第21話 梅ちゃんの納豆巻き事件。

 ある年のお正月。

 珍しく梅ちゃんが、ご馳走を作っています。

 

 梅ちゃんの得意料理の唐揚げ。

 ニンニクと生姜のきいた唐揚げは、仲の悪い祖父母にも褒められておりました。

 他にも茶碗蒸しとか頑張って作っていた気もするのですが、記憶に残っているのは

太い納豆巻き。


 この納豆巻きにかぶりついた時、事件は起こりました。

 の、のりが嚙み切れないのです!

 どうしても噛み切れないまま、喉に引っかかりました。


 飲み込めない!

 く、苦しい!!

 えっ? 

 私、納豆巻きで死ぬの? 

 マジで死んじゃう?


 と、焦りつつ指を突っ込み、のりの端を掴み引っ張ってみます。


 まるで、口の中から国旗が出てくるマジックのように、のりが『ビロロロローン』と出て来ました。家族は驚きつつ「きったねー」と騒いでいましたが、死にかけた私は、安堵の涙。

 

「死、死ぬかと思った……」


 その時梅ちゃんは、複雑な顔で笑っていましたとさ。


   どっとはらい!

(『どっとはらい』は、祖父が昔話の最後に使っていた『おしまい』という意味の言葉です)

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