依頼達成

逃げて行く二人を背を眺める。


「ハティル、いけそう?」

《あやつ等の魔力は把握しました。依頼主の元まで案内して貰えるでしょう。》


優秀過ぎるは、本当にもう格好良過ぎない!?今すぐ小さくして頭は撫でてあげたいぐらいだけど、今は我慢。ハティルに任せてしまったけど、先程の魔法を見てハティルのステータスを全く知らなかった事に情けなく思う。ハティルの主なのにね。創獣一覧からハティルのステータスも見れるのかと確認すれば見れた。


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創獣 : ハティル

種族 : 天神狼セルヌフェンリル

フェンリル種の上位種。神に近し聖なる獣。正邪を見抜き、墜ちた者に裁きを与える存在だと言われている。

属性 : 氷・聖

装飾化(襟巻き)

装飾時 : 能力向上、取外し本人のみ可能、神速、防御力up。

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HPとかMPとかはやっぱ無いよね。想像していたステータスでは無く創獣図鑑みたい。でも天神狼セルヌフェンリルって格好良過ぎでしょ?聖なる獣だよ?神に近いって凄すぎない?…てか私神人だしちょっと当たってる?でも神人だし神じゃないから違うのかな?氷と聖の属性ってのはちょっと納得しちゃった。聖なる獣って言われてる通り神々しい姿だし、ハティルに乗った時触り心地以外にもひんやりと冷たくて気持ちが良かった。装飾化はまだ試してないけど、早めにやった方がいいよね。これ終わってからにしよう。


「ねぇハティルって正邪を見抜けれるんだよね?ハティルにとって皆どう見えるの?」

《ステータス見ましたか?我も進化してから驚きはしたんですが、面白いですよ。我の目から見れば雰囲気に色があるんです。先程の者で言えば淀んだ黒い物がその者を包んでる様な感じですね。清い物ならば白で、邪に染まって行くとゆっくりと淀んで最後は黒くなる、見たいですね。切り替えれるのでその者を見れなくなる事は無いですね。》

「じゃあ私の色は?」


そう、ハティルにとって私がどう見えてるのか気にった。正邪なら私はどっちなのか。邪では無いけれど清いとは思わない。ゲームに出会う前までは凄く荒れてたから。家族は見舞いにも来ない。顔は知ってても他人の様で、仲良さげな家族を見てるのが嫌で妬ましくて、健康な人も羨ましかった。友達もいなければ家族もいない、独りぼっちで生きてる意味もないけど、死ぬのは怖かった。備え付けのTVを見て殺人者は生きて私は死ぬのかって、どうして私を選んだのか教えて欲しかった。生きてる意味無いのに生きたいって笑えて、何もないから死んでもいいのかなって思って泣いた。白くは無いけど黒くもないとそう言える。そんな私に困った様子で振り向くハティル。

 

《主に関したは我は見えないのです。神人だからかとも思えますが…。ただ主が何色だろうと墜ちようとも我等は主と共に生き死ぬまでです。》

「でも堕ちた者に裁きを与える存在なんでしょ?」

《我は我で、元はただの魔物です。そんな使命など我にはありません。我に命令出来るのは神ではなく主ただ一人だけですから。》


やっぱハティルの愛は重いなと思いながらも嬉しくて、愛されなかった私が生まれ変わって報われてる。家族愛が欲しかった私だけど今はもう大丈夫かな。ハティルもいるし、まだ会えてないけどずっと一緒にいた皆がいるから。私を好意てくれてるかは分からないけど、私の大好きな皆だから好かれる様に頑張ればいいだけだしね。


「その時は宜しく。ハティルといれば堕ちる事は無いと思うけど。」

《主が堕ちる前に我等が阻止しますよ。》


頼もしいよね。


《我一人だけでも大丈夫ですが、他の仲間も起こして下さい。》


うん、職業Lvが上がれば起こせるんだけど今は無理かな。


「どうやったら職業Lv上がるのか分からないけど頑張ります!」


ゲーム的には使用してれば上がるはず。でも創獣使いヴァリマーが上位職以上なのは確かだから、下位職よりもLv上がり難いのかな。私の生涯ゲームに費やしたと言ってもいい程だし、難い方が遣り甲斐があるってもんね!そんな私とハティルの会話をに少し離れた場所にいた黒猫クーちゃんはそっと入って来た。


《あの、追手を追い払って頂きありがとうございます。》


そう頭を下げた。


《これでソフィの元へ帰れます!》


嬉しそうに尻尾を揺らす黒猫クーちゃんは、ソフィアナさんの所に行きたくてうずうずしていた。まだ色々とあるんだけどいいかな。


「私はソフィアナさん家に行くからハティルは行ってていいよ?」

《大丈夫です。今の所は支障はありませんので依頼主の元へ行きましょう。》


ハティルの背に乗り帰る私達。行き同様の安定感と乗り心地抜群さと触り心地に最高に酔う私だった。

ソフィアナさんと黒猫クーちゃんとの感動の再会には泣いた…嘘です、泣いてません。でも抱き合う二人を見て依頼を受けて良かったと思えた。冒険者としての遣り甲斐でもあり、こういう光景を見るのは幸せだよね。初依頼成功を祝して、と言いたい所ですが、ソフィアナさんからの依頼達成の署名を貰い少し寄り道しましょうか。


「冒険者様、本当にありがとうございました。」

《本当にあなたのお陰でソフィと一緒にいれるの。ありがとう!》


ソフィアナさんに甘える黒猫クーちゃんは私を見詰めて目を細め鳴く。ソフィアナさんはいつか黒猫クーちゃんの事気付くのかな?その時はその時だね。


「依頼ですから、もし又何かありましたら冒険者ギルドの方まで依頼下さい。」

「ええ、そうさせて頂くわ。」


頷くソフィアナさんは、離れようとした私を呼び止めた。


「あの、お名前を聞いても宜しいかしら?もうクーちゃんと会えないと思っていたのに会わせて頂けたのです。知らないままではいられません。」


涙を拭き黒猫クーちゃんを抱き上げて姿勢を正す老婦人。老いてはいるれど、落ち着きや雰囲気が貴族なんて知らない私から見ても気品ある姿に見えた。言ってなんだか申し訳無いけれど、こんな質素な所に貴族がいると思えなく、私の勘違いかな?


「冒険者Fランクのセシリィです。又依頼がありましたら宜しくお願いします!」


冒険者らしく名乗るのは、ちょっと高揚しちゃった。黒猫クーちゃんにも手を振ってソフィアナさんと別れた。


「さぁ、行こうか。」

《道案内は任して下さい。》

「うん。ハティル、宜しくね。」


ハティルに飛び乗り家の屋根を跳び移る私達だった。

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