心身共に疲れ果てた僕の前に現れたのは美人なお姉さんで、とりあえず同棲することになりました。
あすか
プロローグ
最後に覚えているのは、地面に横たわった僕に、夏にも関わらず、空から降る冷たい雨がいくつも降り注いでいる感覚。
身に付けていた制服は、最早、衣服の役割を果たしていなく、ただべったりと張り付いているだけである。
しかし、それを剥がす力ももうない。
そして、ゆっくりと意識が無くなっていくのを感じながら、最後の方に暖かい手のひらが顔に触れるのだけがわかり、そこで意識は完全になくなっていった。
♦︎
「ん、んん……」
眩しい光が顔に当たり、たまらず、目を覚ます。
僕はゆっくりと瞬きをした。
目の前に広がるのは、見慣れない天井だった。
とりあえず、生きてたな……
あのまま、意識がなくなったから、どうなるかと思ったけど。
しかし、どこなんだ、ここは。
まさか、病院……?
そう思い、身体を起こしてみる。
辺りを見回すも、部屋の中に置いてあるのは僕が寝ているベッドだけだった。
どうやら、病院ではなさそうだ。
今いる部屋の広さ10畳ほどだろうか。
余りにも殺風景な部屋に対して、不釣り合いの大きなベッド。大きさからして、ダブルベッドだと思われる。
次に気になったのは、身に付けていた衣服だった。
いつも着ている制服ではない。
真新しい水色のパジャマを着ていた。
一体、ここはどこで、誰がこの服を着せてくれたんだろうか。
疑問だらけの頭を抱えたまま、ベッドから降りるとそのまま部屋を出るドアを開ける。
そのまま、やけに長い廊下を歩く。
その途中、いくつものドアが左右にあるのが目につく。感じからして、マンションの一室だと思うが、それにしては部屋が広すぎるような……
そうして、少し歩いてから、奥にあるドアに手をかけて、開ける。
開けた先には沢山の家具が置いてあった。
大きなソファにこれまた大きなテレビ、テーブルにイス、冷蔵庫などなど、明らかに誰かが生活しているのが丸わかりだった。
「……」
そして、リビングの一室のテーブル椅子に座り、ノートパソコンをカタカタと打っている女性がいた。
剥きたての茹で卵のような美しい肌に、黒目勝ちの大きな瞳が魅力的だった。おまけに髪は長く、すらっとしたストレートで、服の上からでもわかるほどのスタイルの良さ。
来ている服は、チェックのスカートに上はラフなTシャツだった。そのラフな感じがまたグッと男心にくる。
僕はその美貌に一瞬にして惹かれ、ぼーっと見つめてしまう。
「あら、起きたの。ものすごく疲れてたのね。丸一日、寝っぱなしだったなんてね」
やがて、僕の視線に気づいたのか女性はパソコンを打つ手を止め、こちらに身体を向けてきた。
丸一日って……朝だと思ったら、翌々日の朝だったのか……
「あ、あの……ここ、どこですか……?」
我に帰った僕はゆっくりと歩み寄りながら、尋ねる。
「ここ?私の自宅よ?」
「じ、自宅……?」
一人暮らしの女性が住むには、広すぎると思うが……
このリビングだって、軽く20畳はありそうだけど……
「倒れていたあなたを介抱するために、ここに連れてきたの」
「あ、ああ……」
あの時、暖かい手のひらが当たったと思ったが、それは目の前のお姉さんだったのか……
「あ、あの、ありがとうございました……」
僕はひとまず頭を下げて礼を言った。
お姉さんが助けてくれてなかったら、どうなっていたのだろうか。
「気にしないで。それより、お風呂に入ってきたら?濡れたところを拭いたとはいえ、まだ汚れたままだろうから」
「あ、はい……って、まさか、服を着せたのも……!?」
「もちろん、私よ?ああ、下着も変えたから、サイズあってなかったら、ごめんなさいね」
「し、下……!?」
それってつまりあそこを見られたわけで……
「大丈夫。安心して。少ししか見てないから。それにしても最近の男の子って中々大きいものを……」
「ああああ!!」
僕は恥ずかしさのあまり、大声を出して、顔を手で隠した。
もうお嫁にいけない……!
「あらら、落ち込んじゃった。まぁ、とりあえず、お風呂溜まってるからいってらっしゃい。リビングを出て最初のドアを開けたら、お風呂場だから」
「はい……」
僕は言われるがまま、リビングを出た。
そして、ドアを開けて中に入る。
「おおお……」
たまらず、声が出てしまう。
風呂場もこれまた広かった。
2人いても、まだ余裕があるほどの洗面所に、ドラム式洗濯機、そして、浴槽は肩まで横になって浸かれるほどだった。
あのお姉さんは一体何者なんだろうか……
それにどうして、ここまでしてくれるのだろうか。
再び湧いて出た疑問を頭に抱えながら、僕は服を脱ぎ、浴槽へと浸かった。
何日ぶりの湯船だろう。
湯船に浸かるなんて随分、久しぶりの感覚だ。毎日風呂に入る時間も惜しかったからな……
それに風呂ってこんなにあったかいものだったんだな……
グッとこみ上げてきた感情に僕の目頭はたちまち熱くなってしまった。
それを隠すように、ドボンと湯船の中に潜る。
「お邪魔しまーす」
しかし、潜った瞬間に聞こえてきた声に驚き、僕はすぐさま、湯船の中から顔を出した。
「んしょっ……」
僕の目の前には何故か身体をバスタオルで巻いたお姉さんがいた。
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