明日の君

神田藍月

第1話 幼い頃の記憶と現在。

『ひっこし?とおいところ?』

『うん、そう。あえなくなる。』


 なんでだろう、僕は泣かなく、ユウキは泣きじゃくっていた。悲しい気持ちはあった。けど、泣かなかった。また会えると確信してた。幼い自分の離れたくないと言う気持ちだったのだろう。

『きっとまたあえるよ、だからなくな。』

『...ほんと?』

『うん。』

 小さい子どもなりの自分の励ましだった。ユウキは泣くのをやめた。そして、

『わかった!約束!』

と小指を結んで指切りげんまんをした...



ゴツン!!!

と鈍い音がし、夢から覚める。ベットから身体が落ちた。

「...ッイッタ...」

 時間を見ると6:00だった。僕スマホを右手で持ち、右手で痛いところを手で押さえながら部屋を出る。

...懐かしい話だ。7年前の幼なじみとの思い出を思い出すなんて。



「あら、おはよう。今日は早いわね。あ、そういえば今日は入学式だよね?」

 階段を降りてリビングに行くと母さんはキッチンで朝ごはんを作っていた。

「ああ、そうだよ、母さん。...母さんは来れないよな...」

「え?行くわよ。お母さん」

「あ、了解...えっ!行くの!?なんで!?」

 母さんの言った言葉に驚く。母子家庭でいつも行事に来れないことが多かった。小学校入る前の時、離婚したのだった。

「子の成長見たいよ、私だって。それにね、この日に有休を入れたし、総代として晴れ晴れした姿も見たいから。」

そう言う母さんはなんとなく哀しそうな、嬉しそうな顔していた。僕は第一希望の公立じゃなくて私立の特待生制度の高校に行くために勉強したも同然である。

「うん、わかった。...いただきます。」

 話を終わらせてご飯を食べる。母さんのご飯はいつもとなんか違う味付け。多分、母さんも張り切っているのだろう。





...えっと、出席番号順で机が並んでいるはずだから...五十鈴はっと...あっ、あった。

席は窓側で外の景色が見えて、前から3番目の絶好の席だった。中学の時暇なときはずっと窓を見ていた。そしてあまり友達がいなかった。まぁ、この機会に作ればいい。

「入学生は整列くださーい!」

 ガヤガヤしていた雰囲気は静かになり、皆は並んでいく。僕は緊張しながらも頑張ろうという気持ちだった。

 そして、入学式は順調に進んでいく。

『――新入生代表より』

「暖かな春の訪れとともに、私たちは春日高校の入学式を迎えることとなりました。本日はこのような立派な入学式を行っていただき大変感謝しています――」

 終わった。良かったぁ。安心して席に帰った。その後はすっーと終わった...



 入学式が終わり簡単なホームルームが終わった直後、僕の席の周りにクラスメイトが群がってきた。

「ねぇねぇ、五十鈴さんってどこ中?」

「近くの公立だよ。名乗るほどでもないけど。」

「代表だから凄い勉強したんじゃないの?」

「結構したかなぁ、母さんに楽してほしいから。」

「趣味ってあるの、五十鈴さん?」

「ゲームかな、普通の趣味でごめんね」

皆からの質問に答える。結構これも気持ちがいい。

 中学では空気に徹したから、初めて起こることばかりで新鮮な気持ちになった。クラスメイトがワイワイと僕に質問を投げていると、

「五十鈴さん、懇親会に行かない?」

「あっさんせー!」「いいかもー!!」

とある背が高い子だった。確か名前は泉 優季...さん。皆も賛同していく。ユウキなのか?と思いつつ、

「母さんに連絡してオッケー出たらいいよ。皆と話したいし。」

『やったぁー!』

と言う感じで、懇親会行く事になった。連絡すると、母さんは『遅くならない程度にね?楽しんで!』と言ってくれた。正直母さんと色々話したかった。久しぶりの母さんが有休だったから。それにずっと一人飯が多かったからだ。

 その後、懇親会にてクラスメイトと雑談に花を咲かせた。また、色々な人と連絡先交換した。最近買ったばかりのスマホには20件もの通知が来ていた。そのLINEは『五十鈴さん、宜しくねー!』というものが多かった。


 懇親会が終わる頃には空は夕暮れ色になっていた。1つの一軒家の玄関を開ける。

「ただいまー」

「お帰りなさい。ご飯食べる?」

「うん、お願い。」

 熟年夫婦みたいな会話もお馴染みだった。僕ら家族にとっては。そして僕からすると、『ただいま』という相手がいるというだけで嬉しくなる。ずっとその人がいなかった。

「はい、どうぞ。」

「いただきます。」

 母さんは僕の前に座る。なんか聞きたいことがあるのかなぁと思いつつ、おかずに手をつける。

「ねぇねぇ、懇親会どうだった?」

「うん、クラスメイトがいい人そうだった。でも――」

「へぇ。それは良かった。」

そう言う母さんは嬉しそうだった。


 自室に戻り、泉 優季について考えていた。もしかしたら、ユウキなのかと...そして、いつこっちに来たのかと。

――あーーーーーーーーー!!!わかんない!!

 あっ、本人に聞けばいいんだ。そう思い、LINEを開き«優季»という表示を探す。見つけて打とうとする。どう聞けばいいんだ...?

『泉さん、前に会ったことある?』と打った内容だと変かなぁ。うーん...やめよう。バックスペースを長押しする。

 どう送るか悩んでいると、ピロンという音がした。

«優季»五十鈴さんってカスミ....?7年前の?

という簡単な内容だった。すぐ返そうと思い『うん、ユウキは元気だった?』と返信を打った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る