第136話鳥居峠

 木曾義康からの回答が無いことを確認した村上義清は、木曽谷に向け出陣。この報を受けた木曾義康は村上の侵入を阻止するべく兵を出し、両者は律令時代からの国境。鳥居峠で睨み合うことに……。




私(村上義清)「正直なこと言っていい?」


真田幸隆「なんでしょうか。」


私(村上義清)「別にここが境目でも構わないのだけど……。」




 今の長野県で人口の多い地域と言えば、長野市から小諸に掛けた千曲川沿いに松本と諏訪湖周辺。これら一帯を西からの脅威から守ることを考えた場合、木曾義康と対峙している鳥居峠はうってつけの場所。




真田幸隆「そんなこと言ったら伊那と高遠の連中に怒られますよ。」


私(村上義清)「そうなんだよね……。」




 木曽義康の勢力圏である木曽谷や妻籠。更には岩村から伊那高遠地域へ入ることが可能。平和な時代であれば別に問題は無いのでありますが、今は戦国の世。しかしそれならば、仁科同様木曾の利益を認める形で関係を築けば良いのでありますが……。




私(村上義清)「……美濃のこと(斎藤義龍)を全く考えていなかった……。」




 西への備えはかつての同盟者小笠原長時に任せておけばよかった。




真田幸隆「木曾が殿を無視して来た以上、仕方がありません。」


私(村上義清)「しかし強気だよな。木曾は……。斎藤が(上洛中のため)居ないにもかかわらず。」


真田幸隆「鳥居峠の守りに自信があるのでしょう。」


私(村上義清)「そう言えば、以前武田晴信がここ(鳥居峠)を抜くことが出来なかった……。」


真田幸隆「はい。」




 以前、木曾義康は信濃平定を目指す武田晴信と当地鳥居峠で激突し、晴信を敗走に追いやった実績がある。




私(村上義清)「その時お前は……。」


真田幸隆「殿(村上義清)の家臣でありました。」


私(村上義清)「その時を知っているものは。」


真田幸隆「諏訪の衆が戦っています。」


私(村上義清)「諏訪のものを以てしても……。」


真田幸隆「はい。」


私(村上義清)「敗因となったものは……。」


真田幸隆「あるにはあります。」


私(村上義清)「対応策は……。」


真田幸隆「あります。ただ……。」




 村上義清は木曾義康が陣取る鳥居峠へ向け進軍し激突。地の利に勝る木曾義康に苦戦を強いられる村上義清。そこに……。




「殿!伏兵が!!」


木曾義康陣取る鳥居峠に向け2つの部隊が……。




真田幸隆「木曾義康が、(晴信との)先のいくさにより絶対の自信を持っていなければ。が大前提であります。」




 真田幸隆は村上義清に隊を3つに分け、1つは鳥居峠の正面から。残りの2つの内1つは陣ヶ沢。もう1つを萩曽からそれぞれ鳥居峠に向け兵を進めることを進言。




私(村上義清)「もし木曾が過信していなかったら。」


真田幸隆「すぐに撤退します。そのためにも殿。絶対に深追いをしてはなりませぬ。」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る