第23話 町人Aはゴブリンスレイヤーになる

「やっぱり口径を落として貫通性能を上げるべきか、いやそれとも弾丸の改造をするべきか」


俺は今、勝手に作ったルールデン空港に併設した実験施設で試行錯誤を繰り返している。


目標はゴブリンロードを一撃で倒すことだ。


ゴブリンロードにはカラシの弾がしっかりと通らなかった。そもそも、銃というのは基本的に人間を殺傷するために作られている。そして銃の威力は弾が人間に命中し、その弾が変形して体内に残る時に最も高くなるのだ。


大口径、つまり弾の直径が大きくなると貫通しづらくなるので人間に対する殺傷能力が高くなる、つまり威力が高くなるというわけだ。


逆に口径を小さくすると貫通しやすくなるので殺傷能力は低くなり、人間を一撃で倒すにはきちんと急所に当てなければならない。


そして問題なのは、俺が今相手にしているのは人間ではなくモンスターだということだ。乙女ゲームの世界にどうしてこんな本格的なバトルパートを組み込んだのかは理解できないが、ともかくそうなっているのだからそれに対応するしかない。


今のカラシは 30 口径 7.62×39㎜ と呼ばれる規格の弾の弾頭部分を使っている。それを 22 口径 の物を使うように改造したライフル銃――ニコフと名付けた――を作ってみた。確か、ソ連で AK-47 の後継として似たようなのを作っていたはずだ。


確か、 AK-74 とか言ったかな?


22 口径はアメリカ軍の M16 の方が印象が強いけど、俺はあれの構造は良く知らない。


旧ソ連製の武器のほうがあちこちに出回っていたし実物も触りやすかったしロマンもある。


そうは言っても、カラシもニコフも外見が似ているだけで仕組みはまるで違うわけだが。


さて、もう一つの弾丸の改良についてだが、これは弾頭を固い金属で覆ってしまうフルメタルジャケット弾化するのが真っ先に思いつく。


もともとは被覆するための真鍮の調達が面倒だったのでやっていなかったのだが、これを機に弾丸を被覆してしまうのも良いかもしれない。いっそのことどこかにタングステン鉱床とかあれば良いのだが、そう都合よくは出来ていない。


さて、そんなこんなで試行錯誤を繰り返して二週間がたった。


最終的に、22 口径と 30 口径どちらの弾も鉄芯で真鍮被覆のフルメタルジャケット弾となり、5 mm 程の鉄板を軽く貫通できるほどの威力を保持するほどになった。


どちらもフルメタルジャケット弾とした理由は、銃腔や銃口に鉛カスが残って暴発の原因になるのを避けたかったからだ。


さて、というわけで、早速ゴブリン迷宮に試し打ちをしに行くことにしよう。


俺は早速ブイトールに乗ってゴブリン迷宮を目指す。


****


そして俺は一時間とかからずにシュトレーゼン空港に到着した。ここももちろん、俺が勝手に切り開いた。


シュトレーゼンの村とはゴブリン迷宮を挟んで反対側に建設したのでそうそうバレることはないだろう。


わざわざシュトレーゼンの村に行く必要もないので俺はそのままゴブリン迷宮を目指す。


今の俺は背中にカラシを背負って、ニコフを構えて進んでいる。腰には前回と同様にランタンを下げ、【隠密】スキルを使って進んでいく。


前回よりはゴブリンの数が少ないが、それなりの数のゴブリンがいる。俺はその全てを倒しながら進んでいく。


ボス部屋へと辿り着くまでにゴブリンの魔石は 40 個ほど手に入った。


そしてボス部屋で再び相まみえるゴブリンロード、ホブゴブリン二匹、ゴブリンメイジ二匹のボス軍団。


前回と同様に俺はゴブリンメイジ、ホブゴブリンを撃ち殺す。そして煙幕を使って姿を隠し、ゴブリンロードの背後を取る。


ダンダンダンダンダンダン……カチッ


ニコフが弾切れになったが、きちんと貫通はしてくれている。


6 発の弾丸を体でくらって血を流したゴブリンロードが咆哮を上げながらこちらへと向かってくる。


俺は横に飛びのいて避けるとカラシへと持ち替える。


ダンダンダンダンダンダン


一発がゴブリンロードの眉間に直撃した。頭蓋骨をぶち抜いたようでゴブリンロードの動きが止まり、そのまま倒れ込んだ。


今回は余裕で勝てた。俺は魔石を回収すると迷宮核を触り、入口へと転移する。


そして俺は二周目へと向かった。油断さえしなければゴブリンはもはや俺の相手ではない。何の問題もなくボス部屋まで到達する。


今回手に入ったゴブリンの魔石は 20 個ほどだ。


先ほど俺が倒したのでボス部屋には誰もいない。


そして再び迷宮核を触って入口へと転移し、三周目へと向かう。三周目もゴブリンの魔石を 20 個ほど回収できた。


そしてボス部屋に入ると、三度相まみえるゴブリンロードに二匹のホブゴブリンと二匹のゴブリンメイジ。


攻略法がわかっているのでニコフでホブゴブリンとゴブリンメイジ達を蜂の巣にし、ゴブリンロードをカラシで蜂の巣にする。


そして魔石をさっさと回収して次の周回へ挑む。


と、このように迷宮を周回すると二周に一回、倒したはずのボスが復活する。自然に復活するのには一週間かかるのだが、連続で周回するとこのようにボスが復活するのだ。


ゲームでは二年目の夏に風の山の迷宮という場所でひたすらこれをやり続けると無課金でもそれなりに楽にメインルートをクリアできる。もちろん、俺が自分で発見したんではなくて Wiki で調べたら書いてあったのだ。


今後の俺の目標は入学前にそれをやりまくってレベルを上げることだ。


こうして一週間ほど毎日ゴブリン迷宮を周回し、合わせて 100 周ほどした。


ゴブリンの魔石は途中からギルドに流すことにしたが、師匠に呆れられてしまった。


「おい、アレン坊。なんでゴブリンスレイヤーの実績がついてんだ?」

「師匠、何ですか、それ?」

「ゴブリンを一年に 1,000 匹以上狩った奴に与えられる二つ名だよ。お前、ゴブリンに何か恨みでもあんのか?」

「……」


────

名前:アレン

ランク:E

年齢: 12

加護:【風神】

スキル:【隠密】【鑑定】【錬金】【風魔法】【多重詠唱】【無詠唱】

居住地:ルールデン

所持金: 7,014,587

レベル: 9

体力:E

魔力:C

実績:ゴブリン迷宮踏破、ゴブリンスレイヤー

────

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る