旅行先で目を覚ましたら村上義清になっていた私。そんな私を支えることになったのがアンチ代表の真田幸隆だった。

第142話関東情勢

　京で実権を握る三好長慶に対抗するべく将軍足利義輝は、長尾景虎と北条氏康の和睦を斡旋し両者の上洛を促すも……。

真田幸隆「無理な注文ですよね……。」

　当然の如く調停は不調に終わり、長尾景虎のみが上洛。ただそうなりますと……。

春日虎綱「直に接したものの思惑通りになりますね……。」

　足利義輝は長尾景虎に管領並みの待遇を与えると同時に北条氏康討伐の許可を出すのでありました。長尾景虎はこれまで北関東の入口。上野北部の沼田城とその周囲の確保に留まっていたのでありましたが……。

真田幸隆「本格的に兵を展開させる。と……。」

私（村上義清）「そう。」

真田幸隆「ただ関東には公方様がいらっしゃいますが、彼は確か氏康の甥であり、氏康の娘を娶っている……。」

春日虎綱「そうなりますと利根川以東の国人を従える作業は困難を極めることに……。」

私（村上義清）「そのために呼んだのが……。」

　関白近衛前嗣。

私（村上義清）「既に関白様の名で関東の諸将と通信しているとか……。関白様はそれに留まらず景虎の出兵にも参加すると……。」

真田幸隆「大胆ですね。ただ氏康討伐となりますと簡単には……。」

私（村上義清）「当面は山内上杉憲政の勢力圏を回復することが現実的な目標になるとか。」

真田幸隆「そのことについて殿は……。」

私（村上義清）「飛び地となってしまっている志賀への物資の輸送と武田北条からの侵入を阻止することを引き続き頼まれている。」

真田幸隆「それでしたら別に問題はありませんね。」

私（村上義清）「ただ景虎が危惧していることがあって。」

真田幸隆「なんでしょうか。」

私（村上義清）「氏康の軍門に降った西上野の。とりわけ長野業正の動きを気にしていた。」

　北条氏康の攻勢に押される山内上杉憲政を見限り氏康に従うも、その後氏康側に立っての軍事行動はせず、自分の領土に引き籠り続けている長野業正。

春日虎綱「景虎と業正は……。」

真田幸隆「通信の有無はさすがに機密でしょうから……。業正関連で殿に何か申しておりましたか。」

私（村上義清）「上野への出兵は頼まれてはおらぬ。」

春日虎綱「……と言うことは。」

私（村上義清）「たぶんであるが、某かの話はしていると思っていたほうが良いと思う。」

真田幸隆「ならば機先を制して……。」

私（村上義清）「いや。大義を重んじる景虎を変な形で刺激するのは得策では無い。ただ業正がこのままどちらにもつかないとなると話は変わって来る。」

春日虎綱「確かに。」

私（村上義清）「幸隆。」

真田幸隆「はっ！」

私（村上義清）「西上野を探ってまいれ。そして国人衆を切り崩せ。」

真田幸隆「御意。」