旅行先で目を覚ましたら村上義清になっていた私。そんな私を支えることになったのがアンチ代表の真田幸隆だった。

第196話居なくなったら

上杉輝虎が越後に送りつけられた関白からの手紙に地団駄を踏んでいたちょうどその頃、輝虎不在の越中で動きが……。

私（村上義清）「また（神保長職が）動いたのか……。」

真田幸隆「はい。」

私（村上義清）「しかも今度は一向宗が神保側に付くことを鮮明にした。」

真田幸隆「はい。小矢部川沿いの２つの寺が神保支持を打ち出しました。」

　小矢部川沿いの２つの寺とは河口付近の勝興寺と平野と山間部の境に位置する瑞泉寺。共に越中一向一揆の拠点。

私（村上義清）「西の安全の確保されると同時に（本願寺の伝手を活用することにより）物資の補給の問題も無くなった。」

真田幸隆「そうなりますと種子島や玉薬も神保に流れていることが考えられます。」

私（村上義清）「今、輝虎は春日山？」

真田幸隆「はい。」

私（村上義清）「関白は京？」

真田幸隆「はい。」

私（村上義清）「関白は京には帰ったが、輝虎との関係を壊したくはない？」

真田幸隆「はい。」

私（村上義清）「また神保が輝虎に挑戦して来た？」

真田幸隆「はい。」

私（村上義清）「そうなると神保と一向宗を結び付けているのは関白ではない？」

真田幸隆「そうなりますね。」

私（村上義清）「神保が単独で？」

真田幸隆「越中東部を制圧したい気持ちはあると思います。思いますが、それ以上に小矢部川以西を抑えている一向宗の影響が大きいと思われます。」

私（村上義清）「次狙われるのは神保だからな。」

真田幸隆「ただ一向宗にしましても神保を屠ってしまいますと、椎名。その背後に居る輝虎と境を接することになりますので、出来ることならば緩衝地帯が欲しいところではあります。」

私（村上義清）「両者の取引は成立する。ただ神保はどうだろう？椎名を攻めることが輝虎を刺激することになることがわかっている。何度も負けている。負け続けているけれども持っている権益は認められている。今は勝つことが出来ない。わかっているにもかかわらず何故輝虎に喧嘩を売り続けるのだろうか……。」

真田幸隆「そうですね。椎名だけでしたら勝つことは出来ますが、輝虎が（越中国境近くの）春日山に居ることを思いますと何故でありますね。」

　９月。神保長職と椎名康胤は神通川沿いで激突し神保側が勝利。勢いに乗った長職は兵を東に進め椎名氏の拠点。松倉城を包囲。そこへ……。

真田幸隆「輝虎が後詰として越中に入り松倉城を解放するだけに留まらず、逆に長職の居城増山城を包囲しました。」

私（村上義清）「さすがの輝虎も今回ばかりは許さないだろうな……。」