4月30日Ⅵ(11)

「あとは、『開放度』って知ってる?」

「かいほーど?」

今の聞き返し方で分かった。

知らないんだね。

「『開放度』とは自分が石を置いた時に、裏返る相手の石周辺の空白マスのこと。

 この空きマスの数が少ないほど、勝つ可能性が高いって言われてる。

 だから二手目で黒と白を平行にしてしまうとその後の開放度に影響を与え、

 自分が不利になり負けることが多いとか。

 理想的なのは、開放度が一以下のところを狙うってのが鉄則らしい」

「ほえ〜。オセロってすごい奥深いんだね」

詩歌が感心したように頷いている。

「それを意識するだけでも大分違うんじゃないかな」

うーむ。

敵に戦略を教えすぎてしまっただろうか。

いいよね?

負けなきゃ良いんだよ負けなきゃ。


「そろそろ18時30分だしご飯にしますか」

「そうだね。じゃあ準備始めよっか」

二人で立ち上がると、居間へと向かった。


「準備完了いたしました!」

早速私の指示通り詩歌がたこやきプレートとガスコンロを用意してくれていた。

「うむよろしい」

冷蔵庫の中から、冷やしておいたたこ焼きの素、ソース、マヨネーズ、青のりを持って、机へと向かう。

「私焼きたい!」

「え、できるの?」

「うん!」

その笑顔は信用ならないことが下準備でわかったところなんですが。

「ほんと?大丈夫?」

「まあ見ててって」

ほんとにできるのだろうか。


「くるくる〜」

謎の擬音と共に片面焼けたたこ焼きをひっくり返す詩歌。

お?割と上手?

「ねね、私上手くない!?」

「意外…」

「架那ちゃんひどい!」

あははと二人で笑いながら、せっせとひっくり返す作業に入る。

「私たこやき店始めてみよっかな」

突然詩歌がそんなことを言い出した。

「シカたこ焼き、いいんじゃない?

 できたら買いに行ってあげるよ」

「架那ちゃんは一緒に働くんだよ?」

「えー、やだぁ」

そんなことを言い合いながら、私たちはたこやきを次々作り上げていった。

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