第112話 sideある刀


ご主人が私を埋めてもう数百年が経った。


いつか必ずまた手に取るために戻ってくるからここで待っててくれ


と言われたのでずーと待っているがご主人は全く来る気配がない。


そもそも人間は60年くらいで死ぬはず。ご主人はもっと生きれると思うけど流石に今も生きている事ははないと思う。


つまりもうご主人に会えるはずも無く私はずっとこの箱の中…いや土の中にいるしかない。


会いたいなーと思っていると辺りが急に明るくなった。


もしかしてご主人が!と思ったけどすぐに気のせいだと気づいた。辺りが森なら誰かに掘り出されたのかと思ったが、今は何処かの建物の中心で台座みたいなものに刺さっていた。


ご主人との思い出を思い返す度にいつの間にか数年がすぎていることが多かったので、もしかするとその間に運び込まれたのかもしれないと考えついた。


でもすぐにそんなはずは無いと考えた。だって急に真っ暗から明るくなったんだから流石にすぐ気付く。


それに掘られる音も箱を開ける音も、人の気配すらしなかった。今もしない。



ここに来たばかりの頃はどうやって来たのか、ここは何処なのかを考えていたけどどうでもいいか。と言う考えに至ったのでまたご主人との思い出を思い返す日々に戻った。


真っ暗から明るい所に変わっただけなので本当に前と変わらない日々を過ごしていると、数年後に新発見と共に新たな日々が始まった。


人の気配がする。ご主人との思い出を思い返すのを一旦止め私は人が入って来そうな方向に意識を向ける。


「おお!凄いな、ん?なんか真ん中に刺さってないか?」


「ここは明かりが無いのに一段と明るいな……ん?なんだって?なんだあれは……剣……なのか?」


「何?宝?やっぱりさっきのモンスターがボスだったのね!宝剣は何処!?あれね!……と危ない、危ない。罠あったりしない?」


「すごい!今日はちゃんと止まった!んーとね、罠は……なさそう」


!!!


私はなんて簡単事を見落としていたんだろう。そういえばこの部屋松明も囲炉裏も無いのに明るい!どうやって明かりをつけているんだろう?ご主人に教えたい!


そんな事を考えていると人間達が近づいて来た。


よく見てみると男2人、女2人でそれぞれ鎧ではない防具をつけていた。


何処の国の人だろう?ご主人が私を埋めた時にはもう戦が無くなったはずなんだけど、この人達は防具をしてるって事はまた戦の世に戻ったのかな?


「罠ってこの剣?を抜いたら発動する系じゃないのよな?」


「だからさっき罠はなさそうって言ったじゃない」


「なら抜くぞ!」


さっきから剣、剣って!私はご主人の刀だよ!


それに、え?私を持つの?止めといた方が良いよ?私はご主人専用の刀だし、普通の人が持てる様な刀じゃないよ?


「フンぬぬぬぬぬぬぬ!おっも!それになんか力抜けてく……」


「!?ちょっとそれなら離しなさいよ!」


「ほら今すぐ離せ、一応ポーション飲んどけよ」


「あのちょっとで抜けそうだからポーションを俺に飲ませてくれ!」


無理矢理抜こうとしてる……ついには私を抜こうとしてる男に女の1人がポーション?って言うのを飲ませてて他の3人が一緒に私を引き抜こうと頑張り始めた。


ポーション?を5本飲んだ頃に私は抜かれすぐさま何かに包まれた。


「なんなのよ……この剣……呪われてるんじゃない?大丈夫?」


「触ってなかったら大丈夫みたいだぞ、今は何ともないからな」


「とりあえず持ち帰って鑑定して貰うとするか」


「ダンジョンでこんなのが出てくるなんて思ってなかったね……」


こうして私は何かに包まれた状態で謎の明るい部屋を出てついに外に出る事になった。


ご主人を探せるかもしれない


そう考えるだけで気分が良くなる。


絶対見つける!

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