旅行先で目を覚ましたら村上義清になっていた私。そんな私を支えることになったのがアンチ代表の真田幸隆だった。

第160話うまくいっていないことを

正月。今川領に動きあり。

春日虎綱「殿。」

私（村上義清）「どうした。」

春日虎綱「殿の家臣からの話でありますが。」

私（村上義清）「今川領内の国人との繋がりを強めるために派遣した小笠原の家臣のことか。」

春日虎綱「はい。」

私（村上義清）「何か問題でもあったか。」

春日虎綱「いえ。滞りなく任務を終えることが出来ました。」

私（村上義清）「それは良かった。」

春日虎綱「ただその中で気になる情報が入って来まして。」

私（村上義清）「何だ申してみよ。」

春日虎綱「はい。将軍様が松平元康に対し使者を出したとか。」

私（村上義清）「ほう。してその内容は。」

春日虎綱「流石に書状を手に入れることは出来ていませんので確実な情報ではありませんが。」

私（村上義清）「そんなことも出来るのか。」

真田幸隆「殿も気をつけたほうがいいですよ。」

私（村上義清）「文書管理を小笠原の旧臣に任せていることをか。」

真田幸隆「はい。どこで何されるかわかりませんし。」

　敵対しているわけでは無いが、小笠原長時の一族は領内に健在。

私（村上義清）「実務は引き続きお願いしつつ、権限の委譲も含め大事なところは（嫡男国清が居る）葛尾に戻すか。ところで虎綱。」

春日虎綱「はっ。」

私（村上義清）「わかる範囲内で将軍からの話を教えてくれ。」

春日虎綱「はい。どうやら将軍様は松平元康に対し、『今川氏真と和解せよ。』と申しているとか。」

私（村上義清）「と言うことは。」

春日虎綱「将軍様に依頼したのは氏真であるかと。」

真田幸隆「『岡崎を引き払って駿府に戻ってこい。』と。」

春日虎綱「そう言うことかと。」

私（村上義清）「しかし岡崎は義元亡き後、対織田の最前線であり、かつ元康は今川のためにこれまで行動して来た。」

春日虎綱「はい。」

私（村上義清）「にもかかわらずそんな元康を氏真は戻そうとしている。」

真田幸隆「『織田と和睦することにした。故にそなたの軍事行動はその妨げとなる。矛を収めよ。そして駿河に戻れ。』とでも言っているわけではないだろう。」

春日虎綱「敗れた直後でもありますので厭戦気分が蔓延しているのは事実でありますが、かと言いまして信長との仲を構築しようとは、少なくとも氏真は思っていないかと。」

真田幸隆「元康には。」

春日虎綱「それがわかれば。」

真田幸隆「調べる価値はあるな。」

春日虎綱「はい。」

真田幸隆「ただこの書状でハッキリわかったこととしましては。」

私（村上義清）「うむ。氏真と元康の間はうまくいっていない。」

真田幸隆「加えて将軍様の力を借りでもしなければならないほど、氏真には力が無いことを。」

私（村上義清）「この書状は教えてくれている。」

真田幸隆「御意。」

私（村上義清）「元康の動きに後れを取るわけにはいかぬ。国人への斡旋を強化せよ。引き続き小笠原の家臣を自由に使ってくれ。」

春日虎綱「有難き幸せ。」