掌編小説・『女性雑誌<Ann-nonn>』

夢美瑠瑠

第1話 新雑誌構想の巻

(これは今日の「女性雑誌の日」に因んでアメブロに投稿したものです😊)


掌編小説・『女性雑誌<Ann-nonn>』


  1 新雑誌構想


 いつまでも収束の兆しを見せないコロナ騒動。予測通りに、催促されて拙速でワクチンの接種が始まったが、収束も終息も全く推測が付かないという因循姑息な事態となった。規ソク正しい連続。こういうのを脚韻を踏む、というのだろうか?

 「ふ~」と嘆息をついている短足の男が「未来興業」社長の<夢秒・息才(むびょう・そくさい)>氏であった。

 「無病息災」のごろ合わせだが、語尾に「噓くさい」と読める文字をつけているのがミソで、彼の雅号であった。

  彼は新しい女性雑誌の創刊のための企画・構成を任されていたのだが、構想がまとまらない。

 「未来興業」は、もともとはパチンコ店の経営をしていて、その後不動産や賃貸住宅に出資して成功し、今では一部上場の一流企業だ。

 雑誌の出版というのは未知の分野で、一代で成功者に列伝となった夢秒氏も悩んでいた。

 「つまり、読者のニーズにこたえて、時流にうまく乗っていて、わが社の経営に役に立つ。こういう条件を満たしておればよい。編集長は大雑誌の編集者出身で、半ばは宣伝のための広報誌だから売れなくてもいいというんだな。」彼は参謀役の女性 コンサルタントとしゃべっていた。

 「つまりは会社のためだからおれにアイデアを出せと言うんだよ。うーん、こういうのは中心となるコンセプトが大事だよな。女性雑誌というと「Annam」?「nonn-no」?そうだなあ、わが社でもコロナ禍で、田舎暮らしを始める人のための住宅をいろいろとリフォームしたり造成したりしている。某テレビ局のおうち暮らし情報誌の企画に似ているけど、田舎暮らしの情報誌で、ann-nonn、「安穏」というのはどうかな。」

 「安穏に田舎暮らしを…そのためのアイデアを女性目線で提供します、というわけですか?安易じゃないかなあ」

 「どっちみち本社の商売の旗振り役みたいなもんだからその住宅分譲の広告をメインに大きく打って、…そうだな、あとは田舎暮らしというものがどれだけ素敵か、ということをいろいろな人物に語ってもらえばいいんじゃないか?具体的で説得力があればあるほどいいわけだよ。今迷っている人の背中を押すんだなー」

 「なるほど。おしゃれでアップツウデイトで実際に役にも立つわけですね。今は読者が多様化していて雑誌も専門的になってきているから話題になってウケるかもしれないですね。「安穏」というネーミングもまあ面白いわ」

 「よおし、とりあえずそれで企画会議に諮ってみよう」

…こうして雑誌「ann-nonn~安穏~」計画がスタートした。

 名称盗用事件にならねばよいが…

 


<続く>

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掌編小説・『女性雑誌<Ann-nonn>』 夢美瑠瑠 @joeyasushi

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