旅行先で目を覚ましたら村上義清になっていた私。そんな私を支えることになったのがアンチ代表の真田幸隆だった。

第76話今思えば

真田幸隆「今思えば諏訪を手に入れておいて良かったと思っております。」

　武田晴信とのいくさの際、余勢を駆って手に入れた諏訪東部。ここは甲斐の武田が信濃中南部を目指すにあたり避けて通ることの出来ない場所。そこを塞ぐことに成功したと言うことは……。

私（村上義清）「信濃南部が今。比較的安定している。と……。」

真田幸隆「はい。しかもそこを治めているのが。」

　小笠原と高遠。

真田幸隆「現在彼らとの関係は良好そのものであります。」

私（村上義清）「……そう考えると小笠原と戦うのは得策では無いな……。」

真田幸隆「……そうなりますね……。」

私（村上義清）「（珍しく聞いてくれたな。）でもそれと煙硝は関係があるのか。」

真田幸隆「はい。煙硝は貴重なものでありますし、高価なものであります。加えて我が村上の軍律を知られてしまう危険性のあるものでもありますので、出来れば自前の船で以て運びたいものであります。」

私（村上義清）「そうだな。」

真田幸隆「そのためには出来る限り川を用いたいものであります。姫川と言う選択肢もありますが、どうしても小笠原領で陸揚げをしなければならなくなります。自分の領域で荷下ろしをしたい。それが可能な方法と場所はないものか。と……。そこで浮かび上がって来ましたのが諏訪の東部であります。ここを起点にしまして太平洋まで続く長い川があります。」

　天竜川。

真田幸隆「この天竜川沿いに勢力を張っているのが良好な関係にある小笠原と高遠でありますので、船を通すことは可能では無いかと。」

私（村上義清）「しかし遠江はどうするのだ。」

真田幸隆「そこで生きて来ますのが殿と山内上杉の同盟関係であります。その山内上杉と今川は、武田と山内上杉の関係もありますので良好とは言えませぬが、必ずしも悪いものではありませぬ。この伝手を使いまして遠江に出る道の確保を目指す。勿論これは普段使いには遠回りに過ぎますので、あくまでもこれは緊急事態の時に用いる最終手段であります。」

私（村上義清）「……そこまで考えていくと今相手にすべきは井上であり、高梨になると……。」

真田幸隆「はい。」

私（村上義清）「たとえ千曲川が封鎖されることになっても……。」

真田幸隆「そうなりますね。」

私（村上義清）「となると物流の拠点は。」

真田幸隆「積み出し場所の諏訪並びにその諏訪へは峠越えが必要となります。その集積場所となるのが私のいます尼ヶ淵。この２つになると思われます。」

私（村上義清）「俺のところは……。」

真田幸隆「そうならないようにするためにも、井上高梨の攻略に本腰を入れていきましょう。」