ルシファーの襲撃
王国アレクサンドリアを訪れた少年は見た目に関しては普通の人間のようであった。
絶世の美男子。見ようによっては男装の麗人のようにも見える。そんな彼はある意味では人目を引いたが、それでも彼が魔族であるとは誰も思うまい。
そう、彼は魔族なのであった。それもただの魔族ではない。魔王軍四天王の一角なのである。
「ここが王国アレクサンドリアか……」
それは今から1000年ほど前のことである。人類は魔王と闘い、魔王の力を封じることに成功した。その力は魔石としてそれぞれの王国が厳重に保管している。
ルシファーの目的はその魔石の奪還、力の解放である。無論、目的はそれだけではない。この王国アレクサンドリアを魔王軍の支配下に置くこと。それが第二の目的である。
「さて、じゃあ、さっさと始めようか」
ルシファーは王城の目の前にいた。門の前には門番がいる。
「とまれ!」
「何者だ!」
二人の門番は槍を構える。当然のように王城は厳重に守られている。許可なき部外者が立ち寄ることはできない。
「き、貴様! 何者だ!」
異様な気配を感じた門番はルシファーを警戒した。
「僕は魔王軍四天王の一人ルシファー。君たちに死を運びにきたんだよ。ふっふっふ!」
「こ、こいつおかしいぞっ!」
「皆に伝えろ! 危険だ! この王城に危険が押し寄せてきているぞ!」
「あ、ああ!」
「遅いよ」
ブシャァ!
「ぐ、ぐわああああああああああああああああああああああああああああああ!」
ルシファーの言葉ひとつで、門番はひしゃげ、無様な肉塊となった。ルシファーは言葉に魔力を乗せていたのだ。言霊だけで、門番は果てたのである。
「ひ、ひいっ! だ、だれか! 助けて! 助けてくれ!」
「君にも死をプレゼントしよう。今まで長いことお勤めご苦労だったね」
ブシャァ!
「ひ、ひあああああああああああああああああああああああああああああああああ!」
無様な断末魔をあげ、門番は果てた。ルシファーは満足げに笑う。
「さあ、素敵なパーティーを始めようじゃないか」
地面に大きな影が走る。その影は魔界と繋がっていた。そこから無数の魔物が現れてくる。
「この王国を狂騒と死の乱舞で埋め尽くしてあげるよ。くっくっく! あっはっはっはっはっはっはっはっはっは!」
王国にルシファーの笑い声が響いた。こうして王国アレクサンドリアの平凡で平和な日常は突如として終わりを告げたのである。
魔王軍との血みどろの戦争が始まることとなる。
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