旅行先で目を覚ましたら村上義清になっていた私。そんな私を支えることになったのがアンチ代表の真田幸隆だった。

第132話景虎の居ぬ間に

　京で権勢を振るう三好長慶に対抗するべく、将軍足利義輝は全国の諸勢力に上洛を要請。これを受け、越後の長尾景虎並びに美濃の斎藤義龍が相次いで京へ向け出発。この動きを確認した村上義清は、恭順の意を示さなかった信濃北西部の安曇郡を領する仁科盛能と西部の木曽谷に勢力を誇る木曾義康を従わせるべく兵を起こすのでありました。仁科には長尾。木曾には斎藤とそれぞれ繋がりを持っていたこともあり、これまで強気な態度に出ることが出来なかった村上義清でありましたが、好機到来とばかりに動きを活発化させるのでありました。

真田幸隆「優先順位は……。」

私（村上義清）「姫川は抑えておきたい。」

真田幸隆「となりますと仁科。」

私（村上義清）「ただ……出来れば穏便にことを収めたいものである。」

真田幸隆「服属させようとしている癖に、何を言っているのでありますか。」

私（村上義清）「景虎のこともあるだろう。仁科が越後に援軍を要請でもしたら、景虎が居ないとは言え。面倒なことになるだろう。」

真田幸隆「でしたら速攻で、かたをつけますか。」

私（村上義清）「お前の言う速攻って……。」

真田幸隆「勿論、殿が考えられているあれであります。」

私（村上義清）「それは止めておこう。仮に仁科を滅ぼしたとしても、海に出るためには越後を通らなければならない。出来ることならば、今ある資本。仁科と越後との繋がりは残しておきたい。」

真田幸隆「そうですね。」

私（村上義清）「ところで仁科とは……。」

真田幸隆「はい。仁科につきましては、（小笠原）長時とのいくさの前に手を回しておりましたし、殿と景虎との関係が良好でありますので、彼らの要望を認めれば問題は無いかと思われます。」

私（村上義清）「要望を聞いてくることは……。」

真田幸隆「私が行って参ります。」

私（村上義清）「誰かつけたほうが良いか。」

真田幸隆「そうですね……。志賀の部隊に、保科殿の槍隊……。それに四郎の騎馬隊を。」

私（村上義清）「攻め弾正に槍弾正。常に死を覚悟している志賀のものに、結果を残すことを追い求めている四郎……。」

真田幸隆「従わせることが目的。もし決裂でもしようものなら攻め滅ぼして見せますよ。これぐらい見せないことには。」

私（村上義清）「何かあった時のことも踏まえて虎綱を……。」

真田幸隆「彼が居ると相手に『適度なところで矛を収めて交渉するつもりなんだろうな。』と思われてしまいますので、これで結構です。」

私（村上義清）「あくまでも向こうの条件を確認するため……。」

真田幸隆「わかっています。」