5月4日Ⅵ(6)

「ATAMI MOON TERACE?」

海沿いの地域を散策していると、石の柱に書かれた文字が目に飛び込んできた。

「どことなくイタリアに雰囲気が似てますね」

愛奈さんが感慨深そうに呟く。

「熱海市が北イタリアのサンレモ市と姉妹都市であることや、地形と街並みが似てい

 ることから、 地中海北部のリゾート地のイメージで整備されてる場所らしいよ」

スマホで調べてみると案の定そうだった。

「昔のことを思い出して懐かしいです」

愛奈さんは遠い記憶を思い出すようにそっと目を瞑る。

その記憶は私が知らない愛奈さんが主役で。

ほんの何かが変われば、今こうして出会っていないかもしれない不確かな場面。


「いつかみなさんとイタリアに行きたいですね」

お、それはいいかもしれない。

本場のピザとか食べてみたい。

「いいねイタリア!いつかと言わず高校卒業したらでも一緒に行こうよ!」

「ええ是非!その際は観光ガイドは任せてくださいね」

愛奈さんは両手を胸に当てて眩しい笑顔で答えた。

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