潜入Ⅱ
「ッ!?」
入った瞬間の強烈な悪臭に声が出る。生臭さと鉄臭さが混ざった様な何とも言えない臭い。見た感じは書庫で、本が綺麗に並んでいる本棚が壁際に隙間無くありながらも漂う臭いがここだと示している。
「こんなに臭うのに入っても誰も気付かないとか有り得ないよね?」
《 我の装飾化により各種能力が上昇してます。嗅覚もその一つで、人間並の嗅覚ならば分からなかったはずです。》
ハティルは装飾化のお陰でましらしい。元の獣姿だと今の私の倍の嗅覚みたい。
「こういう部屋って本を動かせば本棚が動く仕掛けとかあるんだよね?」
《 物語の定番と言えばそうですが、違うみたいですね。主、一番右の本棚に壁との隙間がありますよね?》
仕掛けと言えばとはやる気持ちで本へと伸ばしていた手をハティルの言葉で止めた。
《 後、家族以外の者が本を持ち出した場合、当主に伝わるように施された結界があります。》
ハティル、それもっと早く言おうよ。もう少しで本取り出しそうになったって。
「何で分かるの?」
《 仕掛けに関しては当主の分泌物の臭いですね。そこからよく臭います。本に関しては魔力感知は得意ですから魔力で保護されている事に気付きました。》
うん、てか当主の分泌物って何処で嗅いだの?何時の間に!?聞いてみれば侵入後、充満している人間達の臭いを覚え当主の部屋の前を通った時に分かったらしい。貴族の家でもあり、多くの人がいる中で全て覚えるって、優秀過ぎるよハティルくん。私何もする事無くない?うん、無いよね?てか役に立つ事が出来るのかも分からないよ。自分の情けなさにしょげ込みながらもまだ歩き出したばかりだ。これから見つければいいよね。そう意気込み、ハティルの言葉通り壁と本棚の隙間に仕掛けが施されていた。本棚が動くものの想像していた音を立てて動くことも無く静かに本棚が動きだし下りる階段が現れた。今どき音を立てれば隠し部屋がある事がバレるだろうとハティルがね…。
「…やっぱゲームと現実は違うんだ。」
謎を解きガタンッガタンッの効果音に胸を躍らせテレビ画面を見ていた前世の私に言ってやりたいよ。
「行くよ。」
《 守りは我にお任せを!》
ハティルがいるからこそ私も不安無く行けるんです。そうして階段を下りて行くにつれて、強烈になってくる臭いに装飾化解きたくなったのは内緒です。二階分ぐらい下りると扉があった。鍵が施されているものの、ハティルが顔?尻尾?の部分で打ち付ければ簡単に取れた。触ればもふもふのふわっふわなのに、凄い。
「入るよ。」
ドアノブを手を取り心臓の音がよく聞こえる中、開けた。扉の隙間から流れていた臭いが一斉に襲って来る。そこから見える風景に絶句した。これならばまだ馬小屋の方がましだ。魔物のコレクターならば確り魔物の管理ぐらいしろや。地下であるそこは、正に牢屋。錆びた鉄格子と壁。魔物達がいる場所には藁の何も無い殺風景な風景。首輪を付けられ、横たわっていた。元気が無い、痩せ細った身体で生きているのが奇跡なぐらい、魔物だからだろう。死にかけている、そんな状態で現れた私に殺気が籠る目。
《 我が主に殺気を向けるか!?》
いやいや、流石にこれは仕方ないでしょ!?人間にやられたんだから、人間みたいな私なんだし殺気向けるのは当たり前でしょ!ハティルのお陰で逆に震え出した魔物達。
「ハティル、これは仕方無いって。」
《 仕方が無いで許せません。主に殺気を向けること事態、相手がどんな状態だろうが許す気はありません。》
「人間を憎くんでるんだからね。」
《 我にとって主を人間と一緒にする事態が有り得ません。》
「一応今半分は人間で、元人間だし。」
《 主は主です。それ以外の何者でもありません。》
ハティルにとって私神格化されてる?敬愛がヤバいよ、凄く!私逆の立場なら凄く理解出来るんだけど、ハティルも分かるよね?
「誰だろうとこんな状態で人間を憎めないわけないよ。そんな善人いないでしょ。」
死にかけの状態。やりたい事、楽しかった事、後悔なんか考えるんだよね。
「まだ自由に動けるのに、こんな状態にされれば私だって憎む。私は病だったけどね。」
どうして私なのって、病気にだって憎んだんだから。
「死に関してなら分かる。死に方は違うけど、まだ回復出来るならしてあげたい。」
《 ……》
「ハティル!」
《 ウッ……》
「嫌いにな《 やりましょう!》…。」
ハティル、チョロいね。
《 ですが主、助ける者は我に決めさせて下さい。》
ん?何かあるのかな?ハティルの事だし何か考えがあるのかな?
「分かった。」
助けないって事はそれなりに理由があるって事だよね。聖なる獣だもんね。まぁ、助ける理由が嫌われたくなくて助ける聖なる獣なんてハティル以外いないだろうけどと、小さく笑った。亡くなった魔物には手を合わせその他を回復させていく。回復してもまだ留まるようにと、今出ても人間の町だ、魔物にとって危険でしかないからハティルに伝えてもらっている。後で一緒に行けばいいよね。
《 主、もしかして我の背を使うつもりじゃ》
「無理な者達もいるからその魔物達だけでもね。」
感謝を伝えて魔物達。成獣となってる者ならば大丈夫だけど、幼獣は無理でしょ。
《 我の背は主以外乗せたくありません。》
うん、それでもそれ以外無理なんだから諦めてと伝えるなり嫌そうにへたりこむハティルだった。
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