて、屋敷の奥へと伸びる廊下を歩いていく。

早くも太陽が沈み月の明かりが風情のある屋敷の庭を優しく照らしていた。

「こちらです。どうぞ」

ある一室の前へとたどり着くと、使用人の方はペコリと一礼して元来た道を戻って行った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る