第4話・三兄弟の悪巧みがめんどくさい

「兄貴、こんな事やって意味があるのか?」


「ギルドの名に傷を付けられる」


「アヴァの兄貴は冒険者の資格を剥奪されているからな」


 三人の男が焚き火を囲って密談をしている。容姿の似た三人組。彼らは実の兄妹である。


「ちょっと依頼主を殴っただけで資格を剥奪するなんざ、ギルドは頭がおかしいんだよ!!」


 アヴァと呼ばれる男は三人兄弟の長男で三人のリーダー格。


「兄貴、俺たちは資格を剥奪されてないんだ。クエストの引き受けは俺たちがすれば良いじゃないか」


 アヴァを諭す男はグラ、兄弟の次男。


「俺は『強欲のアヴァ』と称された最強の傭兵だったんだぞ!? その俺を……許せるものか!! インヴィ、畑にモンスターを誘き寄せる粉はしっかりと撒いたんだろうな?」


「撒いたさ。だけど、これって他の冒険者に迷惑がかかるぞ?」


 インヴィと呼ばれる男、兄弟の三男にして作戦の実行者。


「構うもんか!! おかげで俺は他の街のギルドにさえ相手にされない、噂も広まって傭兵にすら戻れなくなったんだぞ!?」


「気持ちは分かるけどさ、俺たちも巻き込むなよ?」


「グラ!! てめえは俺を可哀想だと思わねえのか!?」


「しっ!! 兄貴たち、誰か近づいてくる」


 インヴィが兄弟たちに警戒を促す。彼はスロスとイラの接近に気付いた。


「……誰だ? クエストを引き受けた冒険者か?」


 アヴァの目つきが変わる。


「……あいつら、スロスとイラじゃないか!!」


「インヴィ、それは本当か!? まさか、この程度のクエストを王国最強のメイガスとセージのコンビが引き受けたってのか!?」


 グラがインヴィに掴みかかる。


「なんてこった。あいつらが引き受けたとなると誘き寄せたモンスターが全滅されたと考えて良いだろうな」


「アヴァの兄貴、今すぐ逃げよう!!」


「俺もインヴィに賛成だ!! あんな化け物を相手にはできないぜ!?」


「くっそ!! 俺だって、あんな化け物を相手にしようとは思わん!! お前ら、逃げる……、足を動かせない!?」


 アヴァは突如として足を動かせなくなった。まるで何か強い力に掴まれる感覚を覚えていた。


「アヴァの兄貴、何をグズグズとしてるんだ!?」


「インヴィ!! ……足が動かせないんだよ……」


「はあ!? 兄貴は何を遊んでるんだよ!!」


「本当なんだ!! グラ、俺を引っ張ってくれないか!? って、うわああああ!!」


 アヴァは二人の弟たちの服を掴む。


 だが彼は、その場からまるで磁力に引っ張られるかのようにスロスたちに向かって吹っ飛んでいった。

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