エピソードタイトルを入力…

「相変わらずのタイトル……あ、普通に話せるぞ」

「そうみたいだ。さて、どうやって出るか考えてみるとしよう」

「#$%&」

「どうしたんだ急に」

「下ネタ言って小説を台無しにしてみようと思ってな」

「やめろよ」

「だけど別の文字に変換されちまったから大丈夫だろ」

「小説の中くらい自由にさせたらいいのに」

「まあいいや。じゃあ真面目に考えるがよ、これが小説だとするなら、よくある定番のシナリオってのは物語を終わらせることで最後は脱出成功! なんだけど、そうすると物語が必要になる」

「恋愛とかかい?」

「この状況でパッと浮かぶものがそれってどういうことだよ」

「緊急事態だし、ちょっとキスでもしてみようか。緊急事態だし」

「緊急事態で誤魔化すのやめろよ。あとキスは万能じゃないからな。魔法が解けるには真実の愛が必要なんだ」

「鬼怒川って意外とメルヘンだよね」

「うるさい。とにかくそれは無しだ。別の案を要求する」

「君もわがままなやつだね。いいだろう。じゃあ物語を終わらせるんじゃなくて、終わらせることを物語にしようじゃないか」

「どういうことだ?」

「文字通りさ。ちょっと待っていてくれたまえ」

「おお。期待してる」

「終わり」

「――終わり?」

「ダメだった。終わりって出せば終わるかなと考えたんだけど」

「なるほどな。じゃあ次俺の番」

「よしこい」

「ジ・エンド」

「僕のと同じじゃないか」

「違う。文字から受ける感じ方が違う。ホントは英語にしたかったんだけどな。セリフがうまく変換されなかった」

「発音の問題じゃないかな」

「THE・END」

「おお、すごいじゃないか」

「出られてないけどな。で、この方法はダメだったわけだ」

「いや、そうとも限らない。おわりとかTHE・ENDというのはどちらかと言えば小説より漫画やアニメのものだから、小説らしくすればいいのかもしれない」

「おっ、そういえばそうだな。ちょっといいか」

「おうとも」

「二人はいつまでも幸せに暮らしましたとさ」

「――え? 何それ」

「えっ、ていや、小説の最後らしいだろ」

「鬼怒川って意外とファンシーだよね。ていうかここで僕らはいつまでも暮らすことになるのかい?」

「うるさい。じゃあどうすんだよ」

「僕が考えていたのは、小説の終わりをここで再現するっていうことなんだ。小説の最後には何がある?」

「あとがき?」

「もうちょい前」

「句点?」

「そうでなくって、終わったことの印にはどんなものがある?」

「ああ、もしかしてりょう、か。あれ変換されてない」

「そう、完了の了だね。変換されてなかったのは作者がなんのりょうだかわからなかったからだと思う。次から頼むよ」

「誰に言ったんだ? まあいいけど。たしかに了って小説に必ず印刷されてるわけじゃないけど原稿用紙に書いたりするよな。じゃあやってみてくれよ」

「了」

「――戻ってないな」

「そのようだね。さてどうしたものか」

「かっこのせいじゃないか? ああ、正確には鉤括弧だな。了って普通は丸括弧で囲むものだろ」

「なるほど。しかし丸括弧が記号に変換されないとそれは使えない。どうにか変換してくれないだろうか? 丸括弧」

「誰に言ってるんだ? ダメならさっきみたいにやればいいだろ。念じるやつ」

「……ああ、なるほど。今日は君とここにこれてよかったよ」

「なんだよ急に。さ、やってみろって」


(了)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る