旅行先で目を覚ましたら村上義清になっていた私。そんな私を支えることになったのがアンチ代表の真田幸隆だった。

第216話条件

私（村上義清）「条件？」

春日虎綱「はい。彼らは『自分の本貫地の支配は自分たちで行う。家康は介入しないこと。』を条件として示しています。」

真田幸隆「それに今川時代に治めていた場所も含めてだろ？」

春日虎綱「希望としてはそうなると思われますが、このいついくさになるかわからない御時世に。飛び地を。それも支配された今川から与えられた土地。そう言いました場所は総じて条件の悪い場所でありますし、日もまだ浅いこともありましてそこまで思い入れがありません。それよりもかつて知った人と土地に戻りたいと考えているようであります。」

私（村上義清）「それを受けて家康はどうしている？」

春日虎綱「力でねじ伏せることは出来ませんし、今後の勢力の拡大を考えた場合、当然彼らの助けが必要となります。加えて義元が居なくなったとは言え今川は強大であります。その今川の後ろに居る武田と北条は今川と同盟関係にあります。氏真の要請１つで彼らが兵を派遣することも十分にあり得ますので、同族間で内輪揉めをする時間はありません。」

真田幸隆「受け入れざるを得ない状況にある？」

春日虎綱「はい。」

真田幸隆「これでいくさになった時、その費用を出すのは家康になるよな？」

春日虎綱「少なくとものちに補填しなければなりません。」

真田幸隆「勝つも負けるも功績のあった者に対して恩賞を出さなければならないよな？」

春日虎綱「はい。」

真田幸隆「紙一枚に有難がることも無いわけでは無いが、そうそう乱発することが出来るモノでは？」

春日虎綱「ありませぬ。」

真田幸隆「そうだよな。お前が今。御館様から表彰されたとしてどう思う？」

春日虎綱「紙一枚ですか？」

真田幸隆「そうだ。」

春日虎綱「新たな土地や交易の利権は無しで？」

真田幸隆「そうだ。」

春日虎綱「殿秘蔵の馬や刀すら無く。」

真田幸隆「そうだ。紙一枚だけだ。」

春日虎綱「出奔しますね。」

私（村上義清）「だろ。」

真田幸隆「殿もそれは理解されているのですね。」

私（村上義清）「下手すりゃ『表彰されたよ！』と周りに知らせるための記念品を貰った側が手配しなければならない場合だってあるんだからさ……。」

春日虎綱「迷惑この上ない代物ですよ。あんなのは。」

私（村上義清）「直筆で書くのって結構大変なんですよ……。」

真田幸隆「ただ現状の家康を見ますと、いくさをするための原資が見当たりませんね。」

春日虎綱「いつまでも親戚筋からの援助に頼り続けるわけにはいきませんでしょうし、いざいくさになった時、指揮することもままならなくなりますからね……。」