第7話・欲望全開で楽をしよう【前編】
ここは街の居酒屋。
俺とイラが座るテーブルの向かいにグラとインヴィが申し訳なさそうに腰を下ろしている。
それと何故か二人とも俺を見て呆れているのだ。
「あのよ……、助けて貰っておいて、なんだけど。お前ら正気か?」
「グラ兄に同じくだ。俺たちの釈放を願い出てくれたとこには感謝する。だが……」
「イラ、手が止まってるよ?あー……ん」
俺は口を開けて待っている。イラが俺の口に食べ物を運んでくれるのを。
「くっ!! 私恥ずかしいんだけど!? スロスは恥ずかしくないの!?」
「……」
「だから魔力で文字を書くな!! 『魔力を消費しなくて済むなら、なんだって良い』って何よ!!」
俺はアヴァを確保する助力の交換条件に食事のお手伝いをイラに要求していた。
カロリーも魔力も消費しないで食事ができるなんて最高じゃないか。
こんなサービスはメイド喫茶にだって存在しないからな。
「……お前らは、いつもこんな感じなのか?」
「違うわよ!! グラ、……この事を口外したら殺すわよ?」
イラがグラに凄んでいる。イラは怒るのが趣味なのかな?
「イラよ、俺たちが口外しなくても周囲の客が見てるんだぞ?」
「うっ!! インヴィ、……屈辱だから、これ以上は何も言わないで?」
グラとインヴィは唖然とした顔になる。俺たちのどこがおかしいのだろうか?
「……」
「スロスもさ悪いけど何の前触れもなく魔力で文字を書かないでくれ。俺もグラ兄も慣れてないんだ。それに『イラに膝枕してもらえるのは俺だけだよ』ってなんの自慢だよ?」
「スロス!? 余計なことを言うんじゃないわよ!!」
「これがギルド最強コンビの実態だってのか? インヴィ、俺は頭が痛くなってきた」
何やら非常に失礼な物言いだと思うが、今は聞き流すとしよう。
何しろ俺には、この二人に聞きたいことがあるのだから。
「あのさ、オリハルコンの情報を教えてくれない?」
「……ギルドから兄貴の件を聞いたのか?」
グラが小声で呟く。
「それもある。後は個人的な興味だね」
「ん? スロスはオリハルコンに興味があるのか?」
インヴィが怪訝な表情を浮かべている。そう。俺はオリハルコンを手に入れたいのだ。
何故ならば俺の夢が『究極・怠惰スーツ』の開発だからだ。
先日は試作品を検証してみたが、色々と問題が発生した。そのうちの一つが耐久性だった。
オリハルコンで怠惰スーツを作れれば、耐久性に悩まされることはなくなるはずだ。
「……スロスのことだからロクな使い道じゃないんでしょうけどね? グラとインヴィ、私も質問があるんだけど」
イラも失礼な発言をするね。
俺の怠惰スーツに対する情熱は火炎魔法よりも熱いと言うのに。3000℃の炎よりも熱いんだよ?
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