町外れの書庫は日の眠る頃に

プロローグ

コツッ------コツッ--------


(ない……ない………)


見つけないと………早く………


もう廃墟となった図書館に自分の足音だけがこだまする。


「お客様……でしょうか?」


後ろから聞き慣れない声がした。

振り返るとそこには月光に晒され金髪の修道服を着たいかにもシスターというような姿の人離れするほど美しい女性が立っておりその腕の中には黒猫が抱えられていた。


いきなり声をかけられたのとシスターのその姿に圧倒され声が出ずにいると。


「申し訳ないですが、ここには何かがある訳でもないですし、廃墟となってから結構な月日が経っていて、建付けが悪く、ちょうど今朝も天井の板が1枚落ちてきちゃって………………危険ですので、長居することはあまりオススメできません。」


シスター姿の女性が申し訳なさそうに尋ねてきた。


このままここに残っていると厄介払いされる事が目に見えて分かる、自分仕方なくなぜここ来たのか理由を話す事にした。


「………………………………」


シスターは考えた素振りを見せたあと「なるほど……わかりました、着いてきてください」とだけ言って、部屋にあったドアの1つに手をかけ、本館を後にする。


自分もシスターの後に続く。


ドアの先は地下に続く階段が続いていた。

今はドアが開いているため月光で見えるが、閉めてしまえば暗闇で1歩先も見えない程だった。


「申し訳ございませんが、これを」


すると、シスターはレトロなロウソク型の手持ちランプとマッチを渡してきた。

マッチを擦り火をつけロウソクに移す。

辺りが火の暖かい光で照らされた。


シスターは扉を閉めると光を頼りに階段を下り始めた。


数分経った頃だろうか、シスターがなにかを思い出したかのようにこちらを振り返った。

「そういえば、自己紹介がまだでした、修道名 をアイリスと申します。長年私の教会の所有物である、この図書館の管理をさせて頂いています。まだ、着くまで少しあるので、ちょっとしたこの図書館の噂話などどうでしょうか?」


アイリスがそんな事を提案してきたので、静か頷きアイリスの話に聞き耳を立てた。


「では………」


ランプの火はゆったりと揺れ、終わりが見えない階段の闇へと不気味に溶け合っていった。







  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

町外れの書庫は日の眠る頃に @tukiura

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ