幕間14※アーサー視点

「どういう事ですか」


目の前に座った父に言われた言葉が理解出来なかった。


「お前とストーン伯爵令嬢の婚約破棄は認めないと言った」


睨み付けてくる父から伝わってくるのは怒りのみ。

理由は分かっているが理解出来ない。


「何故ですか?」

「年に二回も王族の婚約が駄目になった醜聞を作りたくないからだ。それくらい分かるだろう」


父の言っている事は分かる。

それでも私はソフィアを婚約者に戻したいのだ。


「私はソフィアとの婚約を戻したいのです。許可してください」

「出来ぬ」


バッサリと切り捨てられる。

どうしてだ。

父上も母上もソフィアの事を気に入っていた。婚約者に戻したいと言えば喜ぶはずなのに、どうして怒っているのだ。


「どうして!ソフィアは王妃に相応しい人です!彼女こそ私の婚約者に相応しい!」

「そうだな。彼女は王妃としての器を持っている素晴らしい女性だ」

「なら…」

「彼女を裏切り、見捨てたのは誰だ?」


父の厳しい声が胸に突き刺さる。

ソフィアを裏切ったのは私だ。しかし、それは阿婆擦れ令嬢に騙されていたせいである。


「ソフィアを傷つけた事は反省しております」

「反省した人間が婚約解消した相手に望んでもいない縁談話を送ったり、無礼な手紙を送るわけがないだろう」


そう言って父から投げつけられたのはソフィアに送ったはずの手紙達だった。

どうして父のところにあるのだ。


「彼女はお前からの手紙に迷惑している事を私と王妃に言ってきた。それはお前にも伝えたはずだ」

「それは…」

「反省するどころか今度は婚約者に戻したいなど戯言まで言い始め、終いにはドレスを贈ったな?」


全て父に隠れてやっていた事だ。

国王として威厳ある鋭い視線に冷や汗が出てくる。


「ふざけるのも大概にしろ!」

「ふ、ふざけていません…」

「本当に反省する気があるなら彼女に金輪際関わるな」

「でも、ソフィアを婚約者に…」

「戻す事はない」


言い切る前に否定される。

どうしてだ。だって彼女は私を想ってくれているのに。


「で、ですが、ソフィアが私の婚約者に戻る事を望めば」

「彼女はお前からの手紙に迷惑していると言ったはずだ。お前の婚約者に戻る事を望むわけがない。愚か者め」

「そんな事はありません!ソフィアは私を好いてくれているのです!」


呆れた顔をされる。

何を言っているのだと目で訴えかけてくる父に怒りが湧いた。


「私の真実の愛の相手はソフィアです!何があっても彼女を婚約者にします!彼女だってそれを望んでいるのですから!」


矢継ぎ早に言ってから部屋を出て行く。


「アーサー、待て!」


後ろから制止するように言われたが聞く耳を持たなかった。

これ以上話しても無駄だと分かったからだ。


「あの愚か者め、すぐに再婚約を出来ないと知るだろう」


父の話をちゃんと聞いておけば良かったと後悔するのはこの数時間後の事だった。

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