第23話 梅ちゃんの「記憶にございません」

 梅ちゃんは

 いってはならないことを言います。


 カッとしてしまい、つい

 というのは誰にでもありますが

 そこは梅ちゃんですから

 レベルが違います、はい。


 父が、すい臓がんの末期で入院していた時

 点滴が二つぐらい付いていました。


 ご飯を食べられない父の命綱です。


 梅ちゃんは、朝の診察時

 お医者さんにこう言いました。


「これ、一本外してくれない?

 お金かかるから」


 この一言に

『あぁ、この人は本当に鬼なんだな』

 と思いましたね。


 でも梅ちゃん

 このことを覚えてないのです。


「わあ(私)、そんな酷いこと言った?」

 という顔をしてました……


 妹が教えてくれたんですけどね

 父の病室で(6人部屋だったかな)

 梅ちゃんは

「ここにいるの、みんな死んでしまえばいい」

 と叫んだそうです。


 驚きと共に、母親が恐ろしかったと……


 妹にとっては

 忘れられない記憶なのですが

 梅ちゃんは、覚えていないでしょう。


 だから、梅ちゃんは幸せなんだと思います。


 そんな母を持った私と妹は、しんどいですが……

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