第29話 洋一⑦
最終話でございます。
なんでこんなに長くなった??
では、よろしくお願いいたします。
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「で、どうなの?」
「……な、何が⁉」
あずさの追求が始まったよ。さすがにはぐらかすのはもう無理か……この話は、おいおいって言ったのになぁ。
「おいおいって、洋兄ちゃんたち今日帰っちゃうじゃない⁉ そしたら次に話せるのいつになるかわかんないでしょ?」
「そんなこと言っても今はインターネットがはった――」
ダンっとあずさがテーブルを叩く。
「誤魔化しはおしまい」
「はい……」
「洋兄ちゃん。エレンちゃんは洋兄ちゃんの奥さん、配偶者だよね? 間違いない?」
「ああ、間違いなく俺の妻だ。住民票にもちゃんと記載されているぞ?」
「うん。じゃ、ナイマちゃんは?」
「ん? ナイマはエレンの妹で俺から見れば義妹だな?」
「はい! ダウト‼」
ダウト。要するに嘘であると? ――間違いなく嘘だけど。
何をあずさは疑っているんだ? ――正鵠を射っておりますが。
身分証明諸々含めて、(捏造された)事実との齟齬はないはずなんだが? ――純度一〇〇%の偽造だけど。
「なぜ
「てゆっか、洋兄ちゃん、真実のほうが少なくね?」
「……えっと?」
五分五分くらい? ……七対三で嘘が多いくらいかな?
「あと、洋兄ちゃんたちあんまり隠すつもり無いよね?」
「そんなことは……」
「……え? ええ⁉ あれで隠しているつもりだったの‼ あんれま、こりゃたまげたよ……。ついでに『そんなことは』って言っちゃ隠していますって言っているようなもんだべ」
あずさが突然老化し始めたんで、彼女が壊れていく前に白状しちゃおう……異世界と魔法の話は当然ながら抜きにして。
「――と、いうわけで初めてのあいさつ通りエレンが第一夫人で戸籍上は妻。ナイマが第二夫人で戸籍上は妹になっている。まあ要するに二人とも俺の嫁さんだ……な? もういいだろ? 勘弁してくれ」
ある意味姉妹だって言ったら、あずさにグーで殴られた……
「エレンちゃんもナイマちゃんもそんなんでいいの⁉」
「え? あずさちゃん。何がだめなの?」
「ん? どこに問題があるのかわからないのでアズちゃん教えてぷりーずです」
あずさが疑問に思うのも無理はないが、二人はちゃんと俺のことを愛してくれるし、俺も二人を分け隔てなく愛しているので問題がない。
問題となるならば、この国の現代の法律や公序良俗的なものであろうが、実際は重婚しているわけでもないので法は守っているし、他人に後ろ指さされようと俺たちが納得しているのだからとやかく言われる筋合いもない。
こっちは異世界基準ですって言っても聞いちゃくれねえだろうしさ。
「え⁉ もしかしてあずさちゃんは洋一の第三婦人になりたいの?」
「は? どうしてそうなる?? 私、旦那様になる人いるし! 祐治以外に男なんて必要ないし! 祐治が全てだから! 愛しているのは祐治だけだし!」
「……あ、いやぁ~ そんな大声で愛の告白を聞かされるとさすがね照れるね、あずさ」
ちょうどあずさの絶叫告白のタイミングで祐治くんが縁側の方から登場した。
「あ……ぷしゅう」
真っ赤っかになったあずさは祐治くんに抱えられて、坂嶺家に戻っていった。そんなに照れることでもないのにな。あずさって案外と初心なんだな、と。
うるさいのも帰ったことだ。
「さ、のんびりしすぎるとまた帰るのが億劫になりそうだからちゃちゃっと片付けをして帰るぞ」
「「はーい」」
「じゃあ、わたしたち二階を片付けてくるね!」
「任せた!」
今度は高速道路で帰るので早い時間に出れば渋滞もさしてないだろうから順調にいけるだろう。
「もうこの家ともおさらばか。長い間ありがとうございました」
なんか恥ずかしかったので、エレンとナイマがいなくなった隙を見て家にお礼を言った。
「今後はあずさたちをよろしく頼みますね……。さ、片付けをさっさとやんないとな!」
いらないものはあずさや坂嶺家で処分してくれるが、残しておきたいものだけは持って帰る。
「あれもこれも思い出があってなぁ~ つっても全部は持っていくわけにいかないからな……」
昨夜からずっと堂々巡りだけどいざとなると悩むんだよな。だけどのんびりしてはいられないので、ほんの数点だけ段ボール箱に放り込んだ。
「お世話になりました」
「いつでもまた帰ってきなさいね、洋一くんも奥様方もね」
「ありがとうございます、おじさんおばさん。祐治くんもあずさもあとはよろしくな」
「はい、大事に住まわせてもらいます。たまには泊まりに来てくださいね!」
「よ、洋兄ちゃんもエレンちゃんもナイマちゃんもお元気でね……で、さっきのことは忘れておいてね⁉」
「さっきのこと? 愛の告白のことか?」
「あ~! もうっ! うるさいっ、洋兄ちゃんのばかばかばかぁ~」
お別れは騒がしいぐらいが丁度いいな。それじゃ、行くか。
「じゃ、エレンもナイマも車に乗って――」
「あ、ごめん、洋一! 忘れ物。五分待って!」
「ん? しょうがないな、行って来い」
エレンがなにか忘れ物というが、忘れるようなもんあったけな? ま、いいけど。
「そいじゃ、またいつか」
「結婚式……は、まだやるか決まってないけど、やるときは呼ぶから来てよね! そのときにはエレンちゃんとナイマちゃんのこともっと根掘り葉掘り聞くからね! ちゃんと話しなさいよ! わかった? バカ兄ちゃん!」
「はいはい、絶対来るよ! じゃあな!」
「「ばいばーい」」
さて、狭くて暑苦しい我が家に帰るとしよう。
★
「……行っちゃったね」
「そうだな。あずさ、お盆休み中に家の中の粗大ごみはある程度見繕っておこうか?」
「そーだね。とりあえず軽く見ておこうか? ゆうちゃん」
「「………」」
家の中はいくつかの家電製品を除いて殆どが空っぽだった。
「あれ? 洋兄ちゃんは家じゅうをいつ片付けたんだろうね?」
「さあ……?」
☆
一五時ちょっと前には出発できた。休憩を入れながらでも一九時前後には絵野田には着く予定。予定だから……フラグじゃないよ? えっ?
「そうだ。課長に車を借りたお礼になにかお土産を買っていこう! 二人とも何がいいと思う?」
自分たちのお土産も一緒に買って帰ろう。
……といっても定番しか思いつかないし、その定番ならば絵野田近辺のスーパーマーケットでも似たようなものを売ってたりするんだよなぁ~
地元町の特産って言ってもな、十数年住んでいたってこれというものは思い浮かばないしどうしようかな?
「一昨日寄ったスーパーマーケットのジャムが美味しかったから、あれは買って帰りたいよ。そう思わない? ナイマも」
「ああ、りんごとバターの絶妙なマッチング……バナナも良かったね。一日で全部食べちゃいましたものね。他のも食べてみたいかも?」
お土産買うのに地元のスーパーマーケットでいいのかとも思うけど、たしかに一理あるような気がする?
なんとなく二人の勢いに流されて地元スーパーマーケットで土産をたんまり買った。だって安いんだもん……
一升瓶入りのリンゴジュースにジャムにワインと地ビール。蕎麦とパンに各種お菓子にデザートっぽいものまで、抱えきれないほど買ったけど、実際には抱えないでこっそりエレンのマジックボックスに仕舞う。
鮮度も落ちないし、ガラス瓶も割れることないみたいなので安心安全な保管庫な模様。
「あ、そうか。マジックボックスにだったら全部入れられたのかも……って、いやいや。エレンには関係ないことだし。忘れよう」
「ん? 洋一。どうしたの?」
「いいや、なんでもない。さて、遅れるとまた渋滞にハマるから帰ろうぜ」
「うわぁ~ 速い速い! キモチイイ!」
エレンは高速道路が気に入ったようだ。
「わたくしの飛行魔法のほうが速いですよ!」
飛行魔法は使わないでね? ヒトが生身で飛んでいたら目立っちゃうこと請け合いだからね⁉ 張り合わなくっていいから!
「そういえばエレンは帰り際に忘れ物って何を忘れたんだ? お前そんなに忘れるようなもん持ってきてないんじゃね?」
なんか気になったもんでもあったのかね? あそこんちにあったもんなんか古いものか使い古しぐらいしかなかった気がするけど。
「えっと……」
「なに⁉ 言えないことなのか? あ、ははん……うんこだな? もよおして恥ずかしかったのか? んな、言ってくれたらいいのにな!」
うんこじゃみんなの前じゃ言いづらいよな。そっかそっか……
「ち……ちが――むごむご」
後ろからナイマがエレンの口を押さえているけど何やってんだ?
「エレン、ここは我慢して黙ってなさい……?」
「だって! うんこじゃないもん! マジックボックスに洋一の思い出を全部入れてきたのに!!」
「シッ‼ 言っちゃだめ! 内緒でしょ!」
二人でボソボソなにか言い合っているけど、なんとも仲がいいことで。旦那さん冥利につくなっ!
まあ、その。ちょっとは渋滞していたんですけどね。その渋滞の最後尾にどこぞの誰かが追突したようで……玉突き事故っていうのかな? で、高速道路はその後終日封鎖通行止め。
けが人だけで済んだようなので、不幸中の幸いですね……。
「ねえねえ、洋一! お風呂がおっきいよ! 泡もブクブク出るなんてすごいよ! うちにも欲しい!」
「あの、洋一様。これって、噂のおとなのお○ちゃでしょうか? こんなところに……わたくし欲しいです! 興味津々です!!」
高速も一般道も激混みになっていたので早々に帰宅を諦め……只今、ピカピカする館のご休憩処改めご宿泊処におります。
もういろいろと諦めたので、今夜は思いっきり楽しむさ。
じゃぁな。
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とりあえず目標の10万字は越えましたが、色々放りっぱなしもあるので、時期を見て続きは投稿したいと思います。
その時はぜひともご感想お願いしますね。
では。
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