援軍参上!
「このっ!このっ!」
一方、洞窟内。カグヤは勇ましく、かつ無謀な行動に打って出ていた。
小石。氷の破片。逃げ回りながらも、手当たり次第に物を投げつける。
しかし、当の相手は意にも介さず迫りくる。
「これならっ、どうよ!」
彼女が「とっておき」として投げつけたのは、暖かい飲み物を入れたタンブラー。保温性に優れたそれはこの世界には存在しない貴重な代物だったが、背に腹は代えられない。
縦方向に回転しつつまっすぐな軌道を描いて飛ぶそれを、怪人は針で打ち壊す。
ここまでは彼女の計算通り。本命はここからだ。
「!」怪人が少し怯みを見せる。中に入っていた飲み物を不意打ち気味に浴びたためだ。
が、当然ながらただそれだけ。数秒足を止めるだけの結果に終わった。
「打つ手なし、かぁ……」
正直なところ、彼女にとっても悪あがきなのはわかっていた。
まいったという様子で壁に背をつきへたり込む。
針を振りかぶり、迫る怪人を前に、目を閉じたその時。
「てぇやぁっ!」
救いの手は、差し伸べられた。
掛け声とともに飛来した何かが――メイスが、怪人を直撃。その体を大きく後ずらせる。
「ミズキ!それにユウキ!」
「まったく、無茶しすぎですよ!」
「大丈夫ですか、カグヤさん!」
駆け付けたのは、よく見知った顔の二人。援軍の到着に、彼女は心の底から安堵した。
「それで、何なんですかあれ……」
先ほど投げつけたメイスを拾いながら、ミズキは緊張した面持ちで尋ねる。
「わかんない……けど、ヤバいのは確か」
「オークやオーガ以外の人型のモンスターなんて、僕聞いたことありません……」
「とにかく今は、この場を切り抜けましょう。ユウキさんは彼女を連れて出口へ向かってください。私が時間を稼ぎます」
「わかりました。カグヤさん」
ユウキがカグヤに肩を貸し、歩き始める。それを追おうとする怪人だったが、
「行かせませんよ」
それをミズキが立ち塞ぐ。彼女はメイスを構え、きっと怪人を睨みつけ、啖呵を切った。
「貴方の相手は……私です!」
「男の奴隷は必要ない」と捨てられた俺が、伝説の勇者になった件 ~俺たちの名は、エヴォリュート・ソル~ さぼてん @atamaheisei
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