【ラカムSIDE】職業鑑定士の館に向かう
ラカム達は職業鑑定士の館の前にいた。
「ま、まさかな! この俺様が勇者じゃないなんてそんな事ありねぇよな!」
ありえないと言いつつも、ラカムの顔はひきつっていた。まさかとは思っているが、内心は怯えていた。万が一の可能性があった。
あの当時、トールを追放した時はあの言葉をただの妄想としか思っていなかったが、何となく最近は現実味を怯えてきたのだ。
(俺様が勇者じゃなくて村人だと……)
そんな事あるわけねぇ! あるわけねぇ! 内心ではそう思いつつもどこか否定しきれないでいる自分がいた。
最近の不調具合はおかしい。あまりに長すぎる。勇者としての真なる力に目覚める気配もない。
自分が勇者ではなく村人なのだと仮定すると全ての疑問が氷解してしまう。勇者ではなくそもそも村人なのだとしたのならば、勇者としての力を使えなくなったのはただの必然に過ぎない。
だが、怖かったのだ。勇者であるというアイデンティティがラカムを支えていたのだ。そのアイデンティティが一気に崩壊してしまう事になる。
ラカムを支える心のよりどころが何もなくなる。
(そんなわけねぇ! 俺は大勇者ラカム様だ! 俺は村人なんかじゃ絶対にない! あんなのトールの見苦しい嘘に決まっている! 今頃荷物持ちトールはどこかのパーティーで荷物持ちをしてい事だろうぜ)
「俺達は最強の勇者パーティーだ! だ、だよな?」
不安に思いつつもパーティーの仲間に確認をする。
「そ、そうよ! 私大魔法使いメアリーよ! 私の大魔法はすっごいんだからっ!」
メアリーは言葉は強気であったが、表情はこおばっていた。やはり不安なのだろう。彼女も。
「そ、そうだ! 俺は聖騎士としてこの世に生を受けた男だ! 俺は紛れもない聖騎士だ!」
ルードは言葉は強気であったが、表情はこおばっていた。やはり不安なのだろう。彼も。
「そ、そうです! 僕は大僧侶グランですっ! 僕は大僧侶として天職を授かったんですっ! 僕は多くの人々の怪我や病を癒す為に生まれてきたんですっ!」
グランは言葉は強気であったが、表情はこおばっていた。やはり不安なのだろう。彼も。
「ま、まあ。一応確認のためだ。入ろうぜ」
四人は怯えつつも職業鑑定士の館へと入って行った。
◇
「いらっしゃいませ……ん? あんたはあの有名な勇者ラカム様、そしてパーティーの連中じゃないかい? どうしたんだい? こんな職業鑑定士の館に」
鑑定士のお婆さんはラカム達が来た事を驚いていた。勇者ラカムのパーティーは破竹の勢いで数々の功績を残していったパーティーであり、その存在は有名になっていた。認知している人々は多い。
「あ、ああ。婆さん。俺達の職業を鑑定して欲しいんだ?」
「職業を鑑定? 勇者パーティーの? おかしな事を言うもんだね」
「さ、最近俺達調子がおかしいんだ。それで改めて職業を鑑定したくなったんだ。鑑定してはくれねぇか?」
「そりゃまあ、それが私の仕事だからね。お金さえくれればいくらでも職業を鑑定するよ」
「じゃあ、頼む」
「お題は一人銀貨1枚だよ」
「あ、ああ。払うよ」
四人分で銀貨4枚を鑑定士の婆さんに払った。
婆さんの目の前には水晶がある。あの水晶を利用して職業を鑑定するようだった。
「それではいくぞよ。ラカム、メアリー、ルード、グラン! そのなた達四人の職業を鑑定してしんぜよう。はあああああああああああああああああああああああああああああ!」
婆さんは叫んだ。水晶がピカーーーーーーーーーーーーーーーーーーー! と光を放ち始める。
ラカム達四人は不安に思いつつもその鑑定結果を待つ事になる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます