6月11日[金] 養殖モノのたい焼き

 ショッピングモールへお買い物。吹き抜けに屋台が並んでいた。香ばしい生地の匂いと甘いあんこの香りに誘われる。気づけば、たい焼き屋さんの前に立っていた。


 店主の手元を覗き込み、思わず二度見した。たい焼きが異様に大きいのだ。どれもラグビーボールくらいのサイズだった。


「らっしゃい!今なら焼き立てありますよ!」と言う店主の声に、わたしは、たい焼きに目が釘付けのまま「ずいぶん大きいんですね」と言った。すると店主は「そうなんですよ。コロナでね、大変なんですよ…」と、困ったように笑った。


 コロナとたい焼きの大きさになんの因果関係があるのだろうか?疑問に思って尋ねると「いえいえ、本来はもっと小さいんですよ?ふつーのサイズなんです。けどね、仕方がないんですよ。うちが仕入れているたい焼きは養殖モノなんでね」と店主。


 事情を聞くと、本来ならばもっと小さなサイズで出荷されるのだそうだ。だけどコロナの影響で大都市圏への供給も激減している。生け簀には、出荷待ちのたくさんのたい焼きが泳ぐ。どんどん大きくなるが、かと言って餌をやらないわけにはいかない。こうして、やっと出荷できるころには通常の倍以上のサイズになってしまうのだとか。


「味は変わりませんから安心してください。一尾が大きすぎるんなら、今は、切り身や半身フィーレでも売ってるんで」

 そう言われて屋台のメニュー表を見ると、確かに切り身や三枚おろしの値段が書いてあった。


 厳しいのは飲食業界だけでなく、養殖業などのあらゆる関連産業も同じなのだなと痛感する。

 どこまで支援になるか分からないけれど、応援の気持ちで一尾丸々買った。家に帰って五等分して食べる。皮はパリパリ、あんこはホクホクで美味しかった。何日か持つだろうし、残りはラップして明日の朝食にでもしよう。

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