第47話 繋がれている四肢

神夜付近にいた人は運が良かったと言えるのかもしれない。恐怖を感じたのは一瞬だったのだから、しかしその一瞬でも生涯忘れる事は無いのかもしれない。


念話石を取り出した神夜は王城にいるメンバーと現地で探しているメンバーへと念話を繋げた。


「死んだ奴には俺が作ったポーションをかけておけ、現地にいる残りのメンバーは俺の所に集まってくれ。妃芽の遺体を持ち帰るぞ」


場所が分かったとでも言うのだろうか?数十分待つと残りのメンバーが全員集まった。集まったメンバーの中に居るのは勘崎や小晴、藍那などだ。それに加えて転移が使える奴がいる。


「真ん中だ、中央に妃芽は居るはずだ」


何故場所が分かったのか、何故わかったのかはよく分からないが一つだけ言えることが有るとすれば妃芽が殺されて殺気を放った時に分かったと言う事だ。原理はまだ分かっていないが、妃芽がいる場所が分かったと言う事実だけで今はいい。


神夜がそう言うと全員が頷いた、そして勘崎を見た。勘崎が再び頷いたのを確認すると一斉に勘崎を先頭に走り出した。


全力で走る事数分から数十分後、この国の中央へとやって来た。そこにあったのは城とは言えない、屋敷とは言えない建物だった。塔が複雑に入り乱れた建物と言う表現が一番適しているのかもしれない、急に90度で折れ曲がった塔や、途中で横から刀にでも斬られたかの様な表面を持つ塔などが幾つもありどこかしらで違う塔へと繋がっている様だ。


見ていてもしょうがない 。


早速乗り込もう、罠を警戒して全員で固まりつつ少し距離を空けて進む。近くにあった塔の入口から中へ入り、妃芽の遺体が有ると思われる中央の塔へと急ぐと少なからず兵士など、この国の人が行く手を阻む。


しかし一定の間隔になると誰もが倒れていく、遠くで止まれ!何者だ!と言っても神夜達が止まるはずもなく次第に距離が近付くと神夜が放つ殺気にやられて倒れると言うのを数回繰り返す頃には中央の塔へと足を踏み入れて居た。倒れた人は気絶しただけなのかと聞かれるとそうであり、そうでは無いと答える。


理由は藍那がかけた最罰者のスキルによるものだ。【選択する罪ジャッジメントシン】は罪に応じて死に至ったり、至らなかったりする。罪の重さは何故それをしたのかなどの理由が主な選択の1つとなっている。もし、犯罪を犯していても懺悔し、後悔しておりもうすることはないと誓っているのが基準だ。


死んだ兵士等は犯罪を犯し懺悔も後悔もしなかったので死んだのだ、屑に慈悲は要らない。


中央の塔へと来る前にも幾つかあった階段だが繋がっている階段と繋がっていない階段がある。2種類と言う訳では無いが、普通に繋がっている階段や、途中で切れている階段があり更には繋がっている階段を上がったら別の塔にワープしたなどがあった。しかし今回のは新しい、繋がっていない階段の先に何回か見たワープする入口が有るのだ。


「防御と念の為に浮遊出来る奴は浮遊しておいてくれ」


それぞれの準備が整い足をワープに踏み入れた瞬間、落ちる感覚に陥った。しかし、下を見ても床はしっかりと有るのだ、床が無くなって落ちた訳でも無く、罠で空中に投げ出された訳でも無い。その感覚は次第に消えていき、しっかり床に足が着いていると感覚になった。


そして目の前に広がる光景は鎖で四肢を繋がれ空中に浮いている妃芽の姿と数人の人であった。

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