邪神との闘い始まる

「ここが神殿か……」


 俺達の目の前には神殿があった。


「もう! ここにラカム達が忍び込んで滅茶苦茶な事をしたのね! どうしようもない連中なんだから!」


 エミリアは怒鳴っていた。


「よせ、エミリア。ラカム達を責めてもどうしようもない。奴らもわざとやったわけじゃないだろう。ドラゴン相手の時と同じように自分達の本当の天職を勘違いしているから起こった悲劇だ」


「それはそうだけど」


「それより中に入るぞ。ここでじっとしていても始まらない」


「うん」


 俺達三人は神殿の中に入って行く。



 神殿の中に俺達は入った。だが、特に何も起きなかった。


 俺達は何の障害もなく、奥まで進んでいく。


「何も起きないわね」


「ああ……だが、気を付けろよ、何があるかわからない。ここは敵の陣営なんだからな」


「うん」


「トールさん! 見てください! あれはっ!」


「んっ! あれは! 邪神ネメシス!」


 だだ広い空間に邪神ネメシスは立っていた。ものすごい殺気を放っている。


「アークデーモンを倒してここまで来たのか……やはり貴様らは侮れないな」


 かつてよりもずっと強い力を放ち、邪神は俺達の前に立つ。


「邪神さん! よくもエルフの国を滅茶苦茶にしてくれたわね! 私達がきたからにはもう好きにはさせないわよ!」


 エミリアは言い放つ。いつも威勢のいい奴だ。


「ふっ……それは楽しみだな。お前達に余が倒せるというのか」


「倒せるに決まってるわよ! だってトールがいるんだもの!」


「エミリア! セラフィス姫! 邪神が来るぞ! 構えろ! 俺と練習してきた事を思い出すんだ!」


「「はい!」」


「ゆくぞ! 人間! そしてエルフよ!」


 邪神ネメシスは魔力を込めた手刀で俺達に襲い掛かってくる。


「自己貸与(セルフレンド)。剣聖」


 俺は接近戦用の職業『剣聖』を自己貸与する。


 キィン!


 甲高い音が鳴った。


「ぬっ!」


 俺の剣と邪神の剣がせめぎあう。


「トール!」


 エミリアは聖女としての力を発動する。


「オールステータスバフ!」


 エミリアの聖女の力。俺に支援(バフ)魔法をかけた。バフ魔法で俺の身体は聖なる光に囲まれる。

 俺の攻撃力と防御力は本来よりも増加する事となる。


 いける。邪神の力は強いが、それでも力負けする気が起きない。


「はぁ!」


「な、なにっ!」


 俺は邪神を力で勝った。


「聖なる光の矢(ホーリーアロー)!」


 怯んだ瞬間。弓聖セフィリスは矢を放った。練習通り、聖属性の矢を使用する。弱点属性を攻める。これは戦闘の鉄則でもあった。


「ぬっ! 小癪な!」


 いくら防御力の高い邪神とはいえ、弱点属性の攻撃は有効であった。軽視できないダメージを負ったようだ。


「聖なる光よ! 邪神を滅ぼしたまえ! ホーリー!」


 聖女であるエミリアは聖魔法ホーリーを発動する。


「なにっ! ぐわあああああああああああ!」


 邪神はエミリアの放ったホーリーに飲まれる。


「ナイスだ! エミリア! はああああああああああああああああああ!」


 俺は怯んだ邪神に斬りかかる。そして、斬り裂いた。明らかに致命傷のはずだった。


「やったわね! トール! いくら邪神でも」


「おかしい……手ごたえがない」


「え? どういう事?」


「まるで抜け殻を攻撃しているようだ」


 例えるなら今攻撃しているのはセミの抜け殻みたいなものだった。本体が別にいるような、そんな感覚であった。


「ふふふっ……さかしいな。人間。褒美だ。見せてやろう! 余の、邪神と言われた真なる姿を!」


 窮地に陥った邪神ネメシスは真なる姿を解き放った。

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