冒険者ギルドで功績を称えられBランクの冒険者に
俺達はクエストを受注した冒険者ギルドに帰ってきた。
無事だった俺達を見て、冒険者達は安堵のため息をついた。
「やっぱダメだったか」
「見ろ。賭けは俺の勝ちだな」
「へっ。ドラゴンを見てビビって逃げ帰ってきたんだな。傷ひとつねぇって事はそういう事だろうな。それどころか、北の洞窟に入るより前に逃げ帰ってきたのかもしれねぇ」
冒険者達は各々に勝手な事を言い始めた。
「お、お疲れ様です! トールさん、エミリアさん! やっぱりダメでしたか。しょうがないですよね。で、でも命あっての物種ですから。逃げて帰ってきても全然恥ずかしい事ではないですよ。落ち込まないでくださいね」
受付嬢も同じ先入観を持っているようだった。考えが固まってしまっている。俺達がドラゴン退治に失敗して、逃げ出してきたと思い込んでるのだ。
ダメ元で頼んではみたが、まさか二人でドラゴンを退治するとは思っていない、そんな感じだった。
俺はドラゴンの部材をカウンターにドンと置く。
「えっ!? う、嘘ですよねっ! こ、これはドラゴンの牙! ど、どうしてトールさんがこの部材を!」
「そんなの決まってるじゃないの! トールと私でドラゴンを倒したのよ!
」
エミリアがそう主張してくる。
「おい、エミリア。事実でもあまりそう主張するな」
「なんで? 本当の事じゃない」
エミリアは王女という事であまり常識や世間の事を知らない。謙虚さが美徳という事を知らないようだった。
「ト、トールさん! ほ、本当にお二人でドラゴンを退治されたんですかっ!」
「そうなりますね」
「う、嘘っ! 信じられませんっ!」
「ま、マジかよ! 本当にドラゴンを退治したっていうのかよ!」
「本当かっ! すげーなマジ」
「けっ! なんだよ賭けは俺の勝ちじゃねーか。お前達の負けだよ負け」
「ちっ。大穴が来たな」
ガラの悪い冒険者達。どうやら俺達がドラゴン退治に成功するか、失敗するかで賭けていたようだ。まあ、別にどっちでもいいんだが。勝手にしてくれ。
俺達には関係のない事だ。
「それではトールさん、エミリアさん、この度のドラゴン退治、お疲れ様でした。それではクエストのクリア報酬の査定とランクの査定を行いますので少々お待ちしていただいていいでしょうか」
「ええ。構いません」
「はい。しばらくお待ちください」
俺達は待たされる。
「お待たせしました。奥にご案内する。ギルドマスターから直々に報酬の受け渡しがあるそうです。ギルドマスターの部屋まで行ってください」
俺達は受付嬢に案内され、ギルドマスタールームに案内される。
◇
そこにいたのは武骨そうな男だった。いかにもな冒険者といった感じである。ギルドマスター。ただの経営者などではない。実戦を経験した古強者といった感じだ。
「お前達が北の洞窟のドラゴンを倒してくれたのか?」
「ええ。そうなりますが」
「なんというやつらだ。あの北のドラゴンはАランク以上の冒険者パーティーしか受注できないものだったが、Sランクの冒険者パーティーでも手を焼く程なんだぞ。それをEランクの冒険者パーティーがクリアするなんて聞いた事もない」
「それはどうも」
「トールなら当然よ!」
「エミリア、お前は黙っていろ」
「うっ、むうっ」
出しゃばるエミリアは押し黙った。
「それでは報酬を授けよう。まず、ランク昇格規定だが、規定だと2段階のランクアップしか認められていない。だが、今回は特別クエストという事もあり、お前達おn冒険者ランクは三段階UPのBランクだ」
「やった! トール、私達、Bランクだって」
「さらには、これが報奨金だ。金貨100枚だ」
「金貨100枚」
俺達はずっしりとした小包を渡される。この中に金貨が敷き詰められているのか。大体、金貨1枚で一般家庭が一か月は暮らせるといわれている。金貨100枚なんてそれだけでもう、数年は何不自由なく生活できる程だ。
そんな金が一瞬で手に入ったのだ。
「やった! トール! お金一杯もらえたわね! それだけ貰えたら装備とかも新調できるかもしれないし! それにアイテムの拡充もできそうね! 二人の旅がもっとはかどるわね!」
「ああ……その通りだな」
確かに金はあるに越した事はない。荷物にはなるが、銀行に預けておいてもいい。そういうサービスも存在していた。
――と、そんな時だった。受付嬢が部屋に入ってくる。
「はぁ……はぁ……はぁ! た、大変です! トールさん!」
「受付嬢さん、どうしたんですか?」
随分と慌てた様子だった。肩で息をしているんです。
「王国アレクサンドリアの国王がドラゴン退治をしたトールさんたちを是非招待して、お礼を言いたいとの事ですっ!」
な、なんだって。そんな事が。
「国王陛下は是非、トールさんたちに来ていただきたいそうです。いかがされますか?」
「うーん。どうしようか……気後れするよな」
「何言っているのよトール! これは良いニュースよ! きっとまた色々とご褒美がもらえるわよ!」
「トールさん、国王からのお願いです。お願いであり、命令ではないですが、無碍にはしない方が賢明ですよ」
「そうですね。じゃあ、お邪魔しますか」
特別この後、予定もないのだ。冒険者ギルドを出た俺達は王国アレクサンドリアへ向かった。
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