旅行先で目を覚ましたら村上義清になっていた私。そんな私を支えることになったのがアンチ代表の真田幸隆だった。

第355話遠江分割

　京から戻るなり徳川家康と連絡を取った春日虎綱。そこで出た話は……。

春日虎綱「家康から遠江分割についての話がありました。」

私（村上義清）「教えてくれ。」

春日虎綱「はい。先に殿が希望されました掛塚湊についてでありますが、家康より『勘弁してくれ。』との返答がありました。」

真田幸隆「あそこまでうちになると、家康の進出出来る場所を完全に塞いでしまう事になるからな。」

春日虎綱「はい。代案ではありませんが、家康が掛塚湊を手に入れた暁には三河同様。うちの出入りを認める確約を取り付けています。」

私（村上義清）「そうなると家康は遠江を南北に分割したいと考えている？」

春日虎綱「はい。そうなります。ざっくり長篠を東に向かった線を境目にしたいとの事であります。」

真田幸隆「コメが取れるところは家康で、そうで無いところはうちと言う事か？」

春日虎綱「そうとも言えるかもしれません。」

真田幸隆「家康もそこまでは手を回す事が出来ていないとも言えるな。」

春日虎綱「それよりもひたすら東に向かいたいのでありましょう。」

真田幸隆「あそこの国人は？」

春日虎綱「天野と奥山になります。」

真田幸隆「家の事情は？」

春日虎綱「双方一族で内輪揉めに明け暮れていましたが、今は沈静化しています。」

真田幸隆「氏真が介入してか？」

春日虎綱「いえ。一族内の争いに勝った者を氏真が追認しているだけであります。」

真田幸隆「と言う事は火種は燻ったまま？」

春日虎綱「そう考えて間違い無いかと思われます。」

真田幸隆「お前との関係性は？」

春日虎綱「氏真と対立している手前。今は行き来はありませんが、以前は普通にやり取りをしていました。」

真田幸隆「入り込む余地はある？」

春日虎綱「ありますが、当地は山と谷。そして川が入り組んだ場所。地の利は当然向こうにあります。加えて一族が揉めたばかりでありますので誰に話を付ければ良いのか。誰に勝てば皆が従ってくれるのか。皆目見当がつかない状況にあります。もしかしますと一族内の諍いも彼らが演出しているだけかもしれません。正直な話。家康が遠江を抑え、遠江から今川の影響力が完全に排除されてから動いても問題は無いと思われます。」

真田幸隆「むしろそれまでは動かない方が得策？」

春日虎綱「そこに労力を費やす位なら要衝を抑えたいと言うのが本音であります。」

真田幸隆「その事は家康にも伝えている？」

春日虎綱「伝えています。」

真田幸隆「教えてくれるか？」

春日虎綱「はい。私が主張した場所は２つあります。」