旅行先で目を覚ましたら村上義清になっていた私。そんな私を支えることになったのがアンチ代表の真田幸隆だった。

第137話追い込むけど追い込まない

思わぬ伏兵により鳥居峠を包囲され、浮足立つ木曾義康勢。

「反転し、攻勢を掛けろ！！」

とこれまで押され気味だった村上義清は鳥居峠目掛け突撃。木曾義康はまだ包囲されていない木曽谷に通じる道を使い敗走。鳥居峠を得た村上義清は攻勢を仕掛け、小沢川、更には王滝でも勝利を修めると共に四郎勝頼と保科正俊を木曽谷南部の妻籠へ進出させることにより、木曾義康の本拠地福島城を北と南から挟撃。籠城に追い込むのでありました。ただその間……。

春日虎綱「木曾義康を逃がせ……。でありますか。」

私（村上義清）「そうだ。ただいくさには勝たねばならぬ。勝たねばならぬが木曾に名を成さしめるつもりはない。」

春日虎綱「討ち死にはさせない。けれどもこちらが勝たなければならない。」

私（村上義清）「実行できるか否か。そなたの用兵が鍵を握る。」

春日虎綱「しかしそれをするには、殿が槍合わせに負けてしまったら元も子もありませんよ。」

私（村上義清）「そうならないようにするのも。」

春日虎綱「……私の役目。」

　静かに頷く村上義清。

春日虎綱「わかりました。やってみます。でも駄目な時は、自分で何とかしてくださいよ。」

私（村上義清）「（急に不安になって）俺の逃げ道も忘れずに。」

春日虎綱「孤立しないよう繋ぎを設けておきます。」

　北から村上義清。南から保科、四郎の伊那高遠衆に包囲された福島城。孤立無援となった木曾義康は降伏。これに対し村上義清が出した条件は……。

木曾義康「えっ！？これで宜しいのでありますか。」

真田幸隆「伊那と高遠の安全を確保することが目的でありますので。」

　木曾義康が変わらず木曽谷を領すること。通行料の徴収も引き続き認める。ただし仁科と同じ方法で。

真田幸隆「これは殿からのお願いであります。」

　村上義清が真田幸隆を通じ木曾義康にお願いしたこと。それは……。

木曾義康「遠山と斎藤との取次ぎでありますか……。」

真田幸隆「岩村からの脅威を取り除きたいと考えています。」

木曾義康「……支配する？」

真田幸隆「いえ。そこまでは考えておりませぬ。あくまで友好関係を結ぶことが目的であります。」

木曾義康「正直な話。遠山の一族内が落ち着いているわけではありませぬので……。その中で私と誼を通じているものでありましたら……。」

真田幸隆「それで構いませぬ。」

木曾義康「斎藤につきましては……むしろ小笠原の旧臣から話を持って行ったほうが無難ではないかと……。」

真田幸隆「わかりました。最後に、嫡男の義昌様についてでありますが……。」

木曾義康「なんでしょうか。」

真田幸隆「『村上の一族になっていただくことは出来ないか。』と義清が申しております。」

　縁組の話。

木曾義康「降伏したものにそこまで……。わかり申した。」