男子校に入学したはずなのに、女子校に男子がいた件。
「えっと、それで、何がどうなってこうなっているんですか。」
反応は女子のそれだったものの、体は男だったボーイッシュ先輩……いや、体は男なので ボーイ先輩だろうか……に殴られ、しばらくしてから意識をはっきりさせた俺はそう聞いた。
「君たちだって、聞いたことはあるだろう。体は男、心は女、ってやつだ。」
確か、先日の社会の授業で、俺が珍しく出席して、かつ、起きていたときにやっていた気がする。
「たしか、LGBTQIA、でしたっけ。」
「そうそう。私もその一人なんだ。普段は恰好をごまかしているものの、こういう時は女風呂に入れないからね。」
「もしかして、今回の合宿がここなのって……。」
「混浴がある、つまり私のためにここになっているんだ。」
「そんな理由が……。」
「正確に言うと、私たちが一年の時の三年生の、迷惑ながらに優しい先輩が強引に変えてくれたところでね。」
なんと優しい先輩なのだろうか。俺の知っている先輩……迷惑の塊でプライバシーゼロのユミコに、まっすぐながらにチアにはガチのヒカル先輩……一応、バイト先のアヤカさんもそうか。
「どうして泣くのだね!?」
「お姉様には、ここにかわいい妹がいますわぁ!」
レイナ、とりあえず裸で抱き着いてくるのだけは本気で阻止させてもらうぞ。
先ほどの迷惑ながらに、という言葉には、その先輩への親しみも感じられる。
もちろん、俺にとってはヒカル先輩やボーイッシュ先輩もそういう人であるが、それでも、そこまでの親しみはこめられないだろう。
「いい先輩に恵まれて、よかったなと思いまして……。」
俺がそういうと、
「そのとおりだよっ!よくわかってくれた、ありがとうっ!」
と、ボーイッシュ先輩も抱き着いてきた。性別関係なく、俺は人と裸で抱き合う趣味はないんですが。
「ところで、ずっと気になっていたんだが、君も私と同じかね?」
あ、答えにくい質問ktkr。
「お姉さまは女装して男子校に通うつもりが、間違ってこっちに通ってしまったんですわぁ!」
「そこは適当にごまかしてくれ、レイナ……。」
「すまない、状況が一切合切、欠片どころか粉末すら理解できないのだが。」
ですよね俺もそう思います。
「まあ、他人の事情には深く関与しないのがポリシーだ。君らには君らの事情があるのだろう。」
聞かないでくれてありがとうございます。
「そろそろあがりたいのだ。頼むが、サウナに入って、出てこないでくれ。私が出てから20分は出てこないでくれよ?」
心が女だから見られるのが恥ずかしいのはわかりましたが、すでにレイナのせいでのぼせている俺に死ねと?
「わかりましたわぁ!」
これだから長風呂が基準の女子は嫌なんだ。え?ふつうはこんな状況にならない?だよなぁ……。
しばらくしてようやく息も絶え絶えに俺が上がると、レイナがコーヒー牛乳を奢ってくれた。こいつはフルーツ牛乳派らしいが。
「お姉さま!お夜食の時間が迫っていますわぁ!」
「はいはい。」
コーヒー牛乳の余韻に浸る間もなく夜食だ。ここの夜食、おいしいんだが多いんだよなぁ。貧乏性の俺としては残すのももったいないし、つい全部食べようとしてしまう。
「それで?おまえ、レイナと風呂で何やってたんだ?」
ギビクゥッ!
俺の体がギクとビクを両方起こした。犯人はもちろんカオリ。しかも、近くにはいつものメンツがいる。
「レイナと混浴。婚約者を差し置いて。」
婚約者じゃねーだろ。
すると、周りのメンツも、
「何っ、幼馴染を差し置いてか!」
「親友も差し置かれたかぁ。」
「悲しいことするわね。」
「先輩命令!もっかいお風呂入ろー!」
などと乗っかってくる。そもそもカオリ、お前は嫌がってただろ。
「まったく!男と風呂なんて汚らわしいわ!」
近くで話を聞いていたルナがそう断ずる。おっしゃる通りだよ。おかげさまでこの蔑んだ眼に安心感すら覚える。
「えぇっ、合宿のお風呂といえば、ピーで、ピーが、ピーな、ピーーーーーー。
ストップだレイナ。自分がそんな言葉を口にしているようで恥ずかしいからやめてくれ。」
体を共有するユウリからのドクター、いや、コンプラストップが入った。
「お前、何してたの。」
「嫌ですわ、カオリお姉さま!夜はこれからですもの!」
嫌な予感しかないから、今夜は隠れて寝よう。
「私の中にお入りなさい。」
絶対断る。
しかしその夜、事件は起きた。
「や、やめろユミコ、それ以上激しくされると、白いのが出ちゃう!」
「やめない。」
「だ、だめだ、それ以上刺激を与えるな!」
「先に出したほうが負け。」
「や、やめ、もう、で、出ちゃう、あーっ!」
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