第7話 魔王②
連続5話中の2話になります。
連日1話ずつ公開していく予定です。よろしくお願いいたします。。
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と、いうことで俺は早々に諦めることにした。だってどうやってもこれ持って帰るしかなさそうだもん!
「…………。もう良いです。俺についてきてください。どうすっかは明日考えますよ。但し――ウチに着いて何かあっても何もしないこと! 一切何もしないこと! 守れっか?」
「向井様の仰せの通りに……」
……ああ、絶対にアレ関係だ。エン……デルン? ドル? なんとかって言っていたし、しかも悪名がどうしたとか、魔国とか。多分この娘はエレンの敵方なんだろうな。
この娘、こんな弱っちそうに見えて実はおっかないんだろうか? 異世界転移で異能を発揮、とか?
でもエレンも勇者って割には俺に抱きつく時以外はもの凄く非力だからこっちの世界じゃ弱いのかもしれんし……う~ん、思考中止! 考えても無駄無駄無駄!
「向井様……」
「なんだよ⁉」
「わたくし、歩けませんの」
「なんで?」
「履物が壊れてしまっております」
「……だったら裸足で歩けよ――って、うそうそ。ウソぴょん! おんぶするから!」
裸足で歩けと言った瞬間もの凄く悲しそうな顔して泣き出しそうになったので慌てて掌返ししました!
だって! さっきのカップルが公園の出口からチラチラ未だ見てやがるんですぅ~ 通報とか困るんですぅ~
「では、失礼いたします。もしよろしかったら、お尻とか触っていただいても結構ですよ?」
「煩いよ。黙っとけ⁉」
先ずはこの公園から脱出して、あのカップルの目の届かない場所まで移動することが先決だ。そうしたら……んふ……言質は取ったからな?
あのカップルは真っ暗なのにスマホかざして動画を撮っている様子がビンビンする。折角転職していい感じなんだから不祥事はノーサンキューっす。
俺は彼女を背負い、片手には折りたたみ傘を持たせる。小雨も夜半すぎには本降りになるらしいからな。俺が風邪引くのはいいけど、この娘に風邪引かせるのは可哀想だしよ。
「んで、アンタ名前は?」
「ナイマ・グソン・マンフレドニアです」
「んな? ないまんのぐそまんこぬれんど?」
「……ナイマでいいです」
なら、最初からそう言えよ!
「んじゃ、ナイマ。アンタも異世界から飛ばされたクチなのか?」
背中越しに緊張が走ったのを感じた。首とか締めないでくれよな⁉
「な……なぜ、それを?」
「うちにいるから、異世界人。諸般の事情でつい最近から俺の妻になっている、エンなんとかの元勇者のエレンがこれから向かう俺んちにいる」
ナイマの身体が更に強張ったのが分かった。エレンてあっちでも有名人なんだな。なんせナイマにとっちゃ敵国の勇者だもんな、当たり前か。
そう……ナイマはなんちゃら魔国云々言っていたからエレンの敵国関係者には間違いはなさそうなんだけど……
「向井様……勇者エレンは向井様の
「御新造……えらく固っ苦しい古い言葉知っているな。そうだよエレンが俺の嫁さん、どうする? 行くのは止めるか?」
「……申し訳ございません。連れ帰ってください。ここで捨て置かれたら先程の猛獣共の餌食になる他なさそうですので……あっ、触りかたがお上手」
猛獣? もうじゅう……たけるけもの? さっきのにゃんこのことか、な⁉ 最後のつぶやきは聞こえなかったという体で。
エレンもだけどあっちの世界の人ってなかなか独特な感性しているよな。やっぱ、この娘を放っておいたら各方面でいろいろ問題起こしそうでソッチのほうが怖いわ。
「なぜ、向井様は勇者エレンを
「ははは、えらい言われようだけど。あっちの世界の美人てこんなんだってな?」
尻を撫でるのを一旦止めて、片手でエレンにも見せた元大関琴○菊の写真をスマホで見せる。
「これは……王国の大聖女に似ていますが? 少し違いますね。こちらの方のほうが美形ですね」
やっぱりそう思うんだね。つか、琴○菊は聖女より美人なんだ……俺絶対に異世界転移とかお断りするわ。無理無理絶対に無理無理。
「あの、娶った理由は教えていただけないのでしょうか?」
「ん? 戸籍のためだよ。まあ、エレンは可愛いし好きだから妻にすることはなーんにも抵抗はなかったけどな。とはいえ急だったからさ」
落ち着いたら酔いが戻って来て、ものすっごくこっ恥ずかしことを口にする俺、後で恥ずか死するに違いない……
「戸籍とは?」
「簡単に言えば身分の証だよ。この国にいる以上どこの誰だか分かりませんでは簡単に生きていけないんだよ。だから、昔の
日本語が読めないのも常識がズレているのも外国人だからってことで誤魔化せるしな。誤魔化せるよね⁉
エレンは見た目が外国人風な美人だからちょっと出歩くだけでも目立ちに目立って俺の苦労も絶えないんだ。特にお国はどちらって質問が一番きついんだよ、エンなんたら王国は言えないからよ!
なんてことを俺は言っているけど実は寧ろ自慢げに連れて歩いているというのはエレンにはナイショだ。
さて、自宅に着くまでこっちの世界――いや、俺の主観による美女や美男の主な定義などを話しながら家路を急いだ。
「ひ、非常に
「ん~ そうだね。そんな感じ」
エレンとは違う方向の美女だと思うけどそれ言うとなんとなく今後の我が身にふと危険を感じたんで言うの止めといた。
「美人……美人……えへへ……美人」
ぶつぶつとナイマが柔らかい何かを俺の背中に押し付けながら呟いている。
マンションに着くと、エレンとおんなじ感想を言うナイマ。同じところから来た人なんだなと改めて思う。それにしても何で俺んとこに二人も来るんだよ……
さてと。どうすっかなぁ……
今更だけど、エレンとこのナイマは旧敵でもしかしたら魔王を倒したってエレンが言うんだから仇敵って可能性もある。
あ、急にめんどくさくなった。置いてっちゃおうかな……
ぎゅっ――ナイマが俺の背中にビッタリと身体をくっつけて抱きついてくる。気づかれちゃったん?
「向井様。置いてっちゃイヤです。ご命令通り何もせず静かにしますので、お連れ願います」
ちょっとだけ庇護欲出ちゃいました……ちょっとだけだよ⁉
とは言ってもさ『はあぁ』……数カ月ぶりにため息が木枯らし一号のごとく吹き出てくるわ。
結局最後までナイマをおぶったまま玄関ドアを開ける。
「ただいま……」
「おかえりなさ~い!!!」
エレンは弾む声で俺を迎えに出てきてくれる。キラキラと
走馬灯って見えるものだろうか? 今が試すチャンス? って言っている場合ではない!!!!!!
「ちょちょちょちょっ!!」
「問答無用! 洋一! なぜ貴様は魔王を背負っているのだ! わたしのことは飽きたのか!! よりによって! 女なら誰でもいいのか⁉⁉⁉」
背中のナイマを放り捨てて、エレンの下に急ぎそのままの勢いでエレンを抱き寄せ唇を奪う。それこそ問答無用で舌を滑り込ませれエレンをろんれろんにしてしまう。
「馬鹿だな、エレン。俺が愛しているのはお前だけだ。他の女に目を向けるわけがないだろう? 昨日も一昨日もその前も……毎晩、愛シているだろう?」
「……え? あっ、うん。ごめん、洋一。好き……もっとして……ねぇ、ベッドに行こうよ」
どういう仕組みかしらんがミスリルメイルも聖剣も既にそこになく、いつもの部屋着のエレンを抱きしめる。やっぱり今日もいい抱き心地だ。ふう、落ち着く……
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★評価など頂けましたら作者は喜びます。
ただ読んでいただいただけでもありがたいです。次話もよろしくお願いいたします。
それでは、明日。
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