王族魔術師の均衡
寿司升
第1話~王子ラッセル
俺は恵まれている。
生まれながらに約束された地位、財力、才能、容姿。
ディーパディ王国第四王子。特別Aクラス戦術級魔術師選定管理局長官。魔術師クラスB+。妖精族と人間族のハーフという恵まれた種族。
万人が望んでも得られないものを俺は手にしている。
しかし、その恵まれた俺でも、才能の差というものに屈することがあった。
余人が俺の心境を知れば、その贅沢な悩みに激怒するのだろう。
十分だと。現状で満足すべきだと。
贅沢な悩みだと理解しているが、俺が望んだものに手が届いていない以上、俺は満たされることはないのだろう。
なまじ才能があり、届きそうであったが故に、心残りは大きい。
影も踏めぬほどの差であれば、望むことすら馬鹿馬鹿しいと思えたのかもしれない。
ハナ差とまでは言わずとも、クビの差。少なくとも一馬身の差はないと思うのだ。
俺は恵まれている。
それでも俺には才能が足りなかったんだ。
「王子。」
「―――……ぅ。」
「王子。御起床のお時間ですぞ。」
「セバスチャン………」
「サイラスです。」
細かいやつだ
「王子。御起床ください。本日もご公務が詰まっておりますので。
本日の御朝食はお部屋で食べられますか?」
「……部屋で。」
「畏まりました。」
なんか嫌な夢を見てた気がするが、思い出せんな
とりあえず、気分が良いものではなかった
「お食事しながらお聞きください。本日のアポイントメントはハワード卿のみです。
その後は魔術師士官学校の今年度の卒業生見込みの者たちの確認をお願い致します。
他裁可を頂きたい案件が数件ございます。」
「レキシーが来るのか…何か用事があったか?」
「いえ。特には記憶しておりませんが、特A級の方々が出向く案件などそうそう発生致しませんし、世間話程度のものではないかと。」
まぁ、かまわんけどさ
特A級の奴らは基本的に暇してるからな
「お言葉ですが、皇子も然程忙しい部類には入りませんのでご自覚を。」
失礼な
自覚くらいはしとるわ
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