エピソードタイトルを入力…

「あれ? 今度は変わってないぞ」

「いいや、僕の予想ではこれはさっきのとは違う。この〈エピソードタイトルを入力…〉っていうのは、ここにタイトルを入力してくださいという意味で、つまりまだタイトルが決まっていない」

「ええ……。全然できてねえじゃん。でもたしかに前の場所での俺らのセリフが見えなくなってるし、その予想はあってるんだろうな」

「僕らは未完成の小説の中にいる……ということだろうか」

「クソっ、ちゃんと書けよ! 作者の馬鹿野郎!」「馬鹿! 挑発するんじゃない。冷静に考えろ、もしこれを書いてる人間がいるのだとしたら何をされるかわからないんだぞ――って、ホラ見ろ! 改行されなくなって狭くなってる!」「マジだ! こういうスタイルもアリだがいきなりじゃあ読者が混乱しちまう!」「小説は自由だからね」「こんな時にのん気なこと言ってんじゃねえ! クソっ、好き放題やりやがって覚えてやがれ!」

 だから挑発するんじゃない! と小木は言った。おいおいついにセリフが字の文になっちまったじゃねえか、と鬼怒川は言った。字の文というのはかっこで囲まれていない文章のことだね、それより君の苗字って今更ながら珍しいよね、前に鬼怒川温泉に行ったことがあるけどいいところだったなあ、と小木は言った。ホラ見ろ長々としゃべるからよくわかんねえ感じになっちまってる、と鬼怒川は言った。それはホラ、作者の技量の問題なんじゃないかな、と小木は言った。いや、それ捉えようによっては挑発になるからな、と鬼怒川は言った。


 *


(――これでどうだ!? よし、強く念じたら出せた。ホラ見ろ、お前が挑発したせいで今度は強く念じないと考えすら伝えられなくなっちまったじゃねえか。おい後ろを見ろ。俺らがなかなかしゃべれないものだからアスタリスクで一区切りつけられちまってる)

(なるほど、ホントだ。これは小説の中で使われる心の中のセリフ、とでもいうような表現だね。まあ助かったよ。これで意思の疎通はできる。とりあえず次の話に行ってみようか)

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